あまりなじみのない温熱療法。だが、高温の岩盤に横になってからだを熱するなどの民間療法などとは違い、がん細胞が高温に弱いという性質を利用した、れっきとした科学的な治療法で、放射線治療との併用などで健康保険の適用にもなっているものだ。
『温熱療法』
原三信病院
放射線科顧問 寺嶋廣美
1.温熱療法(ハイパーサーミア)とは
2.温熱療法の生物学的根拠、40℃〜45℃下での反応
3.医学的根拠(エビデンス)に基いた治療法
4.温熱療法の現在の問題点
5.まとめ
6.日本ハイパーサーミア学会について
略歴
温熱療法という言葉はいろいろな分野で用いられていますが、ここで言う温熱療法は、人体が局所的に耐容可能な40℃〜45℃の、体温より3〜8℃高い範囲の温度を用いた癌の治療法です。これをHyperthermia,ハイパーサーミアと言います。40℃から42℃と、やや低めの温度領域の治療はマイルド・ハイパーサーミアと言います。マイクロウエーブやレーザーを用いた、100℃以上の高温で行う凝固療法や蒸散療法も熱を利用した治療法ですが、ハイパーサーミアとは区別されています。一般的な代替療法に含まれる「民間療法としての温熱療法」とも明らかに異なります。以下、温熱療法とはハイパーサーミアのことをさすことにします。
2.温熱療法の生物学的根拠、40℃〜45℃下での反応
培養細胞を温水で加温しますと温度と時間に比例して細胞の生存率が低下し、特に42.5℃を境にして急激に低下します(1977,Dewey, 図1)。
がん細胞も正常細胞も同じように死んでいきます。ところが組織レベルの熱に対する反応は違ってきます。正常組織では温度が上がるにつれて、血流が増加し冷却効果が働き、温度の上昇はゆるくなります。癌の組織では血管壁の筋肉層や結合組織、神経組織が未熟なため、温度調節が働かず41-42℃までは血流が増加しますが、さらに温度を高めると血流は減少し、鬱血や出血を起こし癌組織の温度は上昇します(図2)。生体内では、癌組織は温まっても周りの正常組織はあまり温まらず、両者の間で温度差が生じ、治療効果が現れてきます。
がん細胞も正常細胞も同じように死んでいきます。ところが組織レベルの熱に対する反応は違ってきます。正常組織では温度が上がるにつれて、血流が増加し冷却効果が働き、温度の上昇はゆるくなります。癌の組織では血管壁の筋肉層や結合組織、神経組織が未熟なため、温度調節が働かず41-42℃までは血流が増加しますが、さらに温度を高めると血流は減少し、鬱血や出血を起こし癌組織の温度は上昇します(図2)。生体内では、癌組織は温まっても周りの正常組織はあまり温まらず、両者の間で温度差が生じ、治療効果が現れてきます。
3.医学的根拠(エビデンス)に基いた治療法
温熱療法が医学的根拠に基いた治療であることは、1980年代から行われた、無作為臨床比較試験(CRT: 多数の同じような患者さんを二つのグループに分けて、治療法別に治癒率を比較する。)で確かめられています。
1) 頭頸部癌
欧米にて1980年代に行われたCRTでは、局所制御率は放射線治療のみでは22-86%,ハイパーサーミア併用では34-100%と有意に併用群が優れていました。わが国でもCRTが行われ、局所制御率は放射線治療のみでは85%、ハイパーサーミア併用群では100%と有意に併用群が優れていました。
2) 乳癌
ヨーロッパ、カナダで行われた5施設によるCRTでは、治療後の局所再発までの期間はハイパーサーミア併用群が優位に長く有効性が認められました。日本においてもCRTではありませんが、局所進行乳癌にて腫瘍制御率が放射線単独群では50%、温熱併用群では89%と有効性が認められています。
3)子宮頸癌
子宮頸癌は 手術と共に放射線治療がよい適応となります。放射線治療はシスプラチンとの併用が標準治療とされており、さらに温熱療法を加えたCRTが行われました。2000年に欧米で発表された論文では、局所制御率、3年生存率において有意に温熱併用群が優れており、オランダでは化学・放射線療法に温熱療法を併用することが標準治療となっています。日本においても2001年にCRTの結果が報告され、3年非再発生存率が有意に温熱併用群において優れていました。
