『「がん何でも相談外来」を終了して』
北海道がんセンター 名誉院長 西尾正道
2008年4月に院長となり、5月より「がん何でも相談」外来を開設した。 がん治療においては、最初の適切な治療が重要であり、がん対策として、全国に「がん診療連携拠点病院」が指定され、セカンドオピニオンを受けることも普通となった。 しかし。担当している医師にセカンドオピニオンを申し出ることも患者側にとっては容易に言い出せるものではない。
また罹患している疾患の相談を受けるとしても同じ診療科の医師に相談するという形となり、場合によっては同じ医局の同門の医師であることもあり、ほぼ同じ意見を聞かされるという結果となることも多い。 「3時間待ちの3分診療」と言われる日本の医療現場では何よりも説明不足があり、患者さんも命に係わる癌となっても充分な説明が受けられていない現状に対して、「がん何でも相談外来」を開設したのである。 全ての臓器の約3万人のがん患者さんの放射線治療に携わってきた経験から、治って当たり前の人から、緩和ケアしか残されていない患者さんの看取りまで行ってきたことから、紹介状も必要なく、話だけ聞いて相談に乗るという外来である。 このため、東京で癌に罹患した親の相談に札幌在住の娘さんが相談に来るということも多かった。 資料1当院のホームページ上に掲載されていた画面の一部を示す。 掲載では30分5千円となっているが、何時間相談しても5千円以上請求することはしなかった。 実際には1時間程度の相談時間が多かったし、実際に必要ならば診察もさせて頂いた。
また、資料2に相談外来の開設理由と実際の対応についてまとめたものを示す。
更に資料3と資料4に道内の雑誌に掲載された記事を示す。 こうした相談外来を退職後も11年間行ってきたが、院内のホームページのリニューアルに際し、この外来の掲載を削除することになり、終了としたものである。 また私も相談を受けて、適切な医師を紹介することも行ってきたが、現場を離れて長くなり、お願いする医師も退職したり、現役の医師の詳細も知らなくなり、終了することとした。 この「市民のためのがん治療の会」でもセカンドオピニオンを受け付けているが、相談も少なくなっている。 今まで千件以上の相談を経験したが、言えることは、「寿命もQOLも医者次第」という印象である。
医療の現場もお金で動いており、医学や科学の内容まで、捻じ曲げられる現状であるが、よく説明を聞いて納得できる治療を受けて頂きたいと思う。 また医者選びもまず人間として、熱意と誠意をも持った医師と巡り会ってもらいたい。「医者選びも寿命のうち」なのである。(了)
資料4
1947年函館市出身。札幌医科大学卒業。 74年国立札幌病院・北海道地方がんセンター(現北海道がんセンター)放射線科勤務。 2008年4月同センター院長、13年4月から名誉院長。 「市民のためのがん治療の会」顧問。 「いわき放射能市民測定室たらちね」顧問。 内部被曝を利用した小線源治療をライフワークとし、40年にわたり3万人以上の患者の治療に当たってきた。 著書に『がん医療と放射線治療』(エムイー振興協会)、 『がんの放射線治療』(日本評論社)、 『放射線治療医の本音-がん患者-2万人と向き合ってー』(NHK出版)、 『今、本当に受けたいがん治療』(エムイー振興協会)、 『放射線健康障害の真実』(旬報社)、 『正直ながんの話』(旬報社)、 『被ばく列島』(小出裕章共著・角川学芸出版)、 『患者よ、がんと賢く闘え!放射線の光と闇』(旬報社)、 『被曝インフォデミツク』(寿郎社)、など。 その他、専門学術書、論文多数。