原爆で連想するケロイド。皮膚に傷が付くことで発症することが多い。医師の間でも必ずしも適切な治療が周知しておらず、かつては手術は禁忌とされていた。悪性疾患ではないが、ここでも放射線治療が効果を発揮する。
「ケロイドの放射線治療」
日本医科大学付属病院放射線治療科 宮下次廣
1、はじめに
2、患者さんの体験談
3、ケロイドの臨床像
4、ケロイド治療の特殊性
5、ケロイド治療の流れ(患者さんの視点で表現した)
6、ケロイド治療の多面性と摘出術後放射線照射
7、放射線により癌は発生するのか
(皮膚に放射線照射を行った場合の大雑把な誘発がんのリスクの推定)
8、最後に
略歴
ケロイドは悪性腫瘍ではありませんが、痒み・痛みによる苦痛や美容上の苦痛により、精神的な悪性疾患とさえ言われています。このケロイドの治療にも放射線が利用されています。ケロイドといっても馴染みのない方が大部分ではないでしょうか。そこで、まず患者さんのケロイドに対する思いを述べていただくことにより、この病気についてご理解いただきたいと思います。同時にケロイドが精神的悪性疾患である所以を感じ取ってください。治療についても、『市民のためのがん治療の会』の記事ということで、患者さんの視点で記述してみました。
2、患者さんの体験談
私は、50代女性でケロイドを2か所(胸中央部、下腹部)に持っており、胸中央部は20年以上、下腹部に至っては40年以上と言う長い年月の付き合いです。不快な症状の軽減に繋がる手術+電子線照射治療を平成22年2月に受けて、酷い症状からは解放されました。長年望んできた事ではありますが、不快な症状がない状態というものを今まで持った事がないので不思議な事に戸惑っている自分がいます。それ位、酷い痛みや想像を超えた痒みが及ぼす影響を受けていたと言う事でしょう。特に症状が酷い時は、まだ幼い時でしたので一人で抱えるには辛いものがありました。酷い痛みも常にあるわけではありませんが、寝ている時に痛みで目が覚める程の激痛だった事もありますし、その後にケロイドが大きくなる事を体験的に知っているのでどこまで広がっていくのか分からず恐怖に襲われると言う二重の痛みを伴うのです。ケロイドの大きく広がっていく様は、医学書には蟹の足かなにかに例えられていますが、溶岩が地表に流れ出していくような感じがします。ケロイド部分は、毛穴がないので初夏の頃になりますとお日様が当たったり暑くなるとチクチクするような痛みを感じるので、毎年嫌な季節です。加えて、ケロイド部分は化膿し易く酷い痒みと共に悪臭のする膿が出ていつまでも治らない事が多く、悩まされてきました。痒みも酷くなると不整脈が出るような状態になり辛いものでした。このような事は、多分誰にも理解されないし助けを求めても無駄だと思い、深い孤独に苛まれてきました。
長年ケロイドの治療法を求めて、多くの医療機関に行き、自分で考えて許す範囲で色んな治療法にチャレンジしてきましたけれど、専門である形成外科医であってもケロイドに関する認識は低い事が多く、心無い扱いも多々ありました。ケロイドに関しては、まだ治療法も確立されてない部分もありますし、ある患者には効果があるけれど、他の患者には全く効果なしと言う事も稀ではないので仕方のないことかもしれませんが、正直、医療不信に陥りました。仮に治療法が無くても、真摯な態度で診てくれればそれだけで精神的なケアを患者は得られますし、孤独からは救われます。
私の場合、チャレンジした治療の大半は対応のまずさや効果がないばかりか、激痛を伴うものもあり半分諦める心と、医学の進歩を信じて治療法を諦めずに求め続けないと誰も助けてはくれないんだと奮い立たせる気持ちでここまで来たのが現実です。その間も症状は酷くなり20年以上ぶりに舞い戻った病院で、手術+電子線照射治療を受ける事が出来ました。ですから治癒を求めるならば、諦めずに患者が情報や経験を集めたり交換していくことだと思います。幸い、ありがたいことにケロイドは命に関わる病気ではないのですが、ケロイドのある部位や症状の酷さにより心身にダメージを及ぼすだけでなく、人生にも大きな影響を与える疾患である事を知って頂きたいと思います。