4) 肺癌
非小細胞肺癌lll期、lV期例において、CRTではありませんが、同施設の同時期症例の比較では、3年生存率は放射線治療単独例で6,7%、温熱併用例で37,0%と併用群が優れていました。縦隔リンパ節転移例では、十分な放射線の治療が出来ない場合は、放射線治療のみでは制御は不可能ですが、温熱併用はよい適応になります。また、放射線治療後の再発例では、すでに耐容線量が照射されておりますので、少量の追加照射しか出来ません。化学療法も血流が乏しく効果が期待できません。しかし温熱療法の追加は十分に可能ですので、化学療法と温熱療法の併用は局所治療効果の増強が期待できます。欧米よりも日本で多くの症例が治療されています。産業医科大学病院で、放射線治療が温熱療法と併用で根治的に行われた1例を示します(図3)
5)食道癌
切除可能な食道癌の術前治療に放射線治療と化学療法に温熱療法の併用が行われました。臨床比較試験では切除標本にて非併用群では7.7%、併用群では26.9%に組織学的に癌細胞を認めず、術前の温熱併用は有効であることが報告されています。進行食道癌では化学療法と放射線治療の併用が推奨されていますが、さらに外部加温の併用にて治療効果、生存率の向上が期待されます。放射線治療後の再発例においても、化学療法との併用にて長期間の治療も可能で、局所制御やQOLの向上に役立つと考えられます。産業医科大学病院で、放射線治療が温熱療法と併用で根治的に行われた一例を示します(図4)。
6)直腸癌
直腸癌に対して術前の温熱・化学・放射線療法(HCR療法}が行われました。手術後の5年生存率では温熱非併用群が64.0 %に対し併用群が 91.3%, と優れていました。また、手術不能進行直腸癌や術後再発例に放射線と温熱の併用が行われ、放射線単独例では10/28(36%)、温熱併用例では19/35(54%) に腫瘍縮小が認められ、温度が42℃以上に加温された症例では10/15(67%)に効果が認められました。
7)その他
胃癌、膵臓癌、肝臓癌、軟部組織腫瘍、皮膚癌などにも放射線や化学療法との併用で有効例が報告されています。
1) 頭頸部癌
欧米にて1980年代に行われたCRTでは、局所制御率は放射線治療のみでは22-86%,ハイパーサーミア併用では34-100%と有意に併用群が優れていました。わが国でもCRTが行われ、局所制御率は放射線治療のみでは85%、ハイパーサーミア併用群では100%と有意に併用群が優れていました。
2) 乳癌
ヨーロッパ、カナダで行われた5施設によるCRTでは、治療後の局所再発までの期間はハイパーサーミア併用群が優位に長く有効性が認められました。日本においてもCRTではありませんが、局所進行乳癌にて腫瘍制御率が放射線単独群では50%、温熱併用群では89%と有効性が認められています。
3)子宮頸癌
子宮頸癌は 手術と共に放射線治療がよい適応となります。放射線治療はシスプラチンとの併用が標準治療とされており、さらに温熱療法を加えたCRTが行われました。2000年に欧米で発表された論文では、局所制御率、3年生存率において有意に温熱併用群が優れており、オランダでは化学・放射線療法に温熱療法を併用することが標準治療となっています。日本においても2001年にCRTの結果が報告され、3年非再発生存率が有意に温熱併用群において優れていました。
4) 肺癌
非小細胞肺癌lll期、lV期例において、CRTではありませんが、同施設の同時期症例の比較では、3年生存率は放射線治療単独例で6,7%、温熱併用例で37,0%と併用群が優れていました。縦隔リンパ節転移例では、十分な放射線の治療が出来ない場合は、放射線治療のみでは制御は不可能ですが、温熱併用はよい適応になります。また、放射線治療後の再発例では、すでに耐容線量が照射されておりますので、少量の追加照射しか出来ません。化学療法も血流が乏しく効果が期待できません。しかし温熱療法の追加は十分に可能ですので、化学療法と温熱療法の併用は局所治療効果の増強が期待できます。欧米よりも日本で多くの症例が治療されています。産業医科大学病院で、放射線治療が温熱療法と併用で根治的に行われた1例を示します(図3)
