緊急報告
『緊急被ばくの事態への対応は冷静に』
(独) 国立病院機構 北海道がんセンター 院長(放射線治療科)
西尾正道
西尾正道
本原稿は、2011年3月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp で配信したものに17日に加筆して掲載するものです。
3月11日の大地震と津波により、福島県の東京電力福島原子力発電所で放射性物質の放出という深刻な事態が発生した。マグニチュード9.0という大地震と津波による悪夢のような大災害の現実に対して被害者の救出が全力で行われている。
一方、原発事故も大きく報じられているが、国民が放射線被ばくについて不安が強いという現実に対して東大医科研 上 昌広教授の依頼で、13日14時現在までの情報をもとに放射線被ばくについての基本的な考え方を報告し、冷静な対応を期待したいと思う。
12日午後1時に原発の敷地境界で1015μSv(マイクロシーベルト)/hの放射線量が計測されており、放射性物質が放出されたことは確かである。 Sv (線量当量)とは、人体への放射線の影響を考慮して設定された線量を示す単位である。通常、放射線の量はμSv や mSv(ミリシーベルト)の単位が使われる。1 Sv=1,000mSv=1,000,000μSv である。放射線障害防止法などの法令が定める一般人の年間の被曝線量の限度は1000μSv(=1mSv)とされているので、確かに大きな線量である。なお医療従事者や原発従業員などの職業被ばくの年間線量限度は最大50mSv(100mSv/5年)である。この事態にたいして、原因や問題点などに関して今回は論じることは控え、健康被害についてのみ論じたいと思う。
なお日本の緊急被ばく医療対策はJCO臨界事故の教訓を踏まえて、かなり整備されている。平成12年6月に「原子力災害対策特別措置法」が施行され、事故時の初期対応の迅速化、国と都道府県および市町村の連携確保等、防災対策の強化・充実が図られてきた。今回も早期に避難勧告が出された。
人類は宇宙や大地から、自然放射線を受けており、日本では年間2.4 mSvの被ばくを受け、医療被ばくを加えると日本人一人平均約 5 mSv(5000μSv)弱の被ばくを受けている。また東京・ニューヨーク間一往復では宇宙からの放射線が多くなり 0.19 mSvの被ばくを受けると言われており、低線量の放射線被ばくは日常的なものなのである。この自然放射線の量は地域によって異なり、ブラジルでは10mSv/年のところもある。
しかし放射線は被ばくしないことにこしたことはないので、テクニツクとして放射線防護の3原則がある。(1)距離・(2)時間・(3)遮蔽(しゃへい) である。
(1) 距離は放射性物質からできるだけ離れることであり、これは遠くへ避難することである。放射線の量は距離の二乗に逆比例するので、原子力発電所から1Kmの地点での放射線量を1とすると10Kmの地点では1/10x10=1/100 となり、百分の一の被ばく量となる。20Kmの距離に避難すれば、四百分の一となる。
(2) 時間はそのまま加算されるので、同地点に1時間滞在よりも一日滞在すれば、24倍の被ばく量となる
(3) 遮蔽は放射線の種類やエネルギーによっても異なるが、密度の高い建材で造られた室内に退避することにより、外部からの放射線をより多く遮蔽することができる。屋外にいるよりも木造建築の室内にいれば建造物が遮蔽体となりより少ない被ばく線量となる。さらにコンクリート造りの室内では低減する。核戦争に備えたシェルターは遮蔽を利用するものである。
さらに空気中に含まれている放射線物質からの被ばく量の低減のために皮膚を露出しない服装と帽子の着用、内部被ばくを避けるためにマスクの着用などを心掛けることである。
