市民のためのがん治療の会
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『「製薬マネーデータベース」リニューアル公開のお知らせとご寄付のお願い』


医療ガバナンス研究所
尾崎 章彦・上 昌広
製薬会社から医師や医療機関に支払われた金銭やそれが診療に与える影響については「がん医療の今」でも何度も取り上げてきました。 今回、製薬会社から医師や医療機関に支払われた金銭をまとめたデータベースの最新版が公開されましたので、ご案内いたします。
このデータベースを見ると、「朝まで生テレビ」などCOVID-19のテレビコメンテーターとしておなじみの医師なども、驚くような金額を受領しているケースがあります。 現在、COVID-19第7波が猛威を振るいつつあり、改めてその重要性が注目されるべきです。

なお、この情報の初出は2022年7月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jpです。

このデータベースは、各製薬会社が公開したデータを集計することで作成しています。 しかし、エクセルなど加工が容易なデータ様式においては公開されておらず、集計には膨大な手作業が必要です。 結果として、データベース作成には多額の費用が発生しております。
そこで本文にもありますように寄付を募っております。 是非、ご協力のほどお願い申し上げますとともに、薬業界の情報提供の方法が、より透明性を担保する形に改善されますよう提言してゆきたいと思います。
(會田 昭一郎)

2022年7月1日、NPO法人医療ガバナンス研究所は、『製薬マネーデータベース』( https://yenfordocs.jp )をリニューアル公開しました。

製薬マネーデータベースでは、製薬会社から医師や医療機関に支払われた金銭を検索できます。

以前の記事( http://medg.jp/mt/?p=10948 )でもご紹介したように、 今後、製薬マネーデータベースは、NPO法人医療ガバナンス研究所が単独で運営いたします。 ビジュアルコンテンツを充実させ、これまで以上に分かりやすく使いやすい、ユーザーフレンドリーなサイトを目指してまいりますので、ご期待ください。

さて、そもそもなぜ製薬マネーデータベースが必要なのでしょうか。

それは近年、国際的に「利益相反の透明化」が重要視されていることと関係しています。

特に医療においては、製薬会社から医師への不透明な謝金や寄付金により、薬剤のガイドラインや医師の処方、医療機器等に関して、謝金を支払った企業を優先するなどの影響が懸念されてきました。 2021年には、奨学寄附金による処方誘導をめぐり、小野薬品工業と三重大学医学部において逮捕者も出ています。
( https://internal-journal.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2021.762637/full )

こうした製薬企業と医療者間の金銭授与について、米国やフランスなどでは情報公開が法制化され、公的データベースが構築されています。 日本では、公的データベースを作成するかどうかの議論が始まったばかりです。

現状では、日本製薬工業協会の「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」(自主基準)などに準じて、各製薬会社が医師や医療機関等への支払いを公開していますが、 各社の結合がなく、閲覧性が著しく低いため、公共の利益に適っていません。

そのため医療ガバナンス研究所は、独自の立場においてデータを集計・統合し、 『製薬マネーデータベース』( https://db.tansajp.org/ )としてインターネット上で2019年より毎年公開してまいりました。

目標は、製薬企業と医療者の金銭関係についての認知度を高め、それによって、患者さんが日頃受ける診療が、より良いものになることです。

実際、本データベースの利用者数は2021年からの約1年間だけでも26万人を超え、国会や政府機関でも活用されています。 また、若手医療者に関する教育や国際的な学術活動の一環として本データベースを用いた研究活動を行っており、 英文誌での論文発表( https://www.megri.or.jp/drug )は40報を超えています。

欧米諸国と同様に日本でも、製薬企業と医療者間の金銭授受に関するデータベースが社会インフラとして必要な時代になっています。 しかしながら公的データベース不在の中、私たちの『製薬マネーデータベース』を長期事業として継続していくことの意義を、実感しております。

ただしデータベース作成・更新には、人件費をはじめ毎年200万円を超える費用がかかっています。 当NPOの寄付金などで賄ってまいりましたが、事業の長期継続を念頭に置いた財政基盤の強化が必須です。

つきましては、誠に恐縮ではございますが、今後のデータベース作成事業に向け、皆様のあたたかいご芳志を賜れますと幸いです。

(ご寄付のご案内)
https://www.megri.or.jp/yenfordocsdonation

医療ガバナンス研究所は、引き続き製薬マネー問題に真摯に取り組んでいく所存です。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。


尾崎 章彦(おざき あきひこ)

外科医。
平成22年3月 東京大学医学部卒
平成22年4月 国保旭中央病院 初期研修医
平成24年4月 一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合財団 外科研修医
平成26年10月 南相馬市立総合病院 外科
平成29年1月 大町病院 内科
平成29年7月 常磐病院 乳腺外科
外科研修医時代に経験した東日本大震災に大きな影響を受ける。 平成24年4月からは福島県に移住し、一般外科診療の傍,震災に関連した健康問題や製薬企業と医療者の金銭的利益相反の問題などに取り組んでいる。 専門は乳癌。 令和3年12月より福島県立医科大学特任教授(非常勤)に就任

上 昌広(かみ まさひろ)

特定非営利活動法人 医療ガバナンス研究所理事長。 1993年東大医学部卒。 1999年同大学院修了。医学博士。 虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の診療・研究に従事。 2005年より東大医科研探索医療ヒューマンネットワークシステム(後に 先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年3月退職。 4月より現職。星槎大学共生科学部客員教授、周産期医療の崩壊をくい止める会事務局長、現場からの医療改革推進協議会事務局長を務める。
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