5)食道癌
切除可能な食道癌の術前治療に放射線治療と化学療法に温熱療法の併用が行われました。臨床比較試験では切除標本にて非併用群では7.7%、併用群では26.9%に組織学的に癌細胞を認めず、術前の温熱併用は有効であることが報告されています。進行食道癌では化学療法と放射線治療の併用が推奨されていますが、さらに外部加温の併用にて治療効果、生存率の向上が期待されます。放射線治療後の再発例においても、化学療法との併用にて長期間の治療も可能で、局所制御やQOLの向上に役立つと考えられます。産業医科大学病院で、放射線治療が温熱療法と併用で根治的に行われた一例を示します(図4)。
6)直腸癌
直腸癌に対して術前の温熱・化学・放射線療法(HCR療法}が行われました。手術後の5年生存率では温熱非併用群が64.0 %に対し併用群が 91.3%, と優れていました。また、手術不能進行直腸癌や術後再発例に放射線と温熱の併用が行われ、放射線単独例では10/28(36%)、温熱併用例では19/35(54%) に腫瘍縮小が認められ、温度が42℃以上に加温された症例では10/15(67%)に効果が認められました。
7)その他
胃癌、膵臓癌、肝臓癌、軟部組織腫瘍、皮膚癌などにも放射線や化学療法との併用で有効例が報告されています。
4.温熱療法の現在の問題点
1)加温機器と加温方法
温度は生体内では低いほうへ拡がり、血流によって冷却されます。放射線は病巣にピンポイントの線量集中が可能ですが、加温では病巣部に集中した加温が難しく、領域加温にならざるをません。また、局所をもっと効率よく加温する機器の開発が待たれています。
2)測温技術
温度センサーを組織内に刺入して測温します。したがって腫瘍内の数点の温度の把握しか出来ません。立体的な非侵襲的測温技術の開発が待たれています。
3)人的、経済的な問題
1人の患者さんの治療に60分ほど要しますので、RF加温装置1台に付き1日に7−8人しか治療できません。医師か医師の監督の下で看護師または技師が付き添った治療ですので、人手が不足し一般病院では対応が困難です。1990年に保険診療として認可されましたが、保健点数が低く設定されていますので、経営上の問題で温熱療法を導入したくても出来ない施設が多いことです。
温度は生体内では低いほうへ拡がり、血流によって冷却されます。放射線は病巣にピンポイントの線量集中が可能ですが、加温では病巣部に集中した加温が難しく、領域加温にならざるをません。また、局所をもっと効率よく加温する機器の開発が待たれています。
2)測温技術
温度センサーを組織内に刺入して測温します。したがって腫瘍内の数点の温度の把握しか出来ません。立体的な非侵襲的測温技術の開発が待たれています。
3)人的、経済的な問題
1人の患者さんの治療に60分ほど要しますので、RF加温装置1台に付き1日に7−8人しか治療できません。医師か医師の監督の下で看護師または技師が付き添った治療ですので、人手が不足し一般病院では対応が困難です。1990年に保険診療として認可されましたが、保健点数が低く設定されていますので、経営上の問題で温熱療法を導入したくても出来ない施設が多いことです。
5.まとめ
温熱療法は確かな医学的根拠に基づいた治療です。代替療法や緩和療法とも異なります。通常は温熱単独では用いず、放射線や抗がん剤との併用で行います。治療が困難な癌や放射線感受性の低い癌であっても、温熱療法の併用で抗腫瘍効果を増強させ、進行を止めたり制御することも可能です。臨床応用が始まって30年経過しましたが、まだ十分普及するに至りません。根治的な癌治療に組み入れられたらもっと効果が確認されると期待されます。最近は、大病院や癌センターなどで「もう治療方法がない。」と言われた、いわゆる“がん難民“と呼ばれる人々も多く、そのような患者さんたちにも、ハイパーサーミアは可能な場合が多くあります。広くハイパーサーミアを知っていただき、今後さらに普及することを願っております。
6.日本ハイパーサーミア学会について