長年ケロイドの治療法を求めて、多くの医療機関に行き、自分で考えて許す範囲で色んな治療法にチャレンジしてきましたけれど、専門である形成外科医であってもケロイドに関する認識は低い事が多く、心無い扱いも多々ありました。ケロイドに関しては、まだ治療法も確立されてない部分もありますし、ある患者には効果があるけれど、他の患者には全く効果なしと言う事も稀ではないので仕方のないことかもしれませんが、正直、医療不信に陥りました。仮に治療法が無くても、真摯な態度で診てくれればそれだけで精神的なケアを患者は得られますし、孤独からは救われます。
私の場合、チャレンジした治療の大半は対応のまずさや効果がないばかりか、激痛を伴うものもあり半分諦める心と、医学の進歩を信じて治療法を諦めずに求め続けないと誰も助けてはくれないんだと奮い立たせる気持ちでここまで来たのが現実です。その間も症状は酷くなり20年以上ぶりに舞い戻った病院で、手術+電子線照射治療を受ける事が出来ました。ですから治癒を求めるならば、諦めずに患者が情報や経験を集めたり交換していくことだと思います。幸い、ありがたいことにケロイドは命に関わる病気ではないのですが、ケロイドのある部位や症状の酷さにより心身にダメージを及ぼすだけでなく、人生にも大きな影響を与える疾患である事を知って頂きたいと思います。
3、ケロイドの臨床像
ケロイドの原因はニキビ、火傷、交通事故などのケガが直接的なものですが、ケロイドが出来やすい体質も大きく関係しています。全身の皮膚に生ずるわけではなく、以下のような好発部位があります。第一は胸の真ん中の胸骨部です(図1)。ニキビの後から発生することが多いのですが、心臓手術の傷痕からも発生します。女性のみならず、非常に気になる部分です。第二は両肩の後ろ側、すなわち肩甲骨の部分です(図2)。第三はおヘソの下の下腹部の中央です。帝王切開や子宮筋腫の手術の後から発生することが多く、女性に多い部位です。最後はピアス孔から発生する耳タブのケロイドです(図3)。最近は若い男性の患者も増えてきました。
図1(前胸部ケロイド)
図2(両側肩甲骨部ケロイド)
図3(耳垂部ケロイド)
図1(前胸部ケロイド)
図2(両側肩甲骨部ケロイド)
図3(耳垂部ケロイド)
4、ケロイド治療の特殊性
ケロイドの患者さんは比較的少なく、医師の間でも必ずしも適切な治療が周知しているわけではありません。患者さんが最初に訪れる皮膚科や形成外科での認識では「ケロイドはキズから発生することが多く、切除術はそれ自体が病巣を大きくしてしまうので禁忌(絶対やってはいけない事)である」とされてきました。そのため、まず内服療法や局所注射療法を受けることが多くいのですが、速効する治療法はなかなかありません。苦痛から逃れるために手術を希望して、次第に大きくなってしまうこともしばしばみられます。手術の後に放射線照射を行うと再発が非常に少なくなることを知っている医師も少数ながらいらっしゃいますが、放射線発癌を心配するあまりその治療法を躊躇することが大半です。それらの事情が重なって、ケロイドを制御するために最も有効な「切除術+術後照射」(図4)という治療を実施している施設は極めて限られているのが我が国の実情です。
5、ケロイド治療の流れ(患者さんの視点で表現した)
40代の女性。原因ははっきりしないが、気付いたら小豆大のケロイドが前胸部にできていた。症状が無かったので放置していたが、汗をかく季節になると痒みがでて、サイズも大きくなるようなので皮膚科に相談するが、「悪い物ではないでしょう。薬を飲んでしばらく様子を見てみましょう」と、リザベン(痒み止めの薬)を処方された。2週間ほど飲んで痒みも治まったので、そのままにしていた。再び夏になって痒みがでてきたので、よく見るとずいぶん大きくなっていた(図4)。5年間我慢していたが、娘がインターネットで調べて日本医科大学付属病院形成外科を受診することになった。短期間に治療が終了する切除術に術後放射線照射を加える治療法を選択した。手術前に放射線治療科を受診して説明を受けた。放射線発癌が怖かったが、そのリスクは非常に低いことを知らされて治療に同意した。