『自分や大切なひとの健康を守るきっかけに
~保険商品で「がん検診の重要性」を伝える~』
商品開発部 商品開発室
島田 温子
(※)健康保険や高額医療費制度などによる個人負担軽減は除き、実際の医療費の推計
乳がんは日本人女性の9人に1人が罹患するといわれるのに検診を受診する人は半数程度のようだ。 理由は時間がないなども挙げられているが、本音は経済的な理由が大きいのではなかろうか。
そこへ「がん検診支援給付金付女性がん保障特約」が開発されたことを新聞で知り、早速お願いしてご寄稿いただいた。
今回は乳がんと子宮頸がんが対象だが、将来的にはすべてのがん、せめて特に5大がんや膵がん、前立腺がんなどにも対応した商品が開発されるとさらに良いと思う。
1.「がん検診支援給付金付女性がん保障特約」 開発の背景
この商品は私が着任した2018年に構想を立て、その後2020年後半から本格的に検討を開始し約2年の月日を経て商品化に至りました。
着任当初、当社の主力商品であるベストスタイル(※)の新たな特約を開発するプロジェクトチームが立ち上がり、私はそのチームの一員として、「女性のための商品」を考案する担当者となりました。
それまで事務部門の仕事の経験が長く、保険商品をゼロから開発するには、何から考えればいいのか、何もわからない手探りの状態からのスタートでしたが、 「保険は病気になったときに支払われるもの」、それが女性のためになるというのはどういうことだろうと考え始めました。
そんなとき、女性の芸能人やタレントの方が乳がんに罹患し、つらい思いをしているニュースやネットの情報が目に止まりました。
20代の女性アイドルや、タレントとして活躍しながら幼い子どもを育てる母親、年齢層も生活環境もさまざまな人たちが、がんと戦う姿は、つらい状況のなかにおいても、彼女たちの生きるための力強さを感じました。
このときから私は、女性がんについて調査を始めました。
(※)ベストスタイル「5年ごと利差配当付組立総合保障保険」について
■豊富な特約ラインアップに健康増進をサポートするしくみをプラスした、ご加入後も変化に応じて見直せる保険
>必要な特約を選択し、ニーズに合わせた保障を組み合わせることが可能
>保障見直し制度によりライフステージや社会環境などの変化に応じて保障内容の変更が可能
>終身保障変更制度により保険期間が有期の所定の特約を診査や告知なしで終身の特約に変更することが可能
>「健康サポート・キャッシュバック特約」を付加することにより、提出いただいた健康診断の結果に応じて保険料の一部をキャッシュバック
【社会環境】
近年、女性の社会進出とともに、女性の未婚化・晩婚化が加速し、晩産化や出産未経験による女性疾病のリスクは増加傾向というデータがあります。
妊娠を経験していない場合、初潮をむかえたときからコンスタントに排卵が行なわれ続けるので、卵巣への負担が大きくなり、 その結果、卵巣がんのリスクが高くなること、乳がんについては女性ホルモンのエストロゲンが関与し、初産年齢が高くなる(月経期間が長い)とその分、 乳腺組織がエストロゲンにさらされる期間も長くなり、このエストロゲンの過剰な刺激によって、子宮筋腫や子宮内膜症、乳がん、子宮体がんなどのリスクが高まるということも知られています。
出産回数が多いほど発症リスクは減少し、出産未経験者と比較して約半分であることを現在の日本の状況に鑑みると、「女性がん」は大きな不安要素であると感じました。
【がん検診】
この不安要素を解消するためにできること、その唯一の方法は定期的ながん検診の受診による早期発見であるということについて、 これまでもぼんやりとがん検診は重要だと認識してはいましたが、改めてじっくり考えました。