1970年代半ばから電磁波、超音波などを用いた装置による臨床応用が始まりました。日本においても、1975年から「がん特別研究班」で研究が開始され、1978年には「ハイパーサーミア研究会」が発足し、1984年には「日本ハイパーサーミア学会」が設立されました。学会にてまとめられたデ−タを基に、1990年には保険診療として認められました。毎年、学術大会が行われ、多くの研究者が集まって研究発表がされ、市民公開講座も開かれています。2009年9月には千葉市で第26回大会が行われました。学術論文は学会誌、国際学会誌にも掲載されています。学会でまとめられたガイドブックも作られています。
日本ハイパーサーミア学会 (JSTM)ホームページ:http://www.jsho.jp/
ホームページには、温熱療法に関する解説、Q&A, 認定医、認定施設なども掲載されています。
日本ハイパーサーミア学会 (JSTM)ホームページ:http://www.jsho.jp/
ホームページには、温熱療法に関する解説、Q&A, 認定医、認定施設なども掲載されています。
私ががんの宣告を受けた今から約10年前には、近藤誠先生の「癌もどき」などが一世を風靡しておりまして、抗がん剤は思ったような効果がないというようなことが分かってきたころでした。で、わたしも薬はもともとできるだけ使いたくない主義ですし、抗がん剤は使いたくない、手術だってできれば切りたくない、放射線も薄気味悪い。というわけで、がんは結核のように外部からの侵襲でなるのではなく、いわば「身から出た錆」のようなわが身の問題だろうと思って、それなら断食とか、温熱療法などで治そうなどと漠然と思っておりました。
譬えが良くないですが、ゴキブリはものすごい繁殖力ですね。ですからあの繁殖力で増えて行ったらたちまち世の中ゴキブリに占領されますが、そこがうまくできていて、彼らは生息できる温度帯が非常にせまいので今のところ日本などでは増え続けるということはない。
がんも非常に繁殖力は旺盛だが、温度と放射線には弱い。
世の中は必ず何か天敵のようなものがあって歯止めになっている。がんにもきっとそういうものがあると思っているんです、その一つが温熱。
まさにそのとおりです。ヒトは恒温動物ですので、一定の温度の範囲内でしか生存できません。体温が上がるのは防御作用でもありますので、ウイルスや小さな癌は発熱で治っている可能性が在ります。実際に1866年にドイツの医師W.Buschの報告に、顔面に出来た癌が、丹毒に感染した患者さんで2回の発熱のあと消失したこと、1958年にアメリカとドイツで自然治癒したと思われる症例を集めた研究では、その1/3に発熱があったと言うことから、近代的な温熱療法の研究が始まった経緯もあります。
譬えが良くないですが、ゴキブリはものすごい繁殖力ですね。ですからあの繁殖力で増えて行ったらたちまち世の中ゴキブリに占領されますが、そこがうまくできていて、彼らは生息できる温度帯が非常にせまいので今のところ日本などでは増え続けるということはない。
がんも非常に繁殖力は旺盛だが、温度と放射線には弱い。
世の中は必ず何か天敵のようなものがあって歯止めになっている。がんにもきっとそういうものがあると思っているんです、その一つが温熱。
まさにそのとおりです。ヒトは恒温動物ですので、一定の温度の範囲内でしか生存できません。体温が上がるのは防御作用でもありますので、ウイルスや小さな癌は発熱で治っている可能性が在ります。実際に1866年にドイツの医師W.Buschの報告に、顔面に出来た癌が、丹毒に感染した患者さんで2回の発熱のあと消失したこと、1958年にアメリカとドイツで自然治癒したと思われる症例を集めた研究では、その1/3に発熱があったと言うことから、近代的な温熱療法の研究が始まった経緯もあります。
温熱療法の生物学的根拠の項でご説明いただきましたが、この効き方は、素人にはちょっと放射線治療の機序に似ているように思えますね、感じが。