また、現場で考えることは放出された放射性物質は風によって運ばれるので、風上方向への避難が重要であるが、時間的経過で風向きも異なるし、現実的に海の方向へ逃げることはできないので、とにかく(1)距離と(2)時間の原則を考えて対応することとなる。実際には風などの気象条件によって空中に拡散した放射線量は大きく異なるので、最も現実的な対応としては放射線の測定器を設置して常時リアルタイムで線量を把握することである。測定器を避難場所に置いてその数値を常時示すことが、避難した人々に対する最も説得力のある方法である。
また放射線防護剤(内容はヨード剤)の配布が緊急被ばく医療の対応マニュアルに記載されているが、現実的にはヨードを多く含む昆布などの食品を食べながら避難することが現実的である。ヨウ素は甲状腺に取り込まれるが、事前にヨウ素を摂取し、甲状腺のヨウ素量を飽和させることにより、放射性ヨウ素が環境中にあっても、甲状腺に取り込まれないようにする対応である。
今後の対応として、放射線被ばく者への対応であるが、まず正確な被ばく線量を把握することである。被ばく線量によって対応が大幅に異なるからである。また衣服の上から測定器で計測して被ばくしていると判定された人でも衣服に付着した放射性物質の汚染と人体の被ばく線量は異なるものであり、衣服の汚染と人体の被ばくは区別する必要がある。 また放射線の種類やエネルギーによっても人体に与える影響が異なるため、実際に人体の被ばく線量の把握は容易ではないのである。
なお放射線が人体に与える影響は被ばくの時間的・空間的(被ばく範囲)な違いも考慮することも重要である。(1)急性被ばくか慢性被ばくか、(2)全身被ばくか局所被ばくか (3)外部被ばくか内部被ばくか により人体への影響は異なる。
(1)の時間的な問題としては、例えば日本酒1升を一晩で飲むのと、毎日晩酌で少量づつ1カ月間で飲むのとでは人体への影響は異なる。放射線の影響も同ようなものと考えられる。
(2)の問題としては、厳密には全身被ばくの場合と同一ではないが、胸部単純写真の撮影では0.06mSv(60μSv)、胃のバリウム検査では0.6mSv(600μSv)(この検査では実際には透視による放射線被曝も加えると2〜3mSv以上となる)、胸部CT 検査では6mSv(6000μSv)の局所被ばくを受ける。今回の被ばくは亜急性の全身被ばくであるが、極めて低線量であると考えられることから問題となることはない。 なお肺癌の標準的な放射線治療では最低60Gy程度の放射線を6週間の期間に30回に分割して照射されるが、この線量はX線の場合は、Gy=Svと考えると60,000mSvの線量となる。しかし限局した肺の局所への照射であるため、生命に危険を及ぼす線量とはならないのである。
(3) 被ばく線量とは外部被ばくと内部被ばくを合算したものである。
全身の急性被ばく時の人体への影響は、250mSv(250,000μSv)以下では臨床的な症状は出現せず、500mSvで白血球の一時的な減少が見られるとなれる。そして1,000mSv(1Sv)以上で吐き気や全身倦怠感が見られると言われている。更に5,000mSvでは死亡リスクが高くなり、8,000mSvでは全員死亡するとされている。こうした医学的な見地から見れば、現状の避難している方の健康被害は深刻なものではない。
なお、全身被ばくした場合の人体への影響は、(1) 急性期のものと晩発性のもの、(2)確率的影響か確定的影響か、に分けて考えることができる。急性期の致命的死因となるのは中枢神経死、腸管死、骨髄死である。超大量に被ばくした時は痙攣や意識障害が生じて中枢神経死となるが、通常は腸管死と骨髄死が問題となる。被ばくにより、人体の中で最初に影響を受けるのは腸管であり、水分の吸収障害や電解質バランスの異常により命を脅かす。被ばく後1週間前後ではこれが死因となることが多い。その後は1カ月前後に生じる事態として骨髄機能が障害される。白血球や血小板などの血球成分の新生が妨げられ、血液に異常をきたし免疫不全や出血による骨髄機能の喪失による骨髄死が増える。この時期に骨髄移植などが試みられるのはこのためである。
