市民のためのがん治療の会
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『種子法廃止・種苗法の運用で 私達の食糧と食の安全はどうなるのか』


元農林水産大臣・弁護士 山田正彦

私は、2018年4月に種子法、正式には「主要農作物種子法」が廃止されたことを憲法違反として、300人近くの原告と、20人以上の弁護団とともに裁判で国を訴えています。

種子法廃止の問題点を簡単に整理すると、食糧安全保障の問題、農薬耐性のある作物の残留農薬による害、安全性の不確かなゲノム編集と遺伝子組み換え技術の使用問題があります。 種子や食の安全を取り巻く現状とともにこれら問題点をお伝えします。

1 食糧増産への不利益

(1) 種子法の廃止によって農家に優良な種子の提供ができなくなる

優良な種子を農家に提供することについては、 種子法8条に「都道府県は当該都道府県に普及すべき主要農産物の優良な品種を決定するために必要な試験を行わなければならない 」と規定されている上、 立法過程の農林委員会において、「米麦の増産のためには、優良な種子を確保し、これを普及するということが根本的な方法」と坂田英一議員が立法の意義を述べていることからも明らかです。


①日本は南北に長い列島ですから、各地で気候の違いが大きく例えば九州のコメの品種は北海道では育ちません。 2000年以上前から各地の気候や土地の性格に適した多様な品種が栽培され続けており、今でも各都道府県の推奨品種だけで約300種、赤コメ黒コメ等、古代からの在来種を入れると1000種類の多様な品種があります。

今では日本を代表するような美味しいコメ「ゆめぴりか」を産出するまでになった北海道の開拓は、コメの育たない寒冷地で稲を開発・定着させる努力とともにありました。 本格的にコメの栽培ができるようになるだけでも、明治の初めから1998年「きらら397」までという長い年月を要したのです。

そのような事情から各都道府県に対し、その土地気候に適した優良な品種の開発を制度として義務付けたのが種子法なのです。

その成果として、冷害に強い「ひとめぼれ」の開発があります。 全国的な冷夏に襲われた1993年、全国の米の作況指数(平均的な収量を100とする)は74で、特に東北地方の不作は深刻でした。 享保の飢饉の再来と言われ、政府がタイなどからコメを緊急輸入するほどでした。 さいわい宮城県の古川農業試験場は冷害に強い「ひとめぼれ」を開発していたので、なんとか東北のコメ農家は救われ食糧の確保ができたのです。

このように多様な品種を各地で栽培していることは、日本の冷害、旱害(日照りの害)、ウイルス等の感染症の対策にもどうしても必要なものと考えます。

かつてロックフェラー財団が1963年フィリピンに国際稲作研究所を設立して「緑の革命」と称して化学肥料によって飛躍的に増産できる新品種「IR8」を開発しました。 そしてアジア各地に広めたところ、それまで循環型のオーガニックの栽培だったアジアの稲作が農薬と化学肥料の農法に変わりました。

ところがイネの病気である白葉枯病が大発生し、耐性のないIR8を軒並み枯らしたので、アジアの稲作は壊滅的な打撃を受けました。 当時この病気には対応できる農薬が見つからず、あっても毒性が強くて使えませんでした。 この危機を乗り越えるため従来の育種学に頼ることになり、たまたま南インドの在来種の中から白葉枯病に耐性を持つ品種を見つけ出してアジアの稲作の危機を救うことができたのです。


②にもかかわらず政府は、種子法廃止と時を同じくして「農業競争力強化支援法」を成立させてその8条3項に「銘柄が多すぎるので集約する」としたのです。 そして農水省は全国8カ所で説明会を開き、これからの時代は各県で開発した品種でなく三井化学アグロの「みつひかり」等、民間の優良な種子を作付けするようにと奨励して回ったのです。

