医療を変える市民 がん治療セカンドオピニオンを支援
医師と患者が放射線治療の正しい普及の後押しも
医師と患者が放射線治療の正しい普及の後押しも
『納得のいくがん治療を目指して』
北海道地方がんセンター 院長 西尾 正道
はじめに
1.放射線治療の現状
2.放射線治療の今後
3.「市民のためのがん治療の会」の目指すもの
おわりに
略歴
知識は増えても人間の進歩は僅かである。20世紀を迎え、科学や技術の進歩は加速度的に進歩した。医学の進歩も同様で、「がん」の診断や治療も要素還元論的なアプローチにより遺伝子レベルの解明が進み、新たな地平を迎えた。
一方、がんと診断された人は医学的な詳細は理解できなくとも、人生の中断の危機に際して、まず信頼できる病院や医師と巡り合い納得のいく治療を望んでいる。
しかし「3時間待ちの3分診療」で表現される日本の医療の中で、自らの医療内容について充分な説明を受けている人は決して多くは無い。こうした情況の中でのがん医療の現状を考え、どう対応すべきかを放射線治療の立場から考えてみたい。
一方、がんと診断された人は医学的な詳細は理解できなくとも、人生の中断の危機に際して、まず信頼できる病院や医師と巡り合い納得のいく治療を望んでいる。
しかし「3時間待ちの3分診療」で表現される日本の医療の中で、自らの医療内容について充分な説明を受けている人は決して多くは無い。こうした情況の中でのがん医療の現状を考え、どう対応すべきかを放射線治療の立場から考えてみたい。
1.放射線治療の現状
がん治療の3本柱は手術療法、放射線療法、化学療法である。しかし『患者よ がんと闘うな』(近藤誠著)の著書の内容に代表されるように、世界的に見れば日本のがん医療は外科手術優先と非効果的な抗癌剤の多用というバランスの崩れた医療が恒常的に行われている。こうした治療が充分な治療情報を説明された上での患者側の選択としての結果であれば、問題は少ないのであろうが、現実は放射線治療の情報に関しては殆ど説明されていないという背景がある。そのため日本では放射線治療は有効に利用されておらず、がん治療における放射線治療の利用率は米国では60%以上であるが、日本は25%弱である。
こうした現状を作り出している要因はいくつかある。まず放射線科を受診する患者さんは、他科の医師からその必要性がある場合にのみ紹介されるという診療システム上の問題がある。そのため他科の医師が放射線治療をよく理解していなければ紹介されることは無い。しかし日本の医学部の放射線科の教授の約8割は画像診断学の専門家であり、放射線治療を専門とする教授は少ない。画像診断学とがんの治療学(放射線腫瘍学)は全く別の領域であり、一つの講座となっていること自体が前時代的であり、先進国では考えられないことであるが、このため治療に関しては充分な教育が行われておらず、また放射線治療医の育成もままならない。
次に放射線治療機器の整備には数億円の初期設備投資が必要であり、どの病院でも導入している訳ではない。そのため放射線治療が必要でもすべての患者さんがタイミングよく放射線治療に紹介される訳ではない。他に治療法が無くなってから、放射線でも照射しようか、と言った「デモ・シカ」治療の患者さんも多い。このため市民の多くも放射線治療はがんを治す治療という認識は乏しく、治癒が望めない患者さんの症状を緩和するための最後の治療という印象で受け止められている。
また開業医を中心とした医師会が大きな影響力を持っている現在の診療報酬では、放射線治療の診療報酬は低く、採算ベースの医療にはなっていない。結果として放射線治療は『安かろう、悪かろう』となっている。一方、抗癌剤の使用はどこの病院でも可能であることから、65億人の全世界人口のうち、2%にも満たない日本(1億2千万人)で全世界の使用量の20%以上が使われているという薬漬けの治療ががん治療でも行われているのである。
医学は進歩し業務も複雑化し専門化している。人工的に放射線を発生させて利用する治療では、5%以上の線量の誤差は治るがんも治らない事態を生み、また放射線の副作用を発生させる危険性を持っている。その意味では放射線治療は「狭間で成り立つ治療」であり、投与線量の厳密な管理が必要なのである。
