侵襲性の低い治療法が新たな開発の段階に入るか
『悪性胸膜中皮腫に対する温熱化学放射線療法』
がん・感染症センター都立駒込病院放射線科
唐澤 克之
悪性胸膜中皮腫とは
悪性胸膜中皮腫は胸膜の中皮細胞ががん化して起こる胸膜原発の腫瘍である。 悪性胸膜中皮腫の原因はアスベストへの曝露歴が最も大きい。他にも喫煙、ウイルス感染、放射線等のリスクとの関係が調べられているが有意とする報告はない。アスベストによる発がん機構は不明な点が多いが、繊維の標的細胞に対する直接的作用とマクロファージや好中球などの炎症細胞を介した間接的な作用があるとされる。このうち直接的作用は細胞内に取り込まれた繊維芽細胞分裂装置の紡錘体に作用することにより染色体異常が生じ、また細胞のDNA損傷は繊維表面から生じるフリーラジカルにより生じる、とされる。またアスベスト繊維は滞留性が高いため、DNA損傷が持続し、遺伝子変異が蓄積されて行き、さらにはアスベストの作用による宿主の免疫能の変化により、変異細胞が免疫監視を逃れることも、腫瘍化に関与すると考えられている。
悪性胸膜中皮腫による死亡者数は男女とも増加傾向を示し、2005年の死亡統計では男性が523人、女性が123人であった。その増加傾向が最近問題となっている。年齢別では男性の場合70〜74歳が最多で、60〜79歳で全体の約6割を占めていた。全体の10万人対死亡率は0.54で肺癌のそれの1/118であった。潜伏期間に関しては平均が30-40年(最長50年)と長く、曝露から10年経過していてもまだ安心はできない。村山らは欧州でのデータからAge-Cohortモデルを使用し、悪性胸膜中皮腫死亡数の将来予測を行った(1)。その結果、2000〜2039年の40年間の死亡数は約101,000人(40,000〜260,000人)と推定され、特に2030〜2039年の10年間の値は約43,000人で1990〜1999年の約20倍の数になると予測されている。ただ欧州でのアスベストの消費量は1960年代から1970年代中期にかけてがピークであるのに対して、日本ではその使用禁止が遅れたため、1970年代前期と1980年代後期にピークがあり、日本ではさらに死亡者は増える可能性がある。
初発症状として多いのが、胸痛と呼吸困難で、その他発熱、咳等がある中皮腫の病理像は極めて多彩であり、またその他の腫瘍との鑑別が難しい症例が多く存在する。病理組織学的には上皮型、二相型、肉腫型の3タイプに分けられる。上皮型の予後が良く、肉腫型の予後が最も悪い。表1に悪性胸膜中皮腫の進行期分類を示す(2)。一般的に根治治療が可能なのはこのうちStage Iのみである。CTでは胸水、胸膜肥厚、胸膜腫瘤などが主な所見である。確定診断は胸腔鏡下の生検である。
悪性胸膜中皮腫は胸膜の中皮細胞ががん化して起こる胸膜原発の腫瘍である。 悪性胸膜中皮腫の原因はアスベストへの曝露歴が最も大きい。他にも喫煙、ウイルス感染、放射線等のリスクとの関係が調べられているが有意とする報告はない。アスベストによる発がん機構は不明な点が多いが、繊維の標的細胞に対する直接的作用とマクロファージや好中球などの炎症細胞を介した間接的な作用があるとされる。このうち直接的作用は細胞内に取り込まれた繊維芽細胞分裂装置の紡錘体に作用することにより染色体異常が生じ、また細胞のDNA損傷は繊維表面から生じるフリーラジカルにより生じる、とされる。またアスベスト繊維は滞留性が高いため、DNA損傷が持続し、遺伝子変異が蓄積されて行き、さらにはアスベストの作用による宿主の免疫能の変化により、変異細胞が免疫監視を逃れることも、腫瘍化に関与すると考えられている。
悪性胸膜中皮腫による死亡者数は男女とも増加傾向を示し、2005年の死亡統計では男性が523人、女性が123人であった。その増加傾向が最近問題となっている。年齢別では男性の場合70〜74歳が最多で、60〜79歳で全体の約6割を占めていた。全体の10万人対死亡率は0.54で肺癌のそれの1/118であった。潜伏期間に関しては平均が30-40年(最長50年)と長く、曝露から10年経過していてもまだ安心はできない。村山らは欧州でのデータからAge-Cohortモデルを使用し、悪性胸膜中皮腫死亡数の将来予測を行った(1)。その結果、2000〜2039年の40年間の死亡数は約101,000人(40,000〜260,000人)と推定され、特に2030〜2039年の10年間の値は約43,000人で1990〜1999年の約20倍の数になると予測されている。ただ欧州でのアスベストの消費量は1960年代から1970年代中期にかけてがピークであるのに対して、日本ではその使用禁止が遅れたため、1970年代前期と1980年代後期にピークがあり、日本ではさらに死亡者は増える可能性がある。
