市民のためのがん治療の会はがん患者さん個人にとって、
  最適ながん治療を考えようという団体です。セカンドオピニオンを受け付けております。
   放射線治療などの切らずに治すがん治療の情報も含め、
  個人にとって最適ながん治療を考えようという気持ちの現れです。
市民のためのがん治療の会
HBM(Human-Based Medicine)を唱える当会がもっとも信頼する腫瘍内科医が目指す腫瘍内科とは
『「日本一の腫瘍内科」で日本のがん医療に貢献』
虎の門病院臨床腫瘍科(腫瘍内科)部長 高野 利実
■腫瘍内科って何?
 「腫瘍内科」という言葉は、以前に比べれば、だいぶ多くの人に浸透してきたように思いますし、その必要性の訴えを耳にすることも多くなりました。それでも、「腫瘍内科って何?」という人の方がまだ多いのではないかと思います。

 がんの手術を行うのが外科で、がんの放射線治療を行うのが放射線科であるのに対し、がんの薬物療法を担うのが、「腫瘍内科」です。薬物療法というのは、抗がん剤、分子標的治療薬、ホルモン療法剤などのお薬を、注射や内服で投与するもので、手術や放射線治療などの「局所治療」に対して、「全身治療」とも呼ばれます。早期がんの手術前後に行う、再発を防ぐための薬物療法、進行がんに対する、「がんとうまく長くつきあう」ための薬物療法 など、薬物療法の目的は様々です。

 薬物療法に関する最先端の情報と、患者さんの価値観や個別性に基づき、最も効果(ベネフィット)の期待できる治療法を選択します。がんの薬物療法では、副作用(リスク)はある程度避けられませんが、できる限り苦痛を抑え、安全に施行できるように、副作用のコントロールを図ります。リスクとベネフィットについては、「やってみないとわからない」という面がどうしてもありますが、様々な情報からそれを予測し、患者さんと率直に話し合う中でリスクとベネフィットのバランスを判断し、最適な治療方針を決定します。

関連する診療科や診療部門と密接に連携をとりながら、一人ひとりの患者さんにとって最適ながん医療をコーディネートするのも、腫瘍内科医の重要な役割です。チーム医療の「かじ取り役」、あるいは、がんと向き合う患者さんに寄り添う「道案内役」だと思っていただければよいかと思います。

がんになる患者さんが増え、また、がんに対する薬物療法が日々進歩する中、がんの薬物療法は、それを専門とする腫瘍内科医が担うべきなのは間違いないのですが、わが国では、まだまだ腫瘍内科医の数が少ないというのが現状です。 「化学療法に携わる専門医」が常勤でいることが、がん診療連携拠点病院の指定要件になっていますが、2010年9月現在、がん診療連携拠点病院は全国で377施設であるのに対し、日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医は451名にすぎず、専門医が不在の病院、あるいは、専門医がいても「腫瘍内科医」として機能できていない病院がほとんどです。60人の専門医がいる東京都でも、16のがん診療連携拠点病院のうち、6つの病院で専門医が不在という状況です。


■虎の門病院の取り組み
 私が医学部を卒業した12年前、まだ、腫瘍内科という言葉もあまり知られておらず、腫瘍内科医を志した私は、主流の路線から外れて、「道なき道」を進むことになりました。幸い、理解ある上司や同僚に恵まれ、患者さんたちにも支えられながら、なんとかやってきました。国立がんセンター中央病院でレジデントを終えたあと、東京共済病院に腫瘍内科を立ち上げ、2年前には、帝京大学医学部附属病院の腫瘍内科立ち上げにも携わりました。そして、2010年4月、虎の門病院臨床腫瘍科(腫瘍内科)に赴任し、私を含む3名の腫瘍内科医で、これまでにない新しい形の取り組みをしています。

最近では、「腫瘍内科」「臨床腫瘍科」「化学療法科」などの診療科を開設する病院が増えてきましたが、腫瘍内科として実質的に機能している病院はまだまだ少なく、今後の日本の腫瘍内科のあるべき姿を示す「モデル」となるような病院はほとんどありません。このままでは、「がん診療連携病院」の要件を満たすために腫瘍内科を掲げたものの、結局は役に立たないままで終わってしまうという失敗例ばかりが目立つようになり、若手医師や医学生も、腫瘍内科医を志そうという気にならなくなってしまいます。ここ数年、社会や政治から腫瘍内科を後押しするように吹いていた追い風も、目立った成果がなければ、やんでしまいます。これは、危機的な状況です。

そんな状況を打開すべく、虎の門病院では、日本のがん医療のモデルになるような「腫瘍内科」の構築を目指し、臨床腫瘍科(腫瘍内科)を立ち上げました。全国津々浦々に腫瘍内科医が配置されるのが理想ではありますが、名前だけ、あるいは、数だけの腫瘍内科医が増えても意味はありません。まずは、「腫瘍内科とはこうあるべきだ」というビジョンを示すことが先決であり、それを虎の門病院で行おうと考えたわけです。