その日は超音波検査で乳腺と甲状腺の位置を正確に調べてもらった。両方とも放射線の当たる範囲から外れていたので、乳癌や甲状腺癌の発生リスクはほとんど増加しないという説明を受けた。半年待たされたが入院して全身麻酔でケロイド切除術を受けた。その翌日に再び放射線治療科を受診した。そこでは「今日から放射線照射を開始します。傷跡の上に張ったシートに放射線を当てる範囲の印をつけます。その後で鉛の板で型を作って余計な場所に放射線が当たらないようにします」と、言われマジックインキで青い線を書いてもらった(図5)。30分くらい待って、放射線治療室に入った。非常に大きな医療機器だが、前もって写真で説明を受けていたのでビックリはしなかった。鉛の板が胸の上に乗ると思っていたがそれは機械の方に付いていた。そのかわりに、うすいコンニャクの様な物を傷の上に乗せられた。放射線の当たり方を良くするためだそうだ。照射時間は約3分間であっという間に終わり、広い部屋に一人きりになったが恐怖感はなかった。痛いかもしれないと漠然として不安感があったが、照射中は何の感覚もなかった。翌日からも照射を続け4日間で20グレイという放射線を浴びた。手術から1週間で抜糸してもらい、1か月後の受診予約をして退院した。傷の治りも良く、1か月後には傷跡の辺りが少し赤茶色をしていたが、日焼けと同じ放射線ヤケの為だという説明だった。この頃になると、長い間悩んでいたケロイドが消えていて、夏の耐え難い痛痒さから解放されたんだなと実感するようになった。そして、1年半後の外来受診で「再発はありませんね。今後も再発することはまずないでしょう」と、言われたときには本当にうれしかった(図6)。
6、ケロイド治療の多面性と摘出術後放射線照射
ケロイドの治療には手術を行わない、いわゆる保存的治療がまず行われることがほとんどでしょう。保存的治療にはリザベン等の経口抗アレルギー薬投与、局所ステロイド注射、テープ貼付、圧迫療法、シリコンゲル貼付、紫外線照射などがあり、単独あるいは併用して実施されます。これらの治療法は即効性がなく、また有効率もそれほど高くはありません。従って、症状の改善しない患者さんは治療を諦めてしまうか、ドクターショッピングで渡りあるくことになってしまうのです。
一方、ケロイド摘出術と術後放射線照射は数日間という短期間に治療が終了し、その時点でケロイドと付随する症状は無くなっているという他の治療法にはみられない長所があります。しかし、小さいながら手術という体には負担のかかる治療が必要で、次項で詳しく説明しますが、放射線による影響も無視できないという短所も持ち合わせています。ケロイドの病巣の分布によっては手術を数回に分けて行わなければならないこともありますし、手術そのものが出来ない場合もあります。小さな病巣が無数に広がっていたり、病巣が大きすぎる場合がそれに相当します。もっとも、皮膚移植のテクニックを駆使することにより、手術できる範囲は拡大してきています。
手術なしで、放射線単独でケロイドを治療することもあります。ただし、併用療法と比較して美容上の“仕上がり”が劣り、再発率も高いことから第一にお勧めする方法ではありません。また、照射量(総線量)も多く、発癌率も高くなり、十分そのリスクを認識した上で受ける治療といえるでしょう。実際には他の治療法が無効で、耐え難い痛み痒みがある、中年以降の方が適応となる場合が多いようです。
一方、ケロイド摘出術と術後放射線照射は数日間という短期間に治療が終了し、その時点でケロイドと付随する症状は無くなっているという他の治療法にはみられない長所があります。しかし、小さいながら手術という体には負担のかかる治療が必要で、次項で詳しく説明しますが、放射線による影響も無視できないという短所も持ち合わせています。ケロイドの病巣の分布によっては手術を数回に分けて行わなければならないこともありますし、手術そのものが出来ない場合もあります。小さな病巣が無数に広がっていたり、病巣が大きすぎる場合がそれに相当します。もっとも、皮膚移植のテクニックを駆使することにより、手術できる範囲は拡大してきています。