初発症状として多いのが、胸痛と呼吸困難で、その他発熱、咳等がある中皮腫の病理像は極めて多彩であり、またその他の腫瘍との鑑別が難しい症例が多く存在する。病理組織学的には上皮型、二相型、肉腫型の3タイプに分けられる。上皮型の予後が良く、肉腫型の予後が最も悪い。表1に悪性胸膜中皮腫の進行期分類を示す(2)。一般的に根治治療が可能なのはこのうちStage Iのみである。CTでは胸水、胸膜肥厚、胸膜腫瘤などが主な所見である。確定診断は胸腔鏡下の生検である。
表1悪性胸膜中皮腫の進行期分類
悪性胸膜中皮腫の治療法
悪性胸膜中皮腫は発見時には殆ど胸腔全体に病変が広がっている。従って病変全体を切除するためには広範囲の切除術が必要となる。完全切除を目指した手術方法としては胸膜切除/剥皮術と胸膜肺全摘術がある。このうち前者は肺実質を残して病変部を切除する方法である。肺実質を温存するメリットはあるが、病変が葉間胸膜に及んでいる場合には根治性がなくなる。胸膜肺全摘術は壁側及び臓側胸膜、肺、横隔膜、心嚢を一塊として摘出する方法である。片肺切除が必要で手術侵襲は大きいものの、胸腔内に一度も入る事がなく病変を切除する事が出来るので、根治性に優れている。但し両者の優劣を比較した無作為比較試験はない。根治的に手術をされても、局所再発、遠隔再発の頻度は高く、手術成績は1年生存率が55%程度である。また手術関連死亡は5%程度である。化学療法として悪性胸膜中皮腫に効果があるとされ、頻繁に用いられている抗癌剤は シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン(CBDCA)、pemetrexed(ALIMTA)、ゲムシタビン(GEM)等の薬剤である。注目すべきデータはCDDPにpemetrexedを付加したプラセボ比較の第3相試験で、生存期間の中央値が実薬群で12.1ヶ月、プラセボ群で9.3ヶ月であった(3)。この成績は根治的な手術の成績と比較してもあまり変わらない。
悪性胸膜中皮腫の放射線感受性は高いとは言えず、また放射線治療はその標的とする体積の範囲が片側の全胸腔に及ぶため、単独治療で治癒を狙える線量(50-60Gy以上)を投与する事は、肺の有害事象を考慮に入れると不可能である。よって、その線量を投与するためには患側肺の切除後であることが必要である。多くの場合、胸膜肺全摘術後の術後照射として用いられている。
以上より、単独療法には限界があり、悪性胸膜中皮腫の標準治療は集学的治療という選択肢になっている。局所再発、遠隔転移とも頻発するため、手術+放射線療法+化学療法の三者併用が行われている場合が多い(4)。
悪性胸膜中皮腫は発見時には殆ど胸腔全体に病変が広がっている。従って病変全体を切除するためには広範囲の切除術が必要となる。完全切除を目指した手術方法としては胸膜切除/剥皮術と胸膜肺全摘術がある。このうち前者は肺実質を残して病変部を切除する方法である。肺実質を温存するメリットはあるが、病変が葉間胸膜に及んでいる場合には根治性がなくなる。胸膜肺全摘術は壁側及び臓側胸膜、肺、横隔膜、心嚢を一塊として摘出する方法である。片肺切除が必要で手術侵襲は大きいものの、胸腔内に一度も入る事がなく病変を切除する事が出来るので、根治性に優れている。但し両者の優劣を比較した無作為比較試験はない。根治的に手術をされても、局所再発、遠隔再発の頻度は高く、手術成績は1年生存率が55%程度である。また手術関連死亡は5%程度である。化学療法として悪性胸膜中皮腫に効果があるとされ、頻繁に用いられている抗癌剤は シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン(CBDCA)、pemetrexed(ALIMTA)、ゲムシタビン(GEM)等の薬剤である。注目すべきデータはCDDPにpemetrexedを付加したプラセボ比較の第3相試験で、生存期間の中央値が実薬群で12.1ヶ月、プラセボ群で9.3ヶ月であった(3)。この成績は根治的な手術の成績と比較してもあまり変わらない。
悪性胸膜中皮腫の放射線感受性は高いとは言えず、また放射線治療はその標的とする体積の範囲が片側の全胸腔に及ぶため、単独治療で治癒を狙える線量(50-60Gy以上)を投与する事は、肺の有害事象を考慮に入れると不可能である。よって、その線量を投与するためには患側肺の切除後であることが必要である。多くの場合、胸膜肺全摘術後の術後照射として用いられている。
