市民のためのがん治療の会
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ようやく打てた新型コロナワクチン女医体験記

『未接種での診察は不安だった』


NPO法人医枠研究所内科医・研究員
山本 佳奈
新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種もまずは65歳以上の方々や医療従事者への接種は進んでいるようだ。 通常インフルエンザなどは医師などの医療従事者には優先的に接種されるようだが、今回はその辺も不明確なことが多い。
なにしろ超短期間に開発され、従来のワクチンとは全く異なるタイプのワクチンで、副反応もよくわからないなどなど初めてずくめなので、接種には不安を抱えておられる方々も多いのではないかと思う。
「がん医療の今」へもたびたびご寄稿いただいております山本佳奈先生のご自身の接種体験のご寄稿を拝見したので、転載のご許可をいただくことにした。 医師としてのご体験であり、皆様のご参考になると思い、情報提供させていただきます。
なお、山本先生が接種を受けられた時期とのタイムラグがありますので、現在との事情が若干異なる場合もあります、その点はご留意ください。

この原稿は2021年3月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行メールマガジンVol.119 (http://medg.jp) に掲載されたもので、 原資料はAERA dot.(2021年6月23日配信;https://dot.asahi.com/dot/2021050400006.html?page=1)からMRICメールマガジンに転載されたものである。
転載ご許可に感謝申し上げます。
(會田 昭一郎)

ちょうど1週間前のお昼頃、ようやく1回目の新型コロナウイルスワクチンを接種することができました。

「痛くない……」これは、接種直後の私の感想です。

これまで、子宮頸がんワクチンや毎年のインフルエンザワクチン接種に加えて、医療機関で勤務するために必要なワクチンや海外渡航の際に必要なワクチンを接種してきました。 しかし、当然ながら、新型コロナウイルスワクチンは初めて接種するワクチンです。

昨年12月の英国でのワクチン接種開始から遅れること約2カ月。 2月17日から特定の病院に勤務する医療従事者から新型コロナウイルスワクチンの接種が開始されたものの、 私のようなクリニックに勤務する、いわゆる一般の医療従事者への接種が始まったのは、4月中旬から下旬にかけてでした。

クリニックで外来診療を行なっていると、風邪症状を主訴に受診される方に必ずお会いします。 原因が新型コロナウイルスかどうかを症状だけでは判断できないため、PCR検査を行わない日はありません。 幸い、今まで新型コロナウイルスに感染することなく過ごせていたものの、ワクチン未接種のまま診療を続けていくことに不安を感じずにはいられなかったので、 ワクチンがようやく接種できると分かった時、接種を希望することに対して迷いはありませんでした。

とはいえ、「接種後、どんな反応が自分に起きるか全くわからない」という一抹の不安はありました。 すでに接種した医療従事者の方にワクチン接種について聞くと、「全然痛くなかった」「接種後、特に大きな問題はなかった」という声がある一方で、 「腕が上がらなくなった」「熱が出た」「気持ち悪くなった」「だるかった」「腕が痛かった」など、個人差はあるものの様々な体調不良を訴える声がたくさん聞こえてきたからです。

実際に接種してみると、痛みを感じる間もなく、あっという間に接種は終了。 接種した部位が腫れることもなく、倦怠感や熱が出ることもなく、午後の診療を淡々とこなすことができました。 しかし、接種から5時間ほど過ぎたあたりからでしょうか。 次第に、左腕がなんだか重いような、そんな感覚を覚えました。 接種から8時間ほど経過した頃からは、接種から腕を上にあげようとすると、筋肉痛のような強い重い痛みを感じるようになったのです。

翌朝には痛みで目が覚めるほどでしたが、明け方が痛みのピークだったようです。 次第に痛みは弱まり、翌々日には痛みは消えていました。 幸い、熱が出ることもなく、倦怠感を感じることもなく、新型コロナウイルスワクチンを接種してから1週間が経とうとしています。

日本でも、医療従事者に加えて、ようやく高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が開始されましたが、世界の接種状況をみると、その差は開く一方のようです。 One World in Dataによると、5月1日時点で、イスラエルは総人口あたり62.5%の人が、少なくとも1回の接種を終えています。 イギリスは人口の50.6%(4月30日時点)、アメリカは43.7%(5月1日時点)が終えており、日本はたったの2.0%(4月29日時点)です。

接種の進む国々では、新規感染者数は減少を認めています。 例えば、接種が最も早く進んでいるイスラエルの5月2日時点での新規感染者数は73人で、4月中旬からは屋外でのマスクが不要となっています。 総人口の半数が1回目の接種を終えたイギリスの、5月2日時点での新規感染者数は2,188人です。 1月初旬の新規感染者数が6万8千人とピークを迎えた頃と比較すると、ワクチン接種が進むと同時に感染者数は大幅に減少を認めており、 4月12日からは、パブやレストランの屋外席での営業再開、小売店やジム、美容院なども営業が再開されました。 このままいけば、厳しい規制の段階的な緩和が今後進んでいくでしょう。

総人口の4割以上が1回目の接種を終えたアメリカの5月2日時点での新規感染者数は、2,188人でした。 新規感染者数が30万人とピークを迎えた1月初旬の頃と比較すると、ワクチン接種が進むと同時に、感染者数は減少傾向を認めています。 4月27日、アメリカ疾病予防管理センターは、新型コロナウイルスワクチン接種が完了した人々ができることを発表しました。(参照※1)

それによると、予防接種を完了して2週間以上経過していれば、特定の混雑した環境や場所を除いて、屋外でマスクを着用する必要がないと言います。 パレードやスポーツイベントといった混雑する屋外でのイベントや、ショッピングモール、映画館、美容院などの屋内訪問には、引き続きマスク着用を推奨しているものの、 野外での密集していない少人数の集まりならマスク無しで参加できるというのです。 ワクチン接種がさらに進めば、こうした規制も解除されていくかもしれません。

私も日々、天気やニュースをAmazonの通信装置であるAlexa(アレクサ)に尋ねては教えてもらっているのですが、 なんと、アレクサがCOVID-19ワクチンをどこに行けば接種できるかを教えてくれるというのです。(※2)

アメリカ疾病予防管理センターのガイダンスに基づいた情報から“Alexa, where can I get a COVID vaccine?(アレクサ、COVID-19ワクチンを接種するにはどこに行けばいいの?)” “Alexa, where can I get a COVID vaccine in Seattle?(アレクサ、シアトルでCOVID-19ワクチンを接種できる場所を教えて?)”などと尋ねると、一番近い場所を一通り教えてくれるようで、 続けて“Alexa, call the first one(アレクサ、最初のところに電話して)”と指示して電話をすることでワクチンや予約についての多くのことを知ることができるといいます。

試しに私もアレクサに尋ねてみましたが、「すみません、わかりません」と言われてしまいました。

2回目の新型コロナウイルスワクチンの接種は、5月中旬を予定しています。2回目の接種についても、またご報告したいと思います。


(※1)
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated-guidance.html#anchor_1617376530945

(※2)
https://www.aboutamazon.com/news/devices/alexa-where-can-i-get-a-covid-vaccine


山本 佳奈(やまもと かな)

1989年生まれ。滋賀県出身。医師。 2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。 ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
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