民間の品種には日本モンサント「とねのめぐみ」、住友化学の「つくば SD」豊田通商の「しきゆたか」等F1の品種があります。

政府は規制改革推進会議の意向のもと、銘柄が多すぎるからとこれら数種類の民間の種子に集約させようとしているのです。 これらの種子は多収穫を目的としたもので、中食(弁当や食堂など業務用)にはなっても消費者が求めている食味のよい優良な種子とは言えません。

都道府県が品種開発をやめ、私企業による数種類の種子に集約されたら、多様な気候をもち火山地帯から湿地帯まで農地の条件が異なる日本では、 温暖化で年々台風・豪雨が激しくなってきているこれからの時代、絶えず凶作による食糧危機を招くおそれがあります。


③各都道府県は、種子法を根拠に毎年、農業試験場等において3年がかりで優良な種子を生産して4年目に一般農家に提供してきました。

種子は生き物なので、農業生産に使えるレベルのものを提供するには大変な手間がかかります。 放っておけば先祖返りして赤コメ黒コメ等が出てきたり、花粉の交雑で「化ける」ことがあります。 取り除き作業を年に8〜10回は行って丈の高さや開花時期と成熟時期を揃えることで、最良の状態のものを一度に収穫可能な種子をつくります。 そして県などが審査の上、発芽率90%以上の保証書を添付し、4年目にやっと種子として出荷することができます。

農家が安心してコメの作付けができ、消費者も当たり前のように美味しいコメをいただくことができてきたのは、こうした地道な作業に責任を持って取り組む制度があったからです。


④これらの公共の種子を廃止して「民間の活力」を利用して日本の主食である米麦大豆も民間企業の種子に委ねることになれば次のようなことが生じてくることになります。

・民間企業は営利を目的とするため、これまでのように厳格な審査・検査がされず、どうしても手抜きの種子栽培にならざるを得ません。 ある県において経費節減のために種子栽培を民間に委託したところ、発芽率がきわめて悪く、すぐ県の管理に戻したことがあったそうです。 世界で問題になっている水道事業の委託と同じように、営利企業に任せるならば質の低下や料金の高騰は免れないでしょう。

(2) 安定して安価な種子を農家に提供できなくなる

種子法において安価な種子を農家に提供することについては、1952年種子法が成立する際の国会、農水委員会の議事録に 「優良な種子はどうしても高くつくので、国家存立の基礎である食糧自給率を高めるために農家に優良な米麦を生産してもらう必要があり、 地方自治体や国などの助成が必要で安価に提供しなければならない」のように述べられていることから明らかです。

①ところが種子法を廃して農水省が全国8か所で種子法廃止理由についての説明会を開いた際、これまでの各都道府県による産地奨励品種ではなく民間の企業、三井化学の「みつひかり」を推奨して回りました。 「みつひかり」の価格は公共の種子であるコシヒカリの8倍から10倍です。

米国の主要農産物、小麦の種子は1/3が各州の農業試験場や大学で生産されたものを公共の種子として農家に安く提供し、現在でも2/3は自家採種(育った作物から種子を取ること)を続けています。 カナダでは2割が農水省の生産した公共の種子であり、8割は自家採種です。 オーストラリアでも95%は自家採種、5%が公共の種子で、各国で優良な品種を安価に提供するため、種子法のような制度を維持していることになります。

日本でも、もともと各都道府県は奨励品種の普及目的で農家に安価に提供した上、自家採種を指導してきた経緯があります。

ところがこの2、3年、規制改革推進会議の意向に従い、種苗法の改定により「登録品種」の自家採種を禁止する方向になってきました。 主要農作物であるコメ・麦・大豆の公共の種子についても新たに許諾を必要とする制度に変えられ、許諾料も年々あげられています。 長野県ではコメの推奨品種の許諾料がキロ当たり約1割あげられ(2021年)、栃木県においても県から種子栽培農家へ売り渡される原種(交配で種子を作るための原料)の価格は、なんと前年に比べて2倍から3倍に上がっています。

