市民のためのがん治療の会
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患者さんのレポート

『前立腺癌放射線治療の経緯等』


髙木 周二
(茨城県水戸市在住・59歳)
小生の前立腺がんの治療に当たって、大学病院の皆様には大変お世話になりましたし、引き続きお世話になっています。創始者の医は仁術(病を診ずに人を診る)精神と当時日本で主流だったドイツ流の権威主義的、学問主義的な医学ではなく、イギリス流の患者を治す実用的な医学を目指した高い精神は、今も息づいている、と感じます。小生の治療の経緯等を簡単に報告いたします。
1.経緯
一昨年12月 勤務する会社で受けた成人病健診の一環として血液中のPSA値検査結果19ngが判明。

昨年3月 自宅近くの総合病院の泌尿器科で診察とPSA検査を受け、23ngの結果を得た。

4月 同病院で生体組織を採取して、検査。

5月 生体組織検査の結果、13か所から採取した中、前立腺の内部2か所からがん細胞が発見され、顕微鏡観察の結果、グリソンスコア(再発危険度等)10点満点中9点の高スコアと判定。

6月  近隣で泌尿器科医師が複数勤務する医療機関を紹介していただき、 前立腺全摘除の外科手術を受ける予定で7月上旬の外科手術を仮予約。
同医療センターでは、神経も併せて、外科手術で大き目に切除するとの計画のみで、アフターケアなどのフォローが見えなかったことから、自宅近くの総合病院に紹介状を新たに作成してもらい、病院を東京の大学病院に変更。

7月 同病院の泌尿器科教授に診察していただき、当初は9月末に腹くう鏡下手術を受ける予定で仮予約。

7月末 2回目の診察時に、同教授から、小生の腫瘍細胞のグリソンスコアが10点満点中の9点で、外科手術より最近主流になりつつある、高線量率の放射線照射治療(HDR)が適している、とのアドバイスをいただき、同病院の先生で、アメリカで研修してきた先生に施術をお願いすることにして、12月末に入院を伴う放射線治療を予約。なお、放射線の組織内照射(HDR)及びその後の三次元放射線組織外照射では、放射線の線量計算や照射位置の調整等、放射線治療医として高名な先生が担当してくれることになった。

8月 月1回のホルモン注射とホルモン剤(カソデックスまたはピカルタミド)の毎日一錠の服用をして、がん細胞を弱める施術を開始。


2.高線量率放射線組織照射治療High Dose Rate Brachytherapy(HDR)
HDRとは、約半年ほどホルモン療法を施した後、管になっている針を20本位肛門と急所との中間に刺しいれ、イリジウム192を2度、時間を置いて出し入れし、9Greyほどの高線量率の放射線を照射する治療。

12月20日(木)入院 昼食から断食、下剤、抗生剤服用。21時以降飲み物も禁止。
12月21日(金)朝6時に浣腸。8時30分手術着に着替えて、歩いて手術室へ。半身麻酔と睡眠剤で寝ている間に管状の針を20本刺しいれ、CTスキャンして、位置の確認と照射線量を計算。11時から4時間、病室で待機。
15時頃、放射線治療室で、第1回目の照射。15分位。じっとしていなくてはならないので、苦痛。ストレッチャーで病室に戻り、明日9時頃の第2回照射まで、仰向けで寝ていなくてはならない。時間が止まったようで、辛いので、看護師に睡眠薬の投与を頼み、うつらうつら寝ることができた。この間、点滴(胃薬、抗生剤含む)継続。排尿は管(カテーテル)を通して。ずっと背中から痛み止めを注入している。
夜19時ごろ、同大付属の看護学校の生徒さん数名が小生の病室を訪ねてくれ、クリスマスのキャンドルサービスで歌を歌ってくれた。天使のようだ。癒される。
12月22日(土)朝8時30分頃、寝たままベッドからストレッチャーに移されて、放射線治療室へ搬送。9時ごろ第2回目の放射線照射開始。位置確認のために、エコーかCTで見る。5分くらいの照射時間。無事終了し、そのまま病室へ戻る。手術後処理(刺し入れていた管状針を一気に抜く。止血のために針を通していた部分を圧迫する)。時間は1~2分位と思うが、痛い。
まだ、尿管カテーテルはつけたまま。歩く練習をさせられる。昼食から食事の提供有。完食。
12月23日(日)朝9時頃、主治医の先生が回診して、尿管カテーテルを抜く。その後、2,3回排尿時の出血状態や尿の量等を看護師に確認してもらい、昼食後に退院。帰宅の途、電車の乗継約2時間を挟んで、病院から駅まで10~15分程度、駅から自宅まで10分程度、何か晴れ晴れしい気持ちで足取りも軽く歩くことができた。
その後、12月28日の御用納めまで、平日は会社へ普通に通勤し、通常と殆ど変りない生活ができた。