手術なしで、放射線単独でケロイドを治療することもあります。ただし、併用療法と比較して美容上の“仕上がり”が劣り、再発率も高いことから第一にお勧めする方法ではありません。また、照射量(総線量)も多く、発癌率も高くなり、十分そのリスクを認識した上で受ける治療といえるでしょう。実際には他の治療法が無効で、耐え難い痛み痒みがある、中年以降の方が適応となる場合が多いようです。
7、放射線により癌は発生するのか
(皮膚に放射線照射を行った場合の大雑把な誘発がんのリスクの推定)
結論から述べますと、適切に行われた放射線照射では癌が誘発される心配はほとんどありません。しかし、皮膚の直ぐ下に放射線発癌が比較的おこりやすい甲状腺や乳腺が位置する場合は慎重に治療計画をたてる必要があります。
悪性腫瘍の場合はある程度許される「放射線発癌」は、良性疾患では放射線による晩発性の有害事象のなかで最も注意しなければならないことの一つです。一般には「放射線を浴びると(高頻度に)癌になる」と思われていますが、放射線治療医の認識では「電離放射線の被曝は悪性腫瘍が発生するリスクを増加させるが、低頻度である」となります。両者の認識の間にはかなりのギャップがありますが、残念ながらこれは患者さんに限った認識ではなく、他科の医師や医療関係者においてもほとんど同様です。私たちは次のような説明をして、患者さん自身にケロイドの放射線治療を受けるかどうか決めていただいています。
私たちの病院ではケロイドの術後照射で数百の症例を経験していますが今まで発癌患者は認めていません。しかし、発癌のリスクは死ぬまで消えるものではありません。本当に照射部分に癌が発生していないのかを生涯にわたって経過観察を行うことは不可能です。そこで、発癌リスクについては疫学調査等による推定値を流用することになります。
かなり乱暴な計算になりますので、一桁程度の誤差がでることをお許し頂きたいとおもいますが、18歳〜64歳の方が全身の皮膚に1グレイ被曝したとき名目上10、000人中670人(6.7%)に皮膚癌が発生するとされています。その内、致死的癌は500分の1です。すなわち、死亡率は670÷10000÷500×100=0.0134%となります。耳垂ケロイドの術後照射では10グレイを全身の皮膚のわずか0.05%の範囲に照射するため、癌の発生は670÷10000×10×0.05=0.0335%(3000人に1人)で、死亡率は0.0335÷500=0.000067%(150万人に1人)と計算されます。胸壁ケロイド等の術後照射で20グレイを2.5cm×25cm(全身皮膚の240分の1)の範囲で照射した場合では、0.56%(180名に1人)に皮膚癌が発生し、死亡率は0.0011%(9万人に1人)と算定されます。
悪性腫瘍の場合はある程度許される「放射線発癌」は、良性疾患では放射線による晩発性の有害事象のなかで最も注意しなければならないことの一つです。一般には「放射線を浴びると(高頻度に)癌になる」と思われていますが、放射線治療医の認識では「電離放射線の被曝は悪性腫瘍が発生するリスクを増加させるが、低頻度である」となります。両者の認識の間にはかなりのギャップがありますが、残念ながらこれは患者さんに限った認識ではなく、他科の医師や医療関係者においてもほとんど同様です。私たちは次のような説明をして、患者さん自身にケロイドの放射線治療を受けるかどうか決めていただいています。
私たちの病院ではケロイドの術後照射で数百の症例を経験していますが今まで発癌患者は認めていません。しかし、発癌のリスクは死ぬまで消えるものではありません。本当に照射部分に癌が発生していないのかを生涯にわたって経過観察を行うことは不可能です。そこで、発癌リスクについては疫学調査等による推定値を流用することになります。