物理工学とコンピューターテクノロジーの進歩により、放射線治療の照射技術は目覚しく進歩し、がん病巣にピンポイントで高精度に照射することが可能となり、がん病巣周囲の正常組織には無駄な放射線が照射されないため、副作用も非常に少ない治療法となった。しかしこの治療を行うためには、高精度の放射線の管理が必要であり、この業務には医学物理士などの専門職種が必要である。某大学の心臓外科手術で臨床工学士ではなく医師が人工心肺を操作して死亡させた悲劇は記憶に新しい。
米国では既に約5千人の医学物理士が院内で雇用され働いているが、日本ではまだほとんどいないのが実情である。経済大国日本では治療機器はあっても、放射線治療の専門医や医学物理士が少なく、医療提供の質に問題を抱えているのである。
また切腹の美学に表される日本の精神的土壌が、手術療法をさほど抵抗感無く受け入れているのかも知れないが、被爆国である日本では放射線は忌避感を持って受け止められており、負の側面の感が強い。しかし、メスも凶器となり、抗癌剤も毒となるのと同様で、放射線は殺人光線ともなりえるが、これは使い方の問題である。放射線を侮らず、正しい知識で使うことが最も重要な事なのである。
こうした現状を作り出している要因はいくつかある。まず放射線科を受診する患者さんは、他科の医師からその必要性がある場合にのみ紹介されるという診療システム上の問題がある。そのため他科の医師が放射線治療をよく理解していなければ紹介されることは無い。しかし日本の医学部の放射線科の教授の約8割は画像診断学の専門家であり、放射線治療を専門とする教授は少ない。画像診断学とがんの治療学(放射線腫瘍学)は全く別の領域であり、一つの講座となっていること自体が前時代的であり、先進国では考えられないことであるが、このため治療に関しては充分な教育が行われておらず、また放射線治療医の育成もままならない。
次に放射線治療機器の整備には数億円の初期設備投資が必要であり、どの病院でも導入している訳ではない。そのため放射線治療が必要でもすべての患者さんがタイミングよく放射線治療に紹介される訳ではない。他に治療法が無くなってから、放射線でも照射しようか、と言った「デモ・シカ」治療の患者さんも多い。このため市民の多くも放射線治療はがんを治す治療という認識は乏しく、治癒が望めない患者さんの症状を緩和するための最後の治療という印象で受け止められている。
また開業医を中心とした医師会が大きな影響力を持っている現在の診療報酬では、放射線治療の診療報酬は低く、採算ベースの医療にはなっていない。結果として放射線治療は『安かろう、悪かろう』となっている。一方、抗癌剤の使用はどこの病院でも可能であることから、65億人の全世界人口のうち、2%にも満たない日本(1億2千万人)で全世界の使用量の20%以上が使われているという薬漬けの治療ががん治療でも行われているのである。
医学は進歩し業務も複雑化し専門化している。人工的に放射線を発生させて利用する治療では、5%以上の線量の誤差は治るがんも治らない事態を生み、また放射線の副作用を発生させる危険性を持っている。その意味では放射線治療は「狭間で成り立つ治療」であり、投与線量の厳密な管理が必要なのである。
物理工学とコンピューターテクノロジーの進歩により、放射線治療の照射技術は目覚しく進歩し、がん病巣にピンポイントで高精度に照射することが可能となり、がん病巣周囲の正常組織には無駄な放射線が照射されないため、副作用も非常に少ない治療法となった。しかしこの治療を行うためには、高精度の放射線の管理が必要であり、この業務には医学物理士などの専門職種が必要である。某大学の心臓外科手術で臨床工学士ではなく医師が人工心肺を操作して死亡させた悲劇は記憶に新しい。
米国では既に約5千人の医学物理士が院内で雇用され働いているが、日本ではまだほとんどいないのが実情である。経済大国日本では治療機器はあっても、放射線治療の専門医や医学物理士が少なく、医療提供の質に問題を抱えているのである。