こうした急性期の影響の後に、数か月してから肺線維症や腎機能障害などが亜急性期に生じる。 こうしたある一定程度以上の被ばくにより、被ばく者全員に影響を及ぼすことが確定的な影響である。しかし症状を呈しない程度の低線量の被ばくでは、確率的影響の範疇として不利益が生じる。数年〜数十年後には何千人〜何万人に一人、発がんする確率があるという場合である。
しかしこの確率的な影響までこの際は考える必要はない。放射線量は極微量で安全なのに、室内退避場所で換気もせずに煙草を吸っているほうがよほど肺癌発生の確率は高くなる。
なお放射線の人体影響は、広島・長崎の急性全身被爆のテータを基に、低線量でも影響があると推測した『しきい値なしの直線仮説』が前提にあり、また健康被害に対する対処もほとんど医療行為ができなかった時代と環境下のものであり、不明な部分も多いことをお断りしておく。ちなみに私は2002年に低線量率密封小線源治療を行っていたため、職業被ばくの限度値に近い48mSv(48,000μSv)の被ばく線量であった。まだ髪が黒々としている私を見て、口の悪い友人には「放射線ホルミシスだ」と言われている。本当に分からないことが多いのです。
避難住民に対し放射線被ばくによる健康影響について説明を行ない冷静に対応し、また汚染の程度に応じて、適切な除染処置や予測被ばく線量を把握して必要ならば医療機関への搬送が望まれる。 医療における患者さんの被ばく量は、使用する目的が正当で最適に使用するという前提であれば、放射線を使用して得る便益との兼ね合いで、線量の制限はない。しかし今回の住民の被ばくは不要な被ばくであり、不当な被ばくとなる。この場合は電力を得るという便益と、事故による被ばくリスクの不利益とを天秤にかけて考えることとなることから、極めて社会的な要素が絡んだ判断となる。 また政府や東京電力の情報開示の不手際が気になるが、テレビなどのメディアの報道内容にも放射線に関する理解の無さに問題を感じている。「放射線をあなどるな! 放射線を無知に恐れるな!」である。
最後に原発事故への対応に全力をあげて働いている原発施設の従業員をはじめとする方々の健康被害が極めて深刻なものとなる可能性があるが、致命的でない被ばく量であることを祈るばかりである。
3月11日の大地震と津波により、福島県の東京電力福島原子力発電所で放射性物質の放出という深刻な事態が発生した。マグニチュード9.0という大地震と津波による悪夢のような大災害の現実に対して被害者の救出が全力で行われている。
一方、原発事故も大きく報じられているが、国民が放射線被ばくについて不安が強いという現実に対して東大医科研 上 昌広教授の依頼で、13日14時現在までの情報をもとに放射線被ばくについての基本的な考え方を報告し、冷静な対応を期待したいと思う。
12日午後1時に原発の敷地境界で1015μSv(マイクロシーベルト)/hの放射線量が計測されており、放射性物質が放出されたことは確かである。 Sv (線量当量)とは、人体への放射線の影響を考慮して設定された線量を示す単位である。通常、放射線の量はμSv や mSv(ミリシーベルト)の単位が使われる。1 Sv=1,000mSv=1,000,000μSv である。放射線障害防止法などの法令が定める一般人の年間の被曝線量の限度は1000μSv(=1mSv)とされているので、確かに大きな線量である。なお医療従事者や原発従業員などの職業被ばくの年間線量限度は最大50mSv(100mSv/5年)である。この事態にたいして、原因や問題点などに関して今回は論じることは控え、健康被害についてのみ論じたいと思う。
なお日本の緊急被ばく医療対策はJCO臨界事故の教訓を踏まえて、かなり整備されている。平成12年6月に「原子力災害対策特別措置法」が施行され、事故時の初期対応の迅速化、国と都道府県および市町村の連携確保等、防災対策の強化・充実が図られてきた。今回も早期に避難勧告が出された。