今回の種苗法の改定で育成者の権利が強化され、種子価格の高騰について何の規制もされていないので、民間の育成者の意向次第で何十倍にも高騰する恐れがあるのです。


②安定して農家に優良な種子を提供できなくなる

これまでは道県が前年度に農協、市町村等を通じて綿密な作付け調査をして「種子の作付け計画」を作成してほぼ過不足がないように責任を持って種子を供給してきました。 それによって需要の少ない品種も生産され、多様な品種の栽培が続けられてきたのです。

「民間の活力」に任せた場合、企業としては種子で利益を出すために生産コストを極限まで切り詰めていくことになります。 当然、よく売れる品種だけを大量に生産することになり、農家にとって自分の農地に適した、あるいは作りたい品種の種子を入手できなくなるおそれがあります。 実際に、埼玉県川越の農家が「うちの畑に合うホウレンソウの種子を買おうと申し込んだら、今年から輸入していませんと言われてがっかりした」とドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」のインタビューで語っています。

種子の生産は野菜等が90%中南米、アフリカなどの発展途上国で生産されているように、いずれ日本の種子も人件費が安く農地の広い海外で、多国籍企業によって生産されるようになるのではないかと考えられます。

そうなれば発芽率が悪かろうが、選択肢が少ないためにそうした種子を購入せざるを得なくなります。

ウクライナ戦争で黒海の港が封鎖され、小麦が輸出できなくされる出来事がありましたが、そのようなことがあれば、食糧をほぼ輸入に頼っている日本はひとたまりもないでしょう。 有事の際には作物だけでなく種子が輸入できなくなる恐れがあります。 今後、地球温暖化の影響で大規模な気候変動が起こることが予測され、その際に主要農産物の種子を海外の企業に依存していれば、国内の農家に供給できなくなり、最悪の場合、飢えることにもなりかねません。

そのためにも政府の責任で種子を安価に提供することが極めて大切なのです。

2食の安全への不利益

(3) 種子法が廃止されて安全な種子が提供できなくなる

農業農村基本法第16条には「国は、食料の安全性の確保及び品質の改善を図る」とともに食品に関する公衆衛生としての「必要な施策を講ずるものとする」とあり、 食品安全基本法第3条にも「食品の安全性の確保は・・・国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に・・・行われなければならない。」とあります。

種子法が成立した1952年当時、品種改良には交配しか手段がありませんでしたが、現代ではゲノム編集、遺伝子組み換え等、必ずしも安全とはいえない技術が出てきました。 ここでいう法律は、種子も安全なものを提供しなければならない、と解すべきではないでしょうか。


① 農産物の種子がF1の品種になってしまう

種子法廃止時に農水省が従来の品種に代わって奨励した品種のなかには「F1」のものが多かったのですが、このF1というのは一代限りの交雑種の種子です。 この種のタネは、成体から種子を集めて畑に蒔いても、まともな作物になりません。 そのため収穫したものを種子として翌年利用する「自家採種」はできず、毎年種子を購入しなければならなくなります。 もし大規模な気候変動などで種子が手に入らなくなれば、容易に食糧不足に陥るでしょう。


②ゲノム編集種子の影響

2019年10月、農水省、厚労省、消費者庁は、ゲノム編集食品は遺伝子組み換え食品と違い、他の生物のRNAは入っていないので安全であるとし、 安全審査の手続きもなく任意の届け出だけで表示もないままに流通させることを決定しました。

ところが各国はゲノム編集を遺伝子組み換えの技術の延長上のものとし、EUでもゲノム編集は遺伝子組み換えと同様の規制を受けています。 EU司法裁判所もゲノム編集は遺伝子組み換えであると判決し、ニュージーランドの裁判所も同様の判断でした。