また切腹の美学に表される日本の精神的土壌が、手術療法をさほど抵抗感無く受け入れているのかも知れないが、被爆国である日本では放射線は忌避感を持って受け止められており、負の側面の感が強い。しかし、メスも凶器となり、抗癌剤も毒となるのと同様で、放射線は殺人光線ともなりえるが、これは使い方の問題である。放射線を侮らず、正しい知識で使うことが最も重要な事なのである。
2.放射線治療の今後
がん医療の領域では『2015年問題』が囁かれている。がんは加齢に伴い増加する疾患であるため、高齢社会では増加する。戦後の第一次ベビーブーマーが老齢化した2015年頃に日本のがん患者さんは約89万人となりピークを迎え、そして2050年頃までその数は横這いで推移すると予測されている。昨年のがん罹患者数は約68万人と推定されているので、その増加は著しく、その対応も深刻である。こうした時代を迎えて、放射線治療はより重要な治療法となる。最近のがん医療は機能と形態を温存し、高いQOL(生命の質)で治療する流れとなっている。この需要を最も満たす治療法は放射線治療である。しかしそれ以上に放射線治療が必要となる理由は、高齢な患者さんの治療では手術も限界があり、また強力な抗癌剤も使用できないことが多いからである。放射線治療は他の治療法と比較して患者さんに優しい治療法であり、年齢に関係なく治癒を目指せる治療法なのである。
放射線治療機器は米国についで普及し、全国で約750カ所の病院で行われているが、日本では放射線治療の専門医が極端に少ない。最近、産科医や小児科医が少ないことが社会問題化したが、放射線治療医の少なさは更に深刻である。日本には26万人以上の医師がいるが、放射線治療の専門医(日本放射線腫瘍学会認定医)は2009年8月現在、617人で、医師の中で400人に一人という割合である。米国と比較して一桁少ない数である。また放射線治療の専門医の育成が急務となっているが、今年から始まる卒後の臨床研修制度では放射線科の研修は必修科目ではないため、放射線治療医の育成も目処が立たない。医学の進歩に対応し切れていない医療行政や医学部教育の問題など、解決しなければならない問題が山積みである。
放射線治療機器は米国についで普及し、全国で約750カ所の病院で行われているが、日本では放射線治療の専門医が極端に少ない。最近、産科医や小児科医が少ないことが社会問題化したが、放射線治療医の少なさは更に深刻である。日本には26万人以上の医師がいるが、放射線治療の専門医(日本放射線腫瘍学会認定医)は2009年8月現在、617人で、医師の中で400人に一人という割合である。米国と比較して一桁少ない数である。また放射線治療の専門医の育成が急務となっているが、今年から始まる卒後の臨床研修制度では放射線科の研修は必修科目ではないため、放射線治療医の育成も目処が立たない。医学の進歩に対応し切れていない医療行政や医学部教育の問題など、解決しなければならない問題が山積みである。
3.「市民のためのがん治療の会」の目指すもの
「市民のためのがん治療の会」は上記したような状況を少しでも改善する目的で、ボランティアとして設立したものである。がん患者さんのサポートを目的とした市民グループの会は幾つもあるが、この会は患者さんのセカンドオピニオンなどのサポートばかりではなく、放射線治療の情報公開を目指している。縦割り医療や患者の囲い込みによる"ミスマッチ"が、医療不信や事故につながっているが、「よい医療はまず適切な出会いから」である。地域の医療情報の需要は高いが、現実には口コミなどに頼らざるを得ないのが実情である。
信頼できるプロのネットワークが相談に答えることで、市民と専門医の適切な「マッチング」が可能となる。そして放射線治療が適応となる場合は、一般の人は勿論のこと、放射線科以外の医師は他施設の放射線治療機器の配備や具体的な治療の内容までは熟知していないため、放射線治療機器の整備状態や高精度な照射技術で治療が可能な施設や、熟練した経験豊かな放射線治療医などに関する情報を提供したい。そのためセカンド・オピニオンに関わる医師は日本医学放射線学会専門医でかつ日本放射線腫瘍学会認定医の資格を持った全国の協力医師でサポートする体制を構築した。個別の患者さんの種々の状態を考慮し、医学的に根拠のある治療を受けて頂けることを望むものである。
