『リキッドバイオプシー(液体生検)について』
がん治療に大切なのは早期発見ですが、CT、MRI、マンモグラフィーではがんの大きさが1cm以上でPETでも5mm以上にならないと発見できません。 発見され組織採取(生検)をして病理でがんの種類を判定しています。 早期発見の問題、コスト的(PET約10万円)にも体力的(針や内視鏡で採集の恐ろしさ)にも負担になります。
そこで、体液(血液、尿、唾液、等)を用いてがんが1mmでも測定・診断するリキッドバイオプシー(liquid biopsy:液体生検)が注目されています。
血中にわずかに存在するがんの遺伝子(遊離DNA)を測定診断するCTC(血中循環腫瘍細胞)を始め、 死滅した癌細胞、エクソソーム中のマイクロRNAを測定診断する研究・開発が大学発のベンチャーや医療研究機関で進められています。
アメリカでは、ベリデックス(Veridex)社のセルサーチ(CTC検査機)は米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けて医療現場に導入されています。 日本でもセルサーチを越える性能(静岡がんセンターでの比較試験)のCTC検査機が農工大のベンチャー(オンチップ社)で開発されています。 DNA解析機の大手、イルミナ(Illumina)社からスピンアウトしたグレイル(Grail)社は大規模な臨床試験をスタートするために資金をMicrosoftの創業者、ビル・ゲイツやAmazonのジェフ・ベゾスから資金調達しています。 ジョンズ・ホプキンス大学のチームによって設立されたフリーノーム(Freenome)社はネットスケープ社の共同創業者マーク・アンドリーセン氏とベン・ホロウィッツ氏から資金を得てパパドポラス検査をスタートしました。 31種類のタンパク質の測定結果をAIで解析することにより、結腸直腸がん、膵臓がん、卵巣がんの原発組織を約80パーセントの精度で特定することに、初めての試みで成功したようです。 この検査を1回500ドル前後で商用化できると言っています。 国立がんセンター東病院を中心に全国200以上の病院が連携したプレジションメディシン(SCRAMJAPAN)を支えている検査機(Guardant360)を開発したガーダントヘルス(Guardant Health)社にソフトバンクが410億円の出資をいたしました。
がん判定だけでなく抗がん剤など治療効果判定や治験(2重盲目テスト代り)などでの活用も期待されます。 がん治療のパラダイムシフトを起こす起爆剤であるリキッドバイオプシーから目が離せません。
なお、下記の表中の2~7の内容は、週刊新潮8月17・24日号(通巻3100号)のP172~P175の記事を基にアップデートしたものです。