現在のところ世界でゲノム編集を安全としているのは日本と米国2カ国だけです。

このような状況で同年11月、農水省は公式な検討会を開いて、ゲノム編集の種子を有機認証できないかと諮問しました。 ここでは反対意見が多数を占めましたが、同じ頃米国でも反対が多く、同問題はそのままになっています。

多収穫を目的とした飼料米の「シンク能改変稲」等の品種が、現在なんの規制もなく、作付けされていてもおかしくない状況にあります。 届け出も表示もなされないので調べようがありません。 それでも稲の花粉は1.5 km四方まで飛ぶため、花粉の交雑としての汚染のために国際的な基準で有機栽培をすることが日本ではできなくなっていくおそれがあります。 そうなれば基準の厳しい海外に有機農産物を輸出することは不可能になってしまうのです。

遺伝子組換え・ゲノム編集について世界的な権威とされているカリフォルニア大学のイグニシアス・チャペラ教授は 「遺伝子は互いにバランスを取っているので1か所でも壊されると他の細胞は敵が来たと思い、有毒な物質を作り出すなど予測不可能な影響が出るおそれがある。 ネイチャー誌の論文でも、ラットの遺伝子の一部を壊しただけで1600の副作用が生じることが明らかになっている」と述べています。

ゲノム編集の新しい技術(狙った遺伝子のところにハサミを持っていき壊すことができる)「クリスパーキャス9」を開発してノーベル化学賞をもらったラウドナー教授自身も、 ゲノム編集には「何らかの規制を早くしなければ、核兵器と同じように人類に災害をもたらすことになる」と警鐘を鳴らしています。 遺伝子組換えの研究を名古屋大学で長年続けてきた分子生物学者の河田昌東教授は、狙った細胞を壊すには、現在の技術では他の生物の細胞による「マーカー遺伝子」が必要とされているので、 ゲノム編集をしても他の生物の遺伝子は組み入れられない、という政府の説明は間違いだと指摘しました。 また、マーカー遺伝子を作るのに抗生物質が使われているため「抗生物質耐性菌を発生させる恐れ」があるとも述べています。 耐性菌に感染すると、普通の風邪と違って抗生物質が効かないため、生命の危険もあります。 米国のCDC( 疾病予防管理センター)は、米国では既に29種類の抗生物質耐性菌が出現しており年間280万人が感染し、そのうち3万5000人の死亡を確認しています。

日本でも国立国際医療研究所が2種類だけの抗生物質で2019年12月に調べたところすでに抗生物質耐性菌感染症によって年間で8000人が亡くなっていると発表しています。


③既に日本でも遺伝子組み換えのコメの種子WRKY45等が用意されている

日本政府は米国とのTPP協定の合意後、遺伝子組み換え作物の承認件数が急増、米国を抜いて318種類を認可しています。 北海道では、じゃがいもや、砂糖の原料になるテンサイなど、すぐに作付けが可能なものだけでも134種類あります。 コメの種子でも多収穫のコシヒカリ等、70種類が用意されているのです。

これら遺伝子組み換え作物の種子には、病害虫を殺す「BT毒素」が組み込まれたうえ除草剤ラウンドアップに耐性を持つ遺伝子も組み込まれています。 こうした作物は病害虫の被害を免れ、除草の手間もかからないと言われていますが、必ずしもそうではないようです。 既に除草剤ラウンドアップに耐性を持つスーパー雑草、BT毒素に耐性を持つ病害虫も発生していて、2017年を境に世界では遺伝子組み換え作物の栽培は頭打ちになっています。 インドでも2015年、最高裁判所が遺伝子組み換え作物は違法とする旨の判決を、ロシアでも2016年上院下院で作付・輸入ともに禁止、中国も2017年からそれに倣っています。

BT毒素は日本の農薬取締法で規制されている殺虫剤の成分であるのに、BT毒素入りの種子については何の規制もなく認めているので、 日本人は知らず知らずのうちに食品から殺虫剤を取り込むことになり、何らかの被害が発生することは容易に考えられます。