がん治療においては最初の治療が最も重要であり放射線治療も含めた充分な情報をもとに治療法を選択すべきである。癌の早期発見で小さながんの診断が可能となったことにより、放射線治療の有効性がより発揮できる時代となった。また再発がんや転移がんの緩和治療においても放射線治療を上手に使うことにより、良好な結果を得ることができる。最良の治療法を選択し、悔いのない治療を受けることができる一助となればと考えている。
信頼できるプロのネットワークが相談に答えることで、市民と専門医の適切な「マッチング」が可能となる。そして放射線治療が適応となる場合は、一般の人は勿論のこと、放射線科以外の医師は他施設の放射線治療機器の配備や具体的な治療の内容までは熟知していないため、放射線治療機器の整備状態や高精度な照射技術で治療が可能な施設や、熟練した経験豊かな放射線治療医などに関する情報を提供したい。そのためセカンド・オピニオンに関わる医師は日本医学放射線学会専門医でかつ日本放射線腫瘍学会認定医の資格を持った全国の協力医師でサポートする体制を構築した。個別の患者さんの種々の状態を考慮し、医学的に根拠のある治療を受けて頂けることを望むものである。
がん治療においては最初の治療が最も重要であり放射線治療も含めた充分な情報をもとに治療法を選択すべきである。癌の早期発見で小さながんの診断が可能となったことにより、放射線治療の有効性がより発揮できる時代となった。また再発がんや転移がんの緩和治療においても放射線治療を上手に使うことにより、良好な結果を得ることができる。最良の治療法を選択し、悔いのない治療を受けることができる一助となればと考えている。
おわりに
報道では診療報酬や患者負担など目先の経済的な問題だけが議論されているが、医学の進歩や時代の流れに即した医療体制を構築し、日本のがん医療において患者さんが不利益を被らない改革が望まれる。行政の歩みは遅いが、市民の力で医療をよい方向へ変えて行きたいと思う。
当会は放射線治療について過大評価も過小評価もしない。それぞれの治療法にはそれぞれの得手不得手がある。手術療法や化学療法ばかりでなく、日本では軽視されてきた放射線治療も含めた総合的なバランスの取れたがん治療の情報を提供したいと考えている。
そして充分な情報に基づき、患者自らが治療を選択し、納得のいく医療を受けることができる医療でありたいものである。たとへ、死を免れなかったとしてもである。
そのためには最新の医療情報を理解し、『患者よ、がんと賢く闘え』である。『市民のためのがん治療の会』の活動がその一助となれば幸いである。
当会は放射線治療について過大評価も過小評価もしない。それぞれの治療法にはそれぞれの得手不得手がある。手術療法や化学療法ばかりでなく、日本では軽視されてきた放射線治療も含めた総合的なバランスの取れたがん治療の情報を提供したいと考えている。
そして充分な情報に基づき、患者自らが治療を選択し、納得のいく医療を受けることができる医療でありたいものである。たとへ、死を免れなかったとしてもである。
そのためには最新の医療情報を理解し、『患者よ、がんと賢く闘え』である。『市民のためのがん治療の会』の活動がその一助となれば幸いである。
2015年頃に日本のがん患者さんは約89万人となりピークを迎え、2050年頃までその数は横這いで推移すると予測されているにも拘わらず放射線治療の専門医(日本放射線腫瘍学会認定医)は2009年8月現在、617人で、医師の中で400人に一人という割合ですね。それなのに放射線治療医の育成もままならないというのでは、放射線治療を受けるべき患者が治療を受けられない状況になりつつあるということですね。
そうです。大体、医学部のある大学は80校ありますが、この中で放射線腫瘍学講座(治療)を持っている大学はたった12校しかない。
そうです。大体、医学部のある大学は80校ありますが、この中で放射線腫瘍学講座(治療)を持っている大学はたった12校しかない。
