滋賀県支部 支部長
藤井 登
滋賀県支部の立ち上げは、舌がんのわたしが、舌を切ることなく小線源治療という放射線で治していただいた感謝の気持ちからです。放射線治療医は、「あな
たの舌がんに関わって9年が経ちますが、いまだに舌を切っている人がほとんどです。私のもとに来る舌がんの患者さんは、すでに切ってから来ます。がん患者
さんが切る前に放射線科を選ぶお手伝いをしてくれませんか。」と相談を受けました。いまだに放射線科の扱いは外科、内科の次だと感じました。仲間たちのほ
とんどが舌を切られている現状に心が痛みました。がんは早期であればほとんど命は助かります。治った後の生活の質(QOL)を考える時代です。私の場合、
舌を切っていてもがんは治ったと思います。でも舌がない。すると会話が困難。味覚がない。物をこぼす。唾液の処理が難しい。この状態では日常生活を充実さ
せることは難しいと思います。学習塾を経営している私にとっては、死活問題です。私は舌がんの宣告を歯科口腔外科で受けました。切る気満々だった若い歯科
医とボスとの間で、舌を切っても話せるいや話せない、物をこぼすいやこぼさないと私の目の前で、意見が分かれました。とてもまれなケースらしいです。そこ
で、ボスの提案で放射線科に行くことになりました。北海道がんセンターではとても辛い治療が8日間続きました。でも小線源治療を選んだおかげで、舌は温存
され、会話、味覚、唾液の処理はいつも通りです。すべての治療が終わった後、治った状態を歯科口腔外科の若い歯科医に見せに行きました。そこで言われた言
葉は、「わざわざ北海道まで行かなくても私が治しましたよ。」つまり、歯科口腔外科でも命は救えましたよ。この歯科医は、舌を切った後の生活をどのように
考えているのか?患者を見ずに病気だけを見ていると感じました。
立ち上げの二番目の理由として、近畿に支部がないことです。市民のためのがん治療の会の活動が、滋賀県を起点に近畿の他の地域にも浸透できればと考えて
います。医療は日進月歩の発展を続けています。放射線治療も例外ではありません。医療についてともに学び、賢くなり、来るべき時に備え、ベストな選択がで
きるよう皆さんとともに連携をとりたいと思います。
また、8月30日の滋賀講演会の準備をしている中で、会のメンバーの中から、事例集を作ろうという意見が出ました。滋賀県支部のほとんどは、がん経験者
です。そして、がんを乗り越えた人ばかりです。貴重な経験をしている皆さんの事例集を作って、これからの仲間達の不安を軽減し、治療についての選択肢を増
やすお手伝いをしようと。がん患者が治療を受けていく中で、どのようなステップで治療・手術が進んだか。今だから話せる患者の本音(その選択で良かったの
か、後悔していないか)。医師のアドバイスなど。それを部位ごとに、また一般形にまとめた内容にする予定です。そして、患者の大変さはもちろんですが、そ
れを支えている家族も大変な思いをしています。そこで、事例集はそちらにも着目します。このような時どのように支えたか。今振り返るとその選択肢以外に方
法はなかったのかなどです。二人に一人ががんになる時代です。支える人支えられる人、満足いく選択をしなければなりません。
最後になりましたが、市民のためのがん治療の会 滋賀県支部の記念講演会を開催するにあたり、関係各位、特に滋賀県がん疾病対策室、長浜市健康推進課、市立長浜病院がん相談支援センターの方々の協力に深く感謝いたします。
滋賀県支部活動報告 2016年12月から2017年2月を振り返って・2017年度展望
12月8日 親子人権集会・創立記念集会 日栄小学校
下学年(30分)上学年(45分)の2部構成で授業を行いました。時間が短いため、伏木先生のお話、DVD(がんちゃんの冒険)が中心の授業になりました。
最後に
藤井「ちょうど10年前、舌にがんができました。」
児童「へぇ~!」
藤井「たいていの人は切って治すけど、切ってないのよ!切ったらどうなると思う?」
児童「しゃべれない!味がわからない!」
藤井「切りたくないから、いろいろ探した結果、放射線治療にたどり着いて、切らないでがんをやっつけてもらったのよ!」がんになっても切らなくても治せるんだぁ!こんな元気でいられるんだぁ!という声が伝わってきたように感じました。児童は、「ありがとうございました。」と、ハイタッチで部屋を出て行ったのには、微笑ましさと感動を覚えました。小学校での講演活動は今回が初めてでした。
12月11日 第29回心のケアを考える会
支部からは、5名が参加しました。参加4回目ですが、支部の活動を周知していただいており、活動について、たくさんの方からお褒めの言葉をいただきました。中には、再発された人や余命宣告された人もいますが、前向きに病気をとらえ充実した日々を過ごしておられます。また、市立長浜病院呼吸器外科責任部長・がん対策推進室長の田久保康隆先生が、協力医として加わっていただきました。肺がんが専門の先生です。支部に厚みがでました。
12月16日 滋賀県がん対策活動団体情報交換会
今回が2度目で、事業の取組と成果、来年度の活動予定を参加11団体がプレゼンしました。滋賀県支部も他団体と協力しながら、活動を続けていきます。
1月21日 地域の安全と健康を考える集い 大津市大石市民センター
伏木先生の講演で、支部はオブザーバーとして参加しました。
2月4日 第8回滋賀県がん医療フォーラム ピアザ淡海
「私のがん医療を考える 溢れる情報から必要な情報を見つけ活用するために」
内容が盛りだくさんで駆け足ではありましたが、多くを学べました。ブースをいただきました。パネル持参で、かなり目立っていたと思います。またNews letterと支部の活動報告を配布しました。100部があっという間になくなりました。がん患者団体の活動が、最新の正しい知識の習得や検診の向上に繋がることを期待しています。
2月4日から10日まで 滋賀県がんと向き合う週間「がんを知ろう 展示会」浅井図書館
滋賀県支部はパネル展示、News letterと活動報告の配布物を置かせていただきました。
2月9日 がん教育出前講座 長浜市立西中学校 1年
「自分とみんなの命を守るために~本当は怖くないがんのお話~」伏木先生
「二つのがんを経験して」滋賀県支部 野﨑安美
今回で5回目となる出前講座です。来年度から「がん教育」がどの学校でも取り上げられますが、5年前から出前講座を西中では行っています。毎回、伏木先生と藤井の講演ですが、今回は野﨑安美にお願いしました。身近な人をがんで亡くした生徒への配慮をしながら、授業が始まりました。連続2時間という長い授業でしたが、ほとんどの生徒は集中力が途切れることなく、講師を見つめ、メモを取っていました。中にはあきてくる子もいます。そんな時、先生がすぐ注意!感動でした。私はいつも講師で、後ろから見ることはありませんでした。生徒の反応や講演者を離れた場所から見ることができました。支部長として、講演全体を把握することはとても重要であると感じました。
来年度も小中学校、自治会、での出前講座を予定しています。また200名程度の講演会も準備中です。