さらに除草剤ラウンドアップについては2018年8月米国のカリフォルニア州で学校の用務員ジョンソンさんが校庭の除草のために20回から30回ラウンドアップを散布したら、 リンパ節のがんになったとしてモンサント社を訴えたところ、裁判所はモンサントに320億円の支払いを命じたのです。 この裁判は控訴審の判決でも賠償額は減額されたものの認められています。 この判決を決定的にしたのはモンサント社の機密資料(以前からモンサント社はラウンドアップでがんになることを認識していた)を証拠として提出することができたことだとされています。

その後フランスでも最高裁判所がラウンドアップの前身である除草剤「ラッソウ」でモンサント社に対し同様に損害賠償を認める判決を出しました。 現在米国では、ある夫婦のがん患者に2200億円の賠償命令が出され、すでに全米の被害者たちがモンサントに対し12万件もの訴訟を起こしています。

これらのニュースは全世界のトップニュースになったのですが、日本だけはなぜか報道されませんでした。 この裁判によって世界49カ国が除草剤ラウンドアップの禁止を決定 (NHK 「クローズアップ現代+」で2020年10月22日放送)。

日本だけは、いまだにラウンドアップの主成分グリホサートの規制はなくホームセンターでも山積みにされ、コマーシャルでも「環境にやさしい除草剤」として宣伝が続けられています。 日本では規制するどころか、ベトナム戦争の枯葉剤と同様の機能を持つこの農薬の残留基準を小麦で6倍、蕎麦で150倍、ものによっては400倍にまで緩めてしまったのです。

米国、カナダ、オーストラリアでは、自国よりも大幅に規制が緩い日本向けの小麦をラウンドアップで一斉に枯らして収穫しています。 小麦の芯まで水分が無くなるので日本への輸送中に病虫害が発生することはないからとのことです。 輸入小麦を調べると、ほとんどの小麦からグリホサートが検出されます。 2019年、国会議員23名を含む28人の毛髪の検査をしたところ、うち19人からグリホサートが検出されています。

学校給食などのパンなどからもグリホサートが検出されています。 大人より薬物への耐性が低く発達への影響も大きくなりがちな子どもたちに、そんなものを与えてよいのでしょうか。

3 食料安全保障の観点

種子法成立時の国会の議事録には「米麦等主要食糧の増産をはかり、国内においてその自給率を高めますことが、我が国の自立の基礎條件であることは申し上げるまでもない」(坂田英一議員)と書かれています。 このことから日本の食糧安全保障において自給率の達成がいかに大切なことであるかが伺えます。 国家として国民を飢えさせないようにする食糧安全保障は、敵国からの侵略を防ぐ防衛上の安全保障同様、もっとも大切な責務です。

ところが日本の食料自給率は年々減少して、2018年にはカロリーベースで37%まで落ち込んでいます。 TPP協定、日欧EPAが2019年に発効、日米FTAも2020年発効と関税を減免させての自由貿易協定が次々に発効されて、日本には急速に海外からの畜産物、酪農製品、ワインなどの輸入が急増、 日本はさらなる食料自給率の低下を免れないでしょう。

世界各国との食料自給率を比較しても日本の自給率の低さは顕著です。

農林水産省 「食料需給表」、 FAO"Food Balance Sheets" 等を基にした農林水産省の試算。
注:畜産物及び加工品については、輸入飼料及び輸入原料を考慮して計算。

それに追い打ちをかけるように、コロナウイルスの世界的な流行によってウクライナ、ロシアなど世界の19か国が食糧の禁輸措置をとっています。

米国等の穀倉地帯は小麦等の生産を地下水に頼っていますが、その水位が大幅に下がって耕作の危機を迎えようとしています。 イランでも最近同様のことが起こり、畑が干上がった様子が報道されました。 まさに起こりつつある急激な気候変動によって、旱魃、豪雨等に見舞われ、日本も近い将来食糧危機に陥るのではないかと考えられます。