大変な問題ではないですか。そもそもそれでは医学教育を受けている医学部の学生さんはほとんど放射線治療については勉強しないで卒業するんですね。
以前に行った私の調査によれば、医学部教育の6年間で放射線治療についての疾患別各論の講義は平均300分程度というのが実態です。
以前に行った私の調査によれば、医学部教育の6年間で放射線治療についての疾患別各論の講義は平均300分程度というのが実態です。
それでも医師国家試験には放射線治療の問題が出題されるでしょうから、いやでも勉強するんじゃ。
同じ調査では、医師国家試験にもほとんど出題されておりません。
同じ調査では、医師国家試験にもほとんど出題されておりません。
これは大問題ですね、医師免許についてはまた、別の機会に問題提起しなければなりません。大きな消費者問題ですね。
もうひとつ伺いたいのですが、当会はセカンドオピニオン情報提供が特徴です。
既に1300件程度のセカンドオピニオン情報を提供してきました。今までのセカンドオピニオン提供に携わってこられたご経験を踏まえて、どんなご感想をお持ちでしょうか。
セカンドオピニオンには大まかに言って3つのパタンがあるように思えます。第一は本当にセカンドオピニオンを求めるべき症例、第二は主治医がきちんとした説明を丁寧に行わないため、治療としては標準治療を行っていて十分な治療が行われているのに患者が納得できないでいるケース、第三は患者さんが何とか「大丈夫」と言ってもらえるまでそういってくれる医師を探し続けて、次々に意見を聴き続けるケースです。
今まで市民のためのがん治療の会でセカンドオピニオンを担当してみてつくづく思うのは第二のケースが非常に多いことです。
医師も一般的には非常によく対応しており、みな懸命に勉強しながら標準治療を中心に患者さんにもっとも適切と思われる治療を、過酷な勤務状況の中で必死で行っていることをみなさんにも理解していただきたい。その上でやはり医師の側も、患者さんに分かっていただけるような努力ももう少しすべきというケースもまま見られるのも事実です。
患者さんにも申し上げたいが、ちょっと気に食わないからと言って医師や病院を変わってみても患者さんが得することは多くはありません。また、自分のことですから遠慮なく医師や医療連携室などに相談することが大切です。どうしても言いにくい場合はケースワーカーや患者会などに相談して、一緒に主治医と相談してもらうなどもいいでしょう。
もうひとつ伺いたいのですが、当会はセカンドオピニオン情報提供が特徴です。
既に1300件程度のセカンドオピニオン情報を提供してきました。今までのセカンドオピニオン提供に携わってこられたご経験を踏まえて、どんなご感想をお持ちでしょうか。
セカンドオピニオンには大まかに言って3つのパタンがあるように思えます。第一は本当にセカンドオピニオンを求めるべき症例、第二は主治医がきちんとした説明を丁寧に行わないため、治療としては標準治療を行っていて十分な治療が行われているのに患者が納得できないでいるケース、第三は患者さんが何とか「大丈夫」と言ってもらえるまでそういってくれる医師を探し続けて、次々に意見を聴き続けるケースです。
今まで市民のためのがん治療の会でセカンドオピニオンを担当してみてつくづく思うのは第二のケースが非常に多いことです。
医師も一般的には非常によく対応しており、みな懸命に勉強しながら標準治療を中心に患者さんにもっとも適切と思われる治療を、過酷な勤務状況の中で必死で行っていることをみなさんにも理解していただきたい。その上でやはり医師の側も、患者さんに分かっていただけるような努力ももう少しすべきというケースもまま見られるのも事実です。
患者さんにも申し上げたいが、ちょっと気に食わないからと言って医師や病院を変わってみても患者さんが得することは多くはありません。また、自分のことですから遠慮なく医師や医療連携室などに相談することが大切です。どうしても言いにくい場合はケースワーカーや患者会などに相談して、一緒に主治医と相談してもらうなどもいいでしょう。