かなり乱暴な計算になりますので、一桁程度の誤差がでることをお許し頂きたいとおもいますが、18歳〜64歳の方が全身の皮膚に1グレイ被曝したとき名目上10、000人中670人(6.7%)に皮膚癌が発生するとされています。その内、致死的癌は500分の1です。すなわち、死亡率は670÷10000÷500×100=0.0134%となります。耳垂ケロイドの術後照射では10グレイを全身の皮膚のわずか0.05%の範囲に照射するため、癌の発生は670÷10000×10×0.05=0.0335%(3000人に1人)で、死亡率は0.0335÷500=0.000067%(150万人に1人)と計算されます。胸壁ケロイド等の術後照射で20グレイを2.5cm×25cm(全身皮膚の240分の1)の範囲で照射した場合では、0.56%(180名に1人)に皮膚癌が発生し、死亡率は0.0011%(9万人に1人)と算定されます。
8、最後に
この記事が一人で悩んでいるケロイドの患者さんの一助となればという思いで掲載させていただきました。ケロイドについてなるべくわかりやすく述べたつもりですが、不明な点は
日本医科大学付属病院形成外科・美容外科のHP
http://www.myclinic.ne.jp/nms_prs/pc/doctor.html
をのぞいてみてください。
http://www.myclinic.ne.jp/nms_prs/pc/doctor.html
をのぞいてみてください。
本当に今日は、「目から鱗が落ちる」思いでした。そんなに症例数も多くないのでしょうが、ご本人にとっては大変な苦痛でしょう。消費者問題では、「欠陥商品は生産管理をいくら厳重にしても一定の割合で発生するが、たとえ百万分の一の確率であっても、その欠陥商品を買った人にとっては、その商品がすべてである」と言われます。めったにない病気でもその方にとっては、本当に大変なことなんですよね。
情報が無い、仲間がいないということは不安であり、恐怖であり、絶望となります。ケロイドの患者さんは1人で悩んでいることが多く、今でこそインターネットが普及して情報が得られやすくなっていますが、高齢者の患者さんでは50年以上人知れず悩んでいた方も多くみられます。
情報が無い、仲間がいないということは不安であり、恐怖であり、絶望となります。ケロイドの患者さんは1人で悩んでいることが多く、今でこそインターネットが普及して情報が得られやすくなっていますが、高齢者の患者さんでは50年以上人知れず悩んでいた方も多くみられます。
ふつうは患者は最初に皮膚科や形成外科に行きますが、そこでの認識では「ケロイドはキズから発生することが多く、切除術はそれ自体が病巣を大きくしてしまうので禁忌(絶対やってはいけない事)である」ということで、「切除術+術後照射」という治療がケロイドを制御するのに最も有効であることを知っている医師も少なく、そういう治療を実施している施設は極めて限られているというのも患者にとっては不幸なことですね。先日も重粒子線治療について東京医科大学 茨城医療センターの菅原信二先生にご寄稿いただきましたが。骨軟部腫瘍の方が手術を選択されましたことについて伺いましたら、「残念ながら相当の骨軟部腫瘍の専門家の整形外科医でないと重粒子線治療に対する知識が乏しいと思われます」とのことでした。
(骨軟部腫瘍については以下をご覧ください
http://www.com-info.org/ima/ima_20100408_sugahara.html)
形成外科や皮膚科でもケロイドを扱っている医師はかなり少数です。また放射線治療医はこの治療法は知っていますが、経験豊富な人は限られます。放射線治療においてはガイドラインが作成され、ケロイドを含んだ良性疾患の放射線治療もそこに含まれています。日本放射線腫瘍学会のHPからアクセスできます。
http://www.kkr-smc.com/rad/guideline/2008/benign.pdf
(骨軟部腫瘍については以下をご覧ください
http://www.com-info.org/ima/ima_20100408_sugahara.html)
形成外科や皮膚科でもケロイドを扱っている医師はかなり少数です。また放射線治療医はこの治療法は知っていますが、経験豊富な人は限られます。放射線治療においてはガイドラインが作成され、ケロイドを含んだ良性疾患の放射線治療もそこに含まれています。日本放射線腫瘍学会のHPからアクセスできます。