人類は宇宙や大地から、自然放射線を受けており、日本では年間2.4 mSvの被ばくを受け、医療被ばくを加えると日本人一人平均約 5 mSv(5000μSv)弱の被ばくを受けている。また東京・ニューヨーク間一往復では宇宙からの放射線が多くなり 0.19 mSvの被ばくを受けると言われており、低線量の放射線被ばくは日常的なものなのである。この自然放射線の量は地域によって異なり、ブラジルでは10mSv/年のところもある。
しかし放射線は被ばくしないことにこしたことはないので、テクニツクとして放射線防護の3原則がある。(1)距離・(2)時間・(3)遮蔽(しゃへい) である。
(1) 距離は放射性物質からできるだけ離れることであり、これは遠くへ避難することである。放射線の量は距離の二乗に逆比例するので、原子力発電所から1Kmの地点での放射線量を1とすると10Kmの地点では1/10x10=1/100 となり、百分の一の被ばく量となる。20Kmの距離に避難すれば、四百分の一となる。
(2) 時間はそのまま加算されるので、同地点に1時間滞在よりも一日滞在すれば、24倍の被ばく量となる
(3) 遮蔽は放射線の種類やエネルギーによっても異なるが、密度の高い建材で造られた室内に退避することにより、外部からの放射線をより多く遮蔽することができる。屋外にいるよりも木造建築の室内にいれば建造物が遮蔽体となりより少ない被ばく線量となる。さらにコンクリート造りの室内では低減する。核戦争に備えたシェルターは遮蔽を利用するものである。
さらに空気中に含まれている放射線物質からの被ばく量の低減のために皮膚を露出しない服装と帽子の着用、内部被ばくを避けるためにマスクの着用などを心掛けることである。
また、現場で考えることは放出された放射性物質は風によって運ばれるので、風上方向への避難が重要であるが、時間的経過で風向きも異なるし、現実的に海の方向へ逃げることはできないので、とにかく(1)距離と(2)時間の原則を考えて対応することとなる。実際には風などの気象条件によって空中に拡散した放射線量は大きく異なるので、最も現実的な対応としては放射線の測定器を設置して常時リアルタイムで線量を把握することである。測定器を避難場所に置いてその数値を常時示すことが、避難した人々に対する最も説得力のある方法である。
また放射線防護剤(内容はヨード剤)の配布が緊急被ばく医療の対応マニュアルに記載されているが、現実的にはヨードを多く含む昆布などの食品を食べながら避難することが現実的である。ヨウ素は甲状腺に取り込まれるが、事前にヨウ素を摂取し、甲状腺のヨウ素量を飽和させることにより、放射性ヨウ素が環境中にあっても、甲状腺に取り込まれないようにする対応である。
今後の対応として、放射線被ばく者への対応であるが、まず正確な被ばく線量を把握することである。被ばく線量によって対応が大幅に異なるからである。また衣服の上から測定器で計測して被ばくしていると判定された人でも衣服に付着した放射性物質の汚染と人体の被ばく線量は異なるものであり、衣服の汚染と人体の被ばくは区別する必要がある。 また放射線の種類やエネルギーによっても人体に与える影響が異なるため、実際に人体の被ばく線量の把握は容易ではないのである。
なお放射線が人体に与える影響は被ばくの時間的・空間的(被ばく範囲)な違いも考慮することも重要である。(1)急性被ばくか慢性被ばくか、(2)全身被ばくか局所被ばくか (3)外部被ばくか内部被ばくか により人体への影響は異なる。
(1)の時間的な問題としては、例えば日本酒1升を一晩で飲むのと、毎日晩酌で少量づつ1カ月間で飲むのとでは人体への影響は異なる。放射線の影響も同ようなものと考えられる。
(2)の問題としては、厳密には全身被ばくの場合と同一ではないが、胸部単純写真の撮影では0.06mSv(60μSv)、胃のバリウム検査では0.6mSv(600μSv)(この検査では実際には透視による放射線被曝も加えると2〜3mSv以上となる)、胸部CT 検査では6mSv(6000μSv)の局所被ばくを受ける。今回の被ばくは亜急性の全身被ばくであるが、極めて低線量であると考えられることから問題となることはない。 なお肺癌の標準的な放射線治療では最低60Gy程度の放射線を6週間の期間に30回に分割して照射されるが、この線量はX線の場合は、Gy=Svと考えると60,000mSvの線量となる。しかし限局した肺の局所への照射であるため、生命に危険を及ぼす線量とはならないのである。