放射線治療も温熱療法も物理的エネルギーを用いて細胞の分裂を止め、切らずに治すという点で似ていますね。ターゲットが少し異なっていまして、放射線は細胞核のDNAに傷をつけて細胞分裂が出来ないようにします。通常の治療に用いられるX線では増殖死と言いまして、何回か分裂した後に細胞死をきたします。大量の放射線や、最近話題の炭素線などの重粒子線では間期死(受けた細胞が死ぬ)も起きます。熱の場合は主にターゲットはたんぱく質で細胞膜、酵素、ミトコンドリアなどに作用します。たんぱく質の変性により癌細胞が生存に必要な化学反応が出来なくなるのです。しかし最近の研究では、温熱も核のDNAに傷をつけることが分かっています。高めの温度になりますと、間期死も起きます。都合がよいことに、放射線が効きにくい細胞の時期(S期、低PH状態)に熱の感受性がより高くなることが分かっています。ですから放射線との併用で相乗効果が出るわけです。
放射線治療も温熱療法も物理的エネルギーを用いて細胞の分裂を止め、切らずに治すという点で似ていますね。ターゲットが少し異なっていまして、放射線は細胞核のDNAに傷をつけて細胞分裂が出来ないようにします。通常の治療に用いられるX線では増殖死と言いまして、何回か分裂した後に細胞死をきたします。大量の放射線や、最近話題の炭素線などの重粒子線では間期死(受けた細胞が死ぬ)も起きます。熱の場合は主にターゲットはたんぱく質で細胞膜、酵素、ミトコンドリアなどに作用します。たんぱく質の変性により癌細胞が生存に必要な化学反応が出来なくなるのです。しかし最近の研究では、温熱も核のDNAに傷をつけることが分かっています。高めの温度になりますと、間期死も起きます。都合がよいことに、放射線が効きにくい細胞の時期(S期、低PH状態)に熱の感受性がより高くなることが分かっています。ですから放射線との併用で相乗効果が出るわけです。
具体的には加温するにはどのようにするのでしょうか。
現在最も用いられている加温方法は電磁波の一種であるRF波を用いた、RF加温装置です。加温部分を対局する電極ではさみ、電波で加温する方法で、いわば電子レンジの加温原理に似ています。医師か医師の監督下で看護師や専門技師が常にそばで観察しながら行います。身体の表面は4-10℃の水で冷却しながら行いますので、内部のみが温まることになります。もう一つ、温水を還流して腹腔内の癌を治療する方法もありまして、福井大学のがん診療推進センターなどで行われています。
現在最も用いられている加温方法は電磁波の一種であるRF波を用いた、RF加温装置です。加温部分を対局する電極ではさみ、電波で加温する方法で、いわば電子レンジの加温原理に似ています。医師か医師の監督下で看護師や専門技師が常にそばで観察しながら行います。身体の表面は4-10℃の水で冷却しながら行いますので、内部のみが温まることになります。もう一つ、温水を還流して腹腔内の癌を治療する方法もありまして、福井大学のがん診療推進センターなどで行われています。
治療の時間や患者の負担はどうですか、辛いのかどうか、熱いのを我慢するのかとか。
熱感と発汗があり、ある程度の我慢は必要です。少なくとも30分以上は、ベッドの上で同じ体位で治療を受けていただきますので、全身状態がよい人が適しています。治療時間は50-60分間です。診察のあとで準備に約5−10分間かかり、実際の加温時間は40-50分間ですので、約60分間を要します。熱感と痛みですが、やせた人や、筋肉質の人では何の苦痛もなく治療が済み、大量の汗をかいてすっきりしたと言われる人も多く、外来通院でも可能です。皮下脂肪が3 cm以上と厚い人は皮膚の温度が高くなりがちですので、痛みを感じやすくあまり向きません。
熱感と発汗があり、ある程度の我慢は必要です。少なくとも30分以上は、ベッドの上で同じ体位で治療を受けていただきますので、全身状態がよい人が適しています。治療時間は50-60分間です。診察のあとで準備に約5−10分間かかり、実際の加温時間は40-50分間ですので、約60分間を要します。熱感と痛みですが、やせた人や、筋肉質の人では何の苦痛もなく治療が済み、大量の汗をかいてすっきりしたと言われる人も多く、外来通院でも可能です。皮下脂肪が3 cm以上と厚い人は皮膚の温度が高くなりがちですので、痛みを感じやすくあまり向きません。
心臓などが耐えられない人には無理でしょうか。
やはり体温が上がると心臓に負担がかかりますので、心機能が不良の人には行っていません。特に心臓にペースメーカーを装着されている方は禁忌です。