http://www.kkr-smc.com/rad/guideline/2008/benign.pdf
私どもは「がん治療の均霑化」を求めてがん対策基本法の成立に努力しましたが、本当は病気はガンばかりではないので、どのような病気でも、いわば標準治療をどこででも受けられることが大切ではないでしょうか。これでは宝くじみたいで、運が良ければ放射線治療で制御できるが、運が悪いと手術などでどんどん悪くなってしまう。「切除術+術後照射」という治療法は、ケロイドの標準治療になっていないのでしょうか。
現状ではケロイドには標準治療がありません。様々な病状により治療法が全く異なります。がんの治療でも病期や組織型により治療法が異なるのと同じですね。まずケロイドを専門としている信頼できる形成外科医を受診することが大切です。
現状ではケロイドには標準治療がありません。様々な病状により治療法が全く異なります。がんの治療でも病期や組織型により治療法が異なるのと同じですね。まずケロイドを専門としている信頼できる形成外科医を受診することが大切です。
40代の女性の方の事例は本当に良かったですね、きれいに治っていますし。ご本人はどれほど悩んでおられたか。人生観も変わってしまうのではないでしょうか。
あの方のケロイドはそれほど大きなものではなく、単純に病巣を見ただけでは(もっと大きなものを見慣れた医師は)保存治療を繰り返す場合も多いかもしれません。しかし、患者さんがそれをどのように感じているのかはかなり長時間面接をしないとわかりません。患者さんの思いを十分くみ取った治療を提案するのが医師の責務であると考えています。
あの方のケロイドはそれほど大きなものではなく、単純に病巣を見ただけでは(もっと大きなものを見慣れた医師は)保存治療を繰り返す場合も多いかもしれません。しかし、患者さんがそれをどのように感じているのかはかなり長時間面接をしないとわかりません。患者さんの思いを十分くみ取った治療を提案するのが医師の責務であると考えています。
ヘッドラインでも書きました通りケロイドから原爆を連想しますが、同じ放射線を使う治療で拒否反応を示す患者さんはいませんか?
70代以上の年配の方は終戦直後の「原爆乙女」のイメージがあるからでしょうね。しかし、彼女らのケロイドは爆弾の熱や爆風によって負った火傷や外傷によって生じたものです。最近の患者さんでは、ケロイドの患者さんが癌より若いこともありますが、そのような放射線アレルギーの方はほとんどいませんし、放射線による発がんなどの障害について全く知識のない場合も多くなっています。まず、その辺のインフォームドコンセントから始めなければならない時代になっています。
70代以上の年配の方は終戦直後の「原爆乙女」のイメージがあるからでしょうね。しかし、彼女らのケロイドは爆弾の熱や爆風によって負った火傷や外傷によって生じたものです。最近の患者さんでは、ケロイドの患者さんが癌より若いこともありますが、そのような放射線アレルギーの方はほとんどいませんし、放射線による発がんなどの障害について全く知識のない場合も多くなっています。まず、その辺のインフォームドコンセントから始めなければならない時代になっています。
略歴
宮下次廣(みやした つぐひろ)
昭和53年3月、日本医科大学卒業。東京女子医大脳神経センター勤務中に大学の大先輩である田崎瑛生放射線医学教授に出会い、放射線治療に興味を持つ。昭和57年2月より日本医科大学付属病院放射線科勤務。放射線診断と治療を兼務するが、大学演劇部の先輩である形成外科・美容外科百束比古教授によりケロイド治療に誘い込まれる。平成14年、日本医科大学教授。平成17年、日本医科大学付属病院放射線治療科部長。
昭和53年3月、日本医科大学卒業。東京女子医大脳神経センター勤務中に大学の大先輩である田崎瑛生放射線医学教授に出会い、放射線治療に興味を持つ。昭和57年2月より日本医科大学付属病院放射線科勤務。放射線診断と治療を兼務するが、大学演劇部の先輩である形成外科・美容外科百束比古教授によりケロイド治療に誘い込まれる。平成14年、日本医科大学教授。平成17年、日本医科大学付属病院放射線治療科部長。