早期(ステージⅠ)であれば乳がんは100%、子宮頸がんは90%超が完治すると言われているなかで、欧米諸国と比較した日本のがん検診の受診率の低さにとても驚きました。 欧米の受診率が80%以上なのに対し、日本はその半分程度であり、その結果、欧米ではがん罹患率は上昇しているものの死亡率は低下、日本は罹患率も死亡率も上昇していました。 これは日本人のがん検診に対する意識の低さ、私自身もそうでしたが、自分事化できていない、どこか他人事のように思っている証拠だと感じました。
なぜがん検診を受診しないのかを当社で調査したところ、 「必要性を感じない」、「時間がない」、「費用負担が大きい」、「受診するのを忘れていた」、「がん検診そのものをしらない」、「どこで受診していいか分からない」などさまざまでした。
この調査をきっかけに、保険商品のなかで「がん検診の重要性」を伝え、 検診・受診をサポートする仕組みができれば、将来の不安要素を和らげることができ、「女性のための商品」になるのではないか、そして国の掲げるがん検診の受診率向上にも貢献できるのではないかと考えました。
そこでイメージしたのが、「がんになっても、ならなくてもお支払いできるがん保障」でした。 がんになった場合の保障に加え、「がん検診の受診をきっかけとした給付」を設定することを考えました。
2.商品の内容
商品イメージは沸いたものの、「生命保険商品」として法律上の制約があるなかで、 「がん検診を受診したら給付金を支払う」ということについて、どのように「『保険の枠組み』で実現するのか」というのが最初の壁でした。 社内外の有識者に相談し、「がん検診の受診」だけではなく「受診の結果、異常指摘がないこと」を支払要件の1つとしました。 そして、この「異常指摘がないこと」について公平性を保ちつつ、いかにお客さまにわかりやすいものにするかについて、さらに社内外の有識者と議論を重ねました。
最終的には、厚労省の指針にあわせ、対象となるがん検診は、乳がん検診・子宮頸がん検診とし、お支払いのタイミングは受診間隔にあわせ2年1回、加入年齢は子宮頸がん検診の対象となる20歳からとしました。
今回の支払対象となるがん検診については、「自治体での受診」、「職場での受診」、「自発的な医療機関での受診」のいずれの場合でもお支払いの対象としております。 また、乳がん検診の方法については、年齢により適切な方法が異なることから、マンモグラフィ検査・超音波検査のいずれもお支払対象とし、この商品ががん検診を受診するきっかけになれるよう幅広く設定しております。 がん検診の結果、異常指摘がなければ、継続的ながん検診のサポートとして 2万円をお支払いし、がんと診断された場合は一時金をお支払い、 さらに、女性がん特有のホルモン療法などの長期的な治療ための給付金も無制限で月5万円お支払いすることで、女性特有のがんになった場合も安心してサポートできる保障内容としております。
3.商品に込めた想い
この商品に込めた想い、それは「がん検診による早期発見でお客さま自身や家族・仲間の笑顔、未来を守りたい」ということです。 がんには明確な予防法がないため、いつだれが罹患するかわからない、だからこそ自分事化しにくいこの病について、もっと身近に向き合ってほしいと思います。 特に女性がんは男性に比べて若年で罹患するケースも多くあります。
当社は、お客さま・地域のみなさまの「健康に向けた前向きな活動」=「健活」を応援する取組みを「みんなの健活プロジェクト」と銘打ち、推進しています。 そのような健康増進を応援する会社として、がん検診の重要性を伝えたい(がん検診の受診率向上に貢献したい)と思っています。
健康であることは当たり前のことではなく、感謝すべきことだということ。 この商品が「お客さま自身や、大切なひとの健康を守るちょっとしたきっかけ」になり、たくさんの笑顔と感謝がお客さまの未来にあふれることを願っています。
1980年山口県生まれ。
明治安田生命保険相互会社で商品開発を担当。
同社の総合保障保険「ベストスタイル」の新たな特約として、2022年6月に発売した、女性がんの早期発見をサポートする「がん検診支援給付金付女性がん保障特約」の開発を担当。