やはり体温が上がると心臓に負担がかかりますので、心機能が不良の人には行っていません。特に心臓にペースメーカーを装着されている方は禁忌です。
色々な部位などについてのエビデンスについてもご説明いただきましたが、なぜもっと利用されないのでしょうか。
一つにはまだ、十分に温熱療法の良さが認識されていないことです一般的には民間療法や、温泉に浸かるようなことくらいに考えておられる人も多いと思います。また医師の中でも、温熱療法?と首をかしげる人も多くあります。
もう一つは、人手がかかる割には診療報酬が低いことです。一人60分間、一日に7-8人、それを週に1-2回で、10-20回行って効果が出ます。経営上からも実施が出来ない事情もありますが、それでも行っておられる病院が全国各地にあります。
一つにはまだ、十分に温熱療法の良さが認識されていないことです一般的には民間療法や、温泉に浸かるようなことくらいに考えておられる人も多いと思います。また医師の中でも、温熱療法?と首をかしげる人も多くあります。
もう一つは、人手がかかる割には診療報酬が低いことです。一人60分間、一日に7-8人、それを週に1-2回で、10-20回行って効果が出ます。経営上からも実施が出来ない事情もありますが、それでも行っておられる病院が全国各地にあります。
局所を効率よく加温する機器についてですが、先日東京大学大学院医学系研究科泌尿器外科学の本間之夫先生の超音波による前立腺がんの治療のお話しを聞き、大変興味部かかったのですが、超音波をコントロールすることによって、自由に温熱効果を上げたいところにエネルギーを集中させる方法はどうでしょう。放射線治療がコンピュータ・テクノロジーの発展に伴い長足の進歩を遂げたように、超音波ならコンピュータ制御によって、自由に温熱効果をコントロールする・・・。
超音波も有力な加温方法です。20年ほど前には、実際に加温装置が国内でも作られたのですが、普及せずに生産中止と成りました。最近はHIFU(High intensity focused ultrasound)と言いまして、超音波を集中させて高温度にして熱凝固させる装置があり、温度をモニターしながら乳癌や前立腺がんに用いられています。
超音波も有力な加温方法です。20年ほど前には、実際に加温装置が国内でも作られたのですが、普及せずに生産中止と成りました。最近はHIFU(High intensity focused ultrasound)と言いまして、超音波を集中させて高温度にして熱凝固させる装置があり、温度をモニターしながら乳癌や前立腺がんに用いられています。
非侵襲的測温技術についても同様に、高性能のサーモグラフィのデータを解析して3Dで表示するなどが考えられないでしょうか。
非侵襲的測温技術の開発は最も望まれていることです。人体組織の電気伝導度や血流などを要素として、コンピューターで温度分布を提示する方法はありますが、まだ3Dでの表示は出来ず、参考資料といったところです。いま最も期待されている方法はMRIを用いた方法で、ヨーロッパの加温装置には実用化されています。国内でも普及に向けて研究されています。
非侵襲的測温技術の開発は最も望まれていることです。人体組織の電気伝導度や血流などを要素として、コンピューターで温度分布を提示する方法はありますが、まだ3Dでの表示は出来ず、参考資料といったところです。いま最も期待されている方法はMRIを用いた方法で、ヨーロッパの加温装置には実用化されています。国内でも普及に向けて研究されています。
費用の点については、患者にとって楽で治療後も高いQOLを維持できるような治療に高い点数が与えられるような診療報酬制度にならなければいけないので、それは別の機会に主張したいと思います。
いまは3大治療に重点がおかれ、その他は有効な治療法でもなかなかハードルが高いようです。これは大きな問題です。
いまは3大治療に重点がおかれ、その他は有効な治療法でもなかなかハードルが高いようです。これは大きな問題です。
いわゆる三大療法との併用によって、それらの治療効果を増感させるというのも患者にとっては大いに魅力のあることです。温熱療法をこれに組み入れることには如何お考えですか?