3.三次元放射線外部照射
上記2.の組織内の放射線照射のフォローアップとして、X線を六方向か ら局部に集中させて照射する治療を3週間にわたり、計16日、1回2.5Greyの照射を実施した。
1月7日に下腹部のCTを撮って、患部に集中して放射線が照射されるよう、照射計画を作成してもらい、8日から平日は毎日、計16回の外部照射を実施した。7,8日は午後から半休を取り、9日からは午前中半休を取って、東京の大学病院に通い、毎日朝10時の予約で、略予約時間に照射してもらい(水曜のみ診察あり)、特急でとんぼ返りし、通勤する毎日。但し、1日だけ、電車の事故でダイヤの相当の遅れが生じたため、照射をキャンセルして全日会社で勤務をした。1月31日(木)に最終回の照射を実施し、一連の治療が終了した。
照射用のベッドに仰向けに寝て、下半身の衣類を下げ、X線の照射口がベッドの周りを半回転する。下腹部及び腰の両側に照射標的としての標(しるし)であるばってん(+)マークをマジックインキで書かれ、照射の前に標的マークを頼りにレーザー光線による位置合わせを行う。位置合わせには10~20秒位、照射には、機械が回転し、6方向毎に止まってX線をビーーと照射する。照射は全部で2分位。


4.治療後の経過等
12月暮れに施術してもらったHDRの後は、組織内に針を刺したための炎症等の影響で、1月初めに、一時頻尿と尿の出難さ、尿意切迫があった。しかし1月10日頃には、その後の外部放射線照射の影響を感じる前に、HDRで針を刺したことによる影響は解消したと感じた。外部放射線の照射によって、2週目、3週目の特に週末には、尿の出難さとその裏返しの頻尿を経験したが、薬ユリーフの使用(計4回のみ)により、楽になった。頻尿と尿の切迫に対処するためには、早め早めにトイレに行くしかなく、そのタイミングも徐々に学習した。最終的には、2月5日頃から数日、外部放射線照射の影響とみられる尿の出難さ、頻尿を強く感じ、多少の頭痛にも繋がり、疲れたが、9日(土)からの連休で、症状はかなり改善され、夜のトイレも2回程度に収まるようになった。

その後、3月に入り、頻尿と尿の切迫感は徐々に改善されてきたが、順調に回復するというより、冬から春になる際の三寒四温を繰り返すといった感覚。4月に入り、午前中は日によっては1時間おきにトイレに行きたくなるような日も多いが、午後は2時間~3時間くらい我慢できるようになってきた。暖かな日は、汗も出るので頻尿は緩和される。会社の東京オフィスは室内が暑く、室温が一日中一定なので、東京オフィス出張中は、トイレの回数が少なくて済んだ。

6月初旬の現在、頻尿と尿の切迫は改善され、夜もトイレに起きる回数はだいたい1回、起床後は午前中は1時間置き位、午後は2時間置き位の頻度になってきた。今後、気温が高くなり汗ばむようになれば、より頻度は少なくなりそう。

治療後の診察は、3ケ月に1度。2月4日の診察時、PSAの値は0.15ng、5月15日には0.11ng。主治医の先生によれば、ホルモン治療終了後半年(7月末)位まではホルモンの影響が大きく、放射線の効果自体は、8月位からはっきりしてくるだろう、とのこと。
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