都内の伝統ある病院という恵まれた環境で、専門医や若手医師を集めようとすることには、人材不足の中、血のにじむような苦労をされている全国の諸先生方からお叱りを受けてしまうかもしれませんが、これは、将来的に「真の腫瘍内科医」を全国に浸透させるために必要なステップであるとご理解いただければ、と思います。腫瘍内科で成功したモデルがあれば、腫瘍内科医を志す若手医師も増え、全国で腫瘍内科医育成を競い合うような時代が来ると考えています。

虎の門病院臨床腫瘍科(腫瘍内科)では、5項目のマニフェストを掲げています。

@<理念>「この時代になしうる最良のがん医療を提供する」
A<診療>「各診療科と密接に連携して高度なチーム医療を行う」
B<教育>「真のオンコロジストを育成する」
C<研究>「質の高い臨床研究を行い、がん医療の発展に貢献する」
D<目標>「日本の真ん中に日本一の腫瘍内科をつくる」

@は当院の理念(「その時代時代になしうる最良の医療を提供すること」)に沿った、当科の理念です。目の前の患者さんにとって最適な治療を、確実かつ安全に施行します。治療の限界も認識しつつ、治らない病気と向き合う患者さんにも「希望」「安心」「幸福」を与えられるような医療を目指します。エビデンスに基づく医療(EBM)は当然のものとして、さらにその先をいく、「Human-Based Medicine (人間の人間に拠る人間のための医療;HBM)」を実践します。
Aは、他科との連携なくしては成り立たない当科の、根幹をなすスタンスです。真のオンコロジストたちが知恵と力を寄せ合い、患者さんに最大のベネフィットをもたらすようなチーム医療を目指します。診療はもとより、教育や研究においても、密接な連携をとっていきたいと思っています。
Bは、研修医・レジデント教育の目標ですが、将来の進路がどこであれ、がんという病気や、がんを抱える人間と向き合う際の「オンコロジーマインド」を体得してもらいたいと思っています。
Cは、研究面の目標ですが、特に、臨床現場の疑問点に答えを出すような臨床試験に力を入れます。全国規模の臨床試験グループにも積極的に参加し、日本のエビデンスづくりをリードしていくつもりです。すでに、当科から提案した大規模比較試験のコンセプトが複数採用され、準備が進められています。
Dは、われわれの決意表明です。虎の門が日本の真ん中か否かについては強く主張するものではありませんが、日本全体に腫瘍内科を根付かせるために、まずは虎の門がモデルになろう、という意味で、あえて「日本一」を掲げました。診療、教育、研究の3面において、これまでになかったような新しい取り組みをして、日本の最高水準を目指すつもりです。


■臨床腫瘍科を受診するには
 虎の門病院臨床腫瘍科(腫瘍内科)では、乳癌、消化器癌(大腸癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌)を中心に、肺癌、泌尿器癌(腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌)、婦人科癌(卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌)、胚細胞腫瘍、肉腫、原発不明癌などを含む、悪性腫瘍(がん)全般の診療を行っています。
当科は、乳癌なら乳腺内分泌外科、消化器癌なら消化器外科や消化器内科、というように、関連する診療科と密接に連携しながら、主に薬物療法を担当し、内科の一診療科として、外来診療および入院診療を行っています。 腫瘍内科医のもとでがん薬物療法を受けたい、がん薬物療法について相談したい、というような患者さんは、当科の受診をご検討ください。
他院でがんと診断され(治療を受け)、当科受診を希望される場合は、現在の担当医とよく相談の上、情報提供書や資料(画像データや病理診断書など)を用意してもらった上で、外来を受診してください。セカンドオピニオン外来も行っています。
詳しくは、虎の門病院臨床腫瘍科のホームページをご覧ください。
(http://homepage2.nifty.com/toshimitakano/tora-moc/index.htm)


略歴
高野 利実(たかの としみ)


1998年東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、東京大学医学部附属病院内科および放射線科・総合腫瘍病棟で研修。2000年より東京共済病院呼吸器科に所属し、乳癌・肺癌の薬物治療を担当。2002年より国立がんセンター中央病院内科レジデント。2005年、肺癌におけるゲフィチニブ(イレッサ)の効果予測因子に関する研究で米国臨床腫瘍学会Merit Awardと世界肺癌会議Young Investigator Awardを受賞。2005年6月に東京共済病院に戻り、念願の「腫瘍内科」を開設。2008年2月には帝京大学医学部附属病院腫瘍内科講師。2010年4月には、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として就任し、3ヶ所目にして最も本格的な腫瘍内科を立ち上げた。「日本一の腫瘍内科をつくる」ことを目標に、診療、教育、研究の3面においてこれまでにない新しい試みをしている。
個人的には、Human-Based Medicine (HBM; 人間の人間に拠る人間のための医療)を掲げ、乳癌・消化器癌・肺癌を中心とした悪性腫瘍一般の薬物療法と緩和ケアに取り組んでいる。日本臨床腫瘍学会「がん薬物療法専門医」、専門医会副代表。
ホームページはhttp://homepage2.nifty.com/toshimitakano/


Copyright (C) Citizen Oriented Medicine. All rights reserved.