温熱療法は、単独で用いるのではなく、放射線と抗がん剤の増強効果を利用して行う治療です。患者さんは、「総合的にいろいろな方法を駆使して、癌を治して欲しい。」と願っておられるはずです。よい方法があれば使ってほしいと願っておられます。温熱療法には抗がん剤のような全身的副作用はなく、放射線のように耐容線量もありません。副作用はほとんどありませんし、臓器の種類を問わず有効で、数年にわたった長期間の治療も可能です。初期の癌治療から進行癌の治療まで、広く永く応用して欲しいと思います。
温熱療法は、単独で用いるのではなく、放射線と抗がん剤の増強効果を利用して行う治療です。患者さんは、「総合的にいろいろな方法を駆使して、癌を治して欲しい。」と願っておられるはずです。よい方法があれば使ってほしいと願っておられます。温熱療法には抗がん剤のような全身的副作用はなく、放射線のように耐容線量もありません。副作用はほとんどありませんし、臓器の種類を問わず有効で、数年にわたった長期間の治療も可能です。初期の癌治療から進行癌の治療まで、広く永く応用して欲しいと思います。
三大療法で行き詰まったとき、じゃあどうするということになりますが、一つの方法として、大いに考えていい治療法ですね。
いわゆる”がん難民“といわれる人が多くなっています。「もう治療法がない。」と言われたら、どこを頼っていいか分かりません。サプリメントや民間療法に救いを求められる人が多いことと思います。実際には放射線科以外ですと、放射線治療が必要で有効な患者さんも多く見受けます。是非、一度は放射線科を受診したいと希望を出してください。そこでは、温熱療法に関しても問い合わせてみてください。温熱療法は、代替療法でもなく、民間療法でもありません。また、副作用がなく、長期間の維持療法としても活用できます。まだ残された有力な癌の治療法の一つです。
いわゆる”がん難民“といわれる人が多くなっています。「もう治療法がない。」と言われたら、どこを頼っていいか分かりません。サプリメントや民間療法に救いを求められる人が多いことと思います。実際には放射線科以外ですと、放射線治療が必要で有効な患者さんも多く見受けます。是非、一度は放射線科を受診したいと希望を出してください。そこでは、温熱療法に関しても問い合わせてみてください。温熱療法は、代替療法でもなく、民間療法でもありません。また、副作用がなく、長期間の維持療法としても活用できます。まだ残された有力な癌の治療法の一つです。
温熱療法に関して調べたいと思ったら、どこに相談すればよいでしょうか?
日本ハイパーサーミア学会のホームページには、温熱療法に関する解説、Q&A, 認定医、認定施設(15施設)なども掲載されています。
日本ハイパーサーミア学会 (JSTM)ホームページ:http://www.jsho.jp/
そのなかで、他にも保険診療で温熱療法を行っている施設の一部は「百万遍ネット」で紹介されています。(http://www.taishitsu.or.jp/hyperthermia/hyp5.html)。
日本ハイパーサーミア学会のホームページには、温熱療法に関する解説、Q&A, 認定医、認定施設(15施設)なども掲載されています。
日本ハイパーサーミア学会 (JSTM)ホームページ:http://www.jsho.jp/
そのなかで、他にも保険診療で温熱療法を行っている施設の一部は「百万遍ネット」で紹介されています。(http://www.taishitsu.or.jp/hyperthermia/hyp5.html)。
略歴
寺嶋 廣美(てらしま ひろみ)
昭和45年山口大学医学部卒業後、九州大学医学部附属病院放射線科助手、国立病院九州がんセンター放射線科、産業医科大学放射線科助教授等を経て、平成11年九州大学医療技術短期大学部診療放射線技術学科教授。平成14年九州大学医学部保健学科放射線技術科学教授、平成19年九州大学大学院医学研究院保健学部門医用量子線科学分野教授。平成20年原三信病院放射線科(顧問)、現職。
日本放射線専門医、日本ハイパーサーミア学会認定医・指導医、日本放射線腫瘍学会認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医。
日本ハイパーサーミア学会理事、日本放射線腫瘍学会評議員
医学博士、九州大学名誉教授
昭和45年山口大学医学部卒業後、九州大学医学部附属病院放射線科助手、国立病院九州がんセンター放射線科、産業医科大学放射線科助教授等を経て、平成11年九州大学医療技術短期大学部診療放射線技術学科教授。平成14年九州大学医学部保健学科放射線技術科学教授、平成19年九州大学大学院医学研究院保健学部門医用量子線科学分野教授。平成20年原三信病院放射線科(顧問)、現職。
日本放射線専門医、日本ハイパーサーミア学会認定医・指導医、日本放射線腫瘍学会認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医。
日本ハイパーサーミア学会理事、日本放射線腫瘍学会評議員
医学博士、九州大学名誉教授