市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会

『自著『放射線インフォデミック』を語る』


(独) 国立病院機構 北海道がんセンター 名誉院長
『市民のためのがん治療の会』顧問 西尾正道

2021年3月11日は東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故という天災と人災が同時に絡んだ歴史上でも稀な事態から10年となった。 本書のタイトルであるインフォデミックとは”偽情報の拡散”という意味である。 原発事故からの10年間はまさに放射線の健康被害に関してはインフォデミックの状態であった。 放射線の人体影響に関するICRPの嘘だらけの理論を盲信して、ICRPの報告に詳しいだけの御用学者は無知な政府・行政に意見を具申し、 それを根拠に国民に対しては、『安全・安心神話』を振り撒いてきた。 戦争では『国敗れて、山河あり』だが、原発事故では、『汚染されれば、山河なし』なのであるが、帰還を促し、地域の復興だけが最優先された。 そして健康影響に関しては人体の影響を評価する実効線量(シーベルト、Sv)というインチキな単位で議論して、多い・少ないと議論をしている。 また深刻な内部被曝の問題は不問にされ、将来健康被害が出現しても全く分析できない状態となっている。 医学では物理量の単位であるベクレル(Bq)と、放射線が当たった部位の吸収線量グレイ(Gy)しか使用することはなく、インチキなSvという単位は全く使用することはない。 放射線は被ばくした細胞や部位・範囲にしか影響を受けないため、被曝部位の吸収線量だけが使用されている。 このため、がんの放射線治療の歴史は、がん病巣にだけ照射し、病巣周囲の正常組織にはできるだけ照射しないで済む照射技術の工夫の歴史であった。 Svで議論してきた不毛な10年間であり、今後もこの状態が続きそうである。

一方で、脱原発を叫ぶ人達もICRPの土俵上で、Svによる議論を行っている。 また、がんの増殖に関するイロハも理解せず、反原発の立場優先から小児甲状腺癌の多発を唱えている。 これでは反原発の人達は信用を失うこととなる。正しい知識で判断してほしいものである。 1個の細胞が半年~1年で発がんしたとしても、1cm(1g)=10億個の細胞数(230)となるにはすべての細胞が30回細胞分裂して10億個となり、約1cm大の塊となる。 最も細胞分裂の速い悪性リンパ腫でも1個が2個に分裂するには約1カ月かかる。 腺癌のような比較的緩慢な経過の腫瘍では最低3カ月程度はかかるため、3カ月x30回分裂して1cm大となるには、約90カ月(7.5年)を要する。 実際には腺癌の中でも最も緩慢な経過を辿る甲状腺乳頭がんは10年以上を要すると考えられる。 現に私が放射線治療で経験した約3万人の中で、放射線誘発がんを生じた数例の症例は全て内部被曝を利用した治療例であり、また最短発がん期間は9年7カ月であった。 1~2年で発見できるほどのサイズにはならないのである。 例えていえば、生まれたての赤ん坊が1年で成人にはなりません。 甲状腺がんの多発を叫ぶ人もがんの増殖に関する知識を持って判断して頂ければと思う。

甲状腺がんは放射性ヨウ素が微粒子として甲状腺組織に取り込まれたことによる内部被曝そのものによる発がんであるが、 被曝している部位のエネルギー分布では、放射性ヨウ素の微粒子と接している細胞は膨大な線量が当たっているために発がんするのである。 これを外部被曝線量や実効線量や等価線利用(Sv)で議論しているという間違った議論をしているのである。 間違いを指摘すれば、誹謗・中傷とも言える姿勢で、個人的バッシングを浴びせてくる。 冷静に科学的・医学的な議論を行う姿勢も無いことには呆れる。 こうした10年間だったため、核兵器製造と原子力政策を推進するために嘘で構築されたICRPのインチキな放射線防護学(?)の土俵上で議論している愚行と、 がんの増殖に関する知識を欠落した判断で甲状腺癌の多発を叫んでいる人達にも再考して頂ければと思い、 10年間のデタラメな状況をまとめ、今後の正しい議論の参考として頂ければと思い本書を出版することとした。 なお出版業界の不況の中で、社会問題を取り上げて頂いている良心的な札幌市内の弱小出版社『寿郎社』の厳しい経営状態を支援するつもりで、「寿郎社」からの出版とした。 私は制作費の一部を出資しただけでなく印税も放棄し経営改善に寄与できればと思っている。 是非皆さんが個人的レベルでも購入して頂ければ幸である。 よろしくお願いいたします。

本表紙(表・裏)

2021.3.11.北海道新聞朝刊広告

購入用チラシ

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西尾 正道(にしお まさみち)

1947年函館市出身。札幌医科大学卒業。 74年国立札幌病院・北海道地方がんセンター(現北海道がんセンター)放射線科勤務。 2008年4月同センター院長、13年4月から名誉院長。「市民のためのがん治療の会」顧問。 小線源治療をライフワークとし、40年にわたり3万人以上の患者の治療に当たってきた。 著書に『がん医療と放射線治療』(エムイー振興協会)、 『がんの放射線治療』 (日本評論社)、 『放射線治療医の本音-がん患者-2万人と向き合ってー』 ( NHK出版)、 『今、本当に受けたいがん治療』(エムイー振興協会)、 『放射線健康障害の真実』(旬報社)、 『正直ながんの話』(旬報社)、 『被ばく列島』(小出裕章共著・角川学芸出版)、 『患者よ、がんと賢く闘え!放射線の光と闇』(旬報社)など。 その他、専門学術書、論文多数。
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