その時に残された種子が先述したように F 1、ゲノム編集、遺伝子組み換え種子であれば、自家採種して作付けしても発芽せず、発芽しても収穫はできなくなります。 F1の種子は一代限りであり、ゲノム編集、遺伝子組み換えの種子には自殺因子とされている「ターミネーター因子」が埋め込まれているからです。 いざタネが不足したとき、多くの日本人が餓死することも考えられます。

先日知人の農家から種籾が手に入らずに困っているとの連絡がありましたが、 茨城県 JA 中央会の会長八木岡努さんも今年は肥料など農業資材が手に入りにくくなってきたが、それ以上にタネが値上がりして困っていると語っていました。

ウクライナ戦争の影響も考えられますが、投機筋が種子を買い占めているとの噂もあります。 種苗法が改定されて自家増殖(採種)禁止が今年の4月から施行されて、いよいよ自家採種した場合には10年以下の懲役、1000万以下の罰金(農業生産法人では3億円以下)、共謀罪の対象になったことから、 来年以降を見越して商社等が買い占めを始めたかもしれません。

いずれにしても、ウクライナの戦争も長期化する予想の中で今年の秋以降は世界的な食糧危機に陥りそうな気が致します。

 日本経済新聞に「肥料など農業資材が50%以上値上がり」とありましたが、昨秋の米価が60kg1万円を切り、栃木県など安いものは6000円まで下がったそうです。

私は農水大臣の時に日本のコメの生産原価を調べたところ1万5000円でしたので、当時その価格を相場が下回ったなら差額を戸別所得補償として支払ったのです。

米国ではコメの生産原価は60kg 1万2000円ですが国際相場が1万7000円なのでその差額を政府が農家に補填して、さらに収入保険で収入の5割以上を補填していますので持続的に食糧が生産されているのです。 EU では農家収入の8割は税金で賄われています。

日本は何もしていないどころか水田の「フル活用」で転作奨励金を減らそうとしています。

このままではJA の組合長たちが心配してるように高齢の農家は農業を黙ってやめてしまい大規模の生産法人は秋以降倒産が続出するのではないかと思います。

以上の理由から、現在、安全で安心な種子が必要とされているのです。

『タネは誰のもの』、『食の安全を守る人々』のDVD発売中です。是非ご購入下さい。また、これらの上映会も全国各地で行われております。
下記ご覧の上、上映会企画していただければ幸いです。

映画『タネは誰のもの』
 https://kiroku-bito.com/tanedare/
映画『食の安全を守る人々』
https://kiroku-bito.com/shoku-anzen/

山田 正彦(やまだ まさひこ)

1942年、長崎県生まれ。弁護士。
早稲田大学法学部卒。司法試験に合格後、故郷で牧場を開く。オイルショックにより牧場経営を終え、弁護士に専念。その後、衆議院議員に立候補し、4度目で当選し5期務める。

2010年6月、農林水産大臣に就任し農業者戸別所得保障を実現。
2012年、民主党を離党し、反TPP・脱原発・消費税増税凍結を公約に日本未来の党を結党。

現在は、弁護士の業務に加え、TPPや種子法廃止、種苗法改定問題等、食の安全、食料安全保障の問題点を明らかにすべく現地調査を行い、各地で講演や勉強会を行っている。 また学校給食をオーガニック食材にするための運動にも注力。

メディアが伝えないタネや食の安全について広く知ってもらうためにプロデューサーとなり、映画を2本制作。
『タネは誰のもの』『食の安全を守る人々』

日本の種子を守る会 顧問、TPP交渉差止・違憲訴訟の会共同代表、デトックス・プロジェクト・ジャパン共同代表、他

著書・共著:
『売り渡される食の安全』、『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!』、『タネはどうなる!?種子法廃止と種苗法運用で』、『消された「種子法」』
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