(3) 被ばく線量とは外部被ばくと内部被ばくを合算したものである。
全身の急性被ばく時の人体への影響は、250mSv(250,000μSv)以下では臨床的な症状は出現せず、500mSvで白血球の一時的な減少が見られるとなれる。そして1,000mSv(1Sv)以上で吐き気や全身倦怠感が見られると言われている。更に5,000mSvでは死亡リスクが高くなり、8,000mSvでは全員死亡するとされている。こうした医学的な見地から見れば、現状の避難している方の健康被害は深刻なものではない。
なお、全身被ばくした場合の人体への影響は、(1) 急性期のものと晩発性のもの、(2)確率的影響か確定的影響か、に分けて考えることができる。急性期の致命的死因となるのは中枢神経死、腸管死、骨髄死である。超大量に被ばくした時は痙攣や意識障害が生じて中枢神経死となるが、通常は腸管死と骨髄死が問題となる。被ばくにより、人体の中で最初に影響を受けるのは腸管であり、水分の吸収障害や電解質バランスの異常により命を脅かす。被ばく後1週間前後ではこれが死因となることが多い。その後は1カ月前後に生じる事態として骨髄機能が障害される。白血球や血小板などの血球成分の新生が妨げられ、血液に異常をきたし免疫不全や出血による骨髄機能の喪失による骨髄死が増える。この時期に骨髄移植などが試みられるのはこのためである。
こうした急性期の影響の後に、数か月してから肺線維症や腎機能障害などが亜急性期に生じる。 こうしたある一定程度以上の被ばくにより、被ばく者全員に影響を及ぼすことが確定的な影響である。しかし症状を呈しない程度の低線量の被ばくでは、確率的影響の範疇として不利益が生じる。数年〜数十年後には何千人〜何万人に一人、発がんする確率があるという場合である。
しかしこの確率的な影響までこの際は考える必要はない。放射線量は極微量で安全なのに、室内退避場所で換気もせずに煙草を吸っているほうがよほど肺癌発生の確率は高くなる。
なお放射線の人体影響は、広島・長崎の急性全身被爆のテータを基に、低線量でも影響があると推測した『しきい値なしの直線仮説』が前提にあり、また健康被害に対する対処もほとんど医療行為ができなかった時代と環境下のものであり、不明な部分も多いことをお断りしておく。ちなみに私は2002年に低線量率密封小線源治療を行っていたため、職業被ばくの限度値に近い48mSv(48,000μSv)の被ばく線量であった。まだ髪が黒々としている私を見て、口の悪い友人には「放射線ホルミシスだ」と言われている。本当に分からないことが多いのです。
避難住民に対し放射線被ばくによる健康影響について説明を行ない冷静に対応し、また汚染の程度に応じて、適切な除染処置や予測被ばく線量を把握して必要ならば医療機関への搬送が望まれる。 医療における患者さんの被ばく量は、使用する目的が正当で最適に使用するという前提であれば、放射線を使用して得る便益との兼ね合いで、線量の制限はない。しかし今回の住民の被ばくは不要な被ばくであり、不当な被ばくとなる。この場合は電力を得るという便益と、事故による被ばくリスクの不利益とを天秤にかけて考えることとなることから、極めて社会的な要素が絡んだ判断となる。 また政府や東京電力の情報開示の不手際が気になるが、テレビなどのメディアの報道内容にも放射線に関する理解の無さに問題を感じている。「放射線をあなどるな! 放射線を無知に恐れるな!」である。
最後に原発事故への対応に全力をあげて働いている原発施設の従業員をはじめとする方々の健康被害が極めて深刻なものとなる可能性があるが、致命的でない被ばく量であることを祈るばかりである。