こういうお話はいくら「当会は放射線治療について過大評価も過小評価もしない。それぞれの治療法にはそれぞれの得手不得手がある。手術療法や化学療法ばかりでなく、日本では軽視されてきた放射線治療も含めた総合的なバランスの取れたがん治療の情報を提供したいと考えている」と訴えても、とかく市民のためのがん治療の会が放射線治療優先しているだとか、放射線治療に誘導するなどの感じを受けられかねませんが。
全くそういうことはありません。今までのセカンドオピニオンも半分ぐらいは放射線治療の適応ではありませんでした。
確かに手術でも放射線でも治る場合は手術と放射線は競合関係になりますが、私は放射線腫瘍医として手術も非常に重要な治療手段であることを認識しており、外科医の希望者が減少している事態を極めて深刻に受け止めています。特にがん治療においては、外科治療が最も頼りになる治療法の一つであり、上手な外科医が必要です。
重ねて申し上げますがバランスのとれた医療体制が望まれるわけで、現時点では件数でも医師の数でも患者会の講演会でもすべて手術や化学療法に振り子が振れすぎているので、当会は少し放射線治療に軸足を置いているわけです。現状では当会の活動がないと、放射線治療についての情報提供がほとんどなされないというのが実情です。
全くそういうことはありません。今までのセカンドオピニオンも半分ぐらいは放射線治療の適応ではありませんでした。
確かに手術でも放射線でも治る場合は手術と放射線は競合関係になりますが、私は放射線腫瘍医として手術も非常に重要な治療手段であることを認識しており、外科医の希望者が減少している事態を極めて深刻に受け止めています。特にがん治療においては、外科治療が最も頼りになる治療法の一つであり、上手な外科医が必要です。
重ねて申し上げますがバランスのとれた医療体制が望まれるわけで、現時点では件数でも医師の数でも患者会の講演会でもすべて手術や化学療法に振り子が振れすぎているので、当会は少し放射線治療に軸足を置いているわけです。現状では当会の活動がないと、放射線治療についての情報提供がほとんどなされないというのが実情です。
略歴
西尾 正道(にしお まさみち)
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター院長。函館市出身。1974年札幌医科大学卒業後、国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科勤務。1988年同科医長。2004年4月、機構改革により国立病院機構北海道がんセンターと改名後も同院に勤務し現在に至る。がんの放射線治療を通じて日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。
著書に『がん医療と放射線治療』2000年4月刊 (エムイー振興協会)、『がんの放射線治療』2000年11月刊(日本評論社)、『放射線治療医の本音-がん患者2万人と向き合って-』2002年6月刊( NHK出版)、『今、本当に受けたいがん治療』2009年5月刊 (エムイー振興協会)の他に放射線治療領域の専門著書多数
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター院長。函館市出身。1974年札幌医科大学卒業後、国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科勤務。1988年同科医長。2004年4月、機構改革により国立病院機構北海道がんセンターと改名後も同院に勤務し現在に至る。がんの放射線治療を通じて日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。
著書に『がん医療と放射線治療』2000年4月刊 (エムイー振興協会)、『がんの放射線治療』2000年11月刊(日本評論社)、『放射線治療医の本音-がん患者2万人と向き合って-』2002年6月刊( NHK出版)、『今、本当に受けたいがん治療』2009年5月刊 (エムイー振興協会)の他に放射線治療領域の専門著書多数