以上より、単独療法には限界があり、悪性胸膜中皮腫の標準治療は集学的治療という選択肢になっている。局所再発、遠隔転移とも頻発するため、手術+放射線療法+化学療法の三者併用が行われている場合が多い(4)。
悪性胸膜中皮腫の温熱療法
一般的な治療法ではないが、悪性胸膜中皮腫に対して温熱療法という治療法がある。Ruthらは胸膜肺全摘術を行う際にアドリアマイシンとCDDPを含んだ温水を胸腔内灌流し、1年生存率が改善したと報告している(5)。本邦でもKodama等の報告により、胸膜播種を来した肺癌や胸膜中皮腫に対して、肺全摘術を行った後にRF誘電加温装置を用いてCDDPを使用した胸腔内温熱化学療法を施行し、良好な成績を挙げている(6)。我々はそれらを参考に、胸水の制御により予後の延長を図る目的で、胸膜肺全摘術を行わずに、上記の電磁波温熱療法装置を用いて温熱化学療法に少量の放射線治療を加える治療を行ってきた(図1)。この方法はそれまでの方法に比べ、(健常な)肺が残存しているため、呼吸困難感がなく、しかも高率に胸水が制御され、患者は殆ど有害事象なく退院できる。またこの制御期間が2-3年続く事もしばしばで、それだけで、数多くの治療法による平均生存期間を上回ってしまう。一方職業としてアスベストを取り扱っていた症例の多くは30年程度の潜伏期間を経て悪性胸膜中皮腫に罹患するので、年齢が70歳前後であることが多く、すでに胸膜肺全摘術が不能であることが多い。このような症例の場合もこの治療法は大きな有害事象もなく、安全に施行でき、また再燃した際にも、もう一度同じ治療を繰り返し用いることが可能である。この治療成績はこれまでも発表してきた(7)が、最新のデータでは治療を行って5年以上経過した14例中6例(43%)が4年以上生存している(平均生存期間27ヶ月)。強度の大きい治療をしても呼吸困難に苦しみ、1-2年の生存期間であることを考慮すると、胸腔内で根治をさせられるような方法を開発する事により、本疾患の標準治療は臓器温存的な新しい段階を迎えることが出来るかも知れない。
一般的な治療法ではないが、悪性胸膜中皮腫に対して温熱療法という治療法がある。Ruthらは胸膜肺全摘術を行う際にアドリアマイシンとCDDPを含んだ温水を胸腔内灌流し、1年生存率が改善したと報告している(5)。本邦でもKodama等の報告により、胸膜播種を来した肺癌や胸膜中皮腫に対して、肺全摘術を行った後にRF誘電加温装置を用いてCDDPを使用した胸腔内温熱化学療法を施行し、良好な成績を挙げている(6)。我々はそれらを参考に、胸水の制御により予後の延長を図る目的で、胸膜肺全摘術を行わずに、上記の電磁波温熱療法装置を用いて温熱化学療法に少量の放射線治療を加える治療を行ってきた(図1)。この方法はそれまでの方法に比べ、(健常な)肺が残存しているため、呼吸困難感がなく、しかも高率に胸水が制御され、患者は殆ど有害事象なく退院できる。またこの制御期間が2-3年続く事もしばしばで、それだけで、数多くの治療法による平均生存期間を上回ってしまう。一方職業としてアスベストを取り扱っていた症例の多くは30年程度の潜伏期間を経て悪性胸膜中皮腫に罹患するので、年齢が70歳前後であることが多く、すでに胸膜肺全摘術が不能であることが多い。このような症例の場合もこの治療法は大きな有害事象もなく、安全に施行でき、また再燃した際にも、もう一度同じ治療を繰り返し用いることが可能である。この治療成績はこれまでも発表してきた(7)が、最新のデータでは治療を行って5年以上経過した14例中6例(43%)が4年以上生存している(平均生存期間27ヶ月)。強度の大きい治療をしても呼吸困難に苦しみ、1-2年の生存期間であることを考慮すると、胸腔内で根治をさせられるような方法を開発する事により、本疾患の標準治療は臓器温存的な新しい段階を迎えることが出来るかも知れない。
図1温熱化学療法
考察とまとめ
この治療法のメリットは、次の通りである。
1)肺を切除しないので、治療後患者さんは呼吸困難感で苦しまない。
2)治療に伴う合併症は軽微で合併症死はない。よって高齢者にも適応となる
3)高率に胸水が制御されるので、ドレナージチューブを抜去して退院できる。
4)補助療法の必要がない。また補助療法なしでも胸膜が癒着された状態が続き、再治療が必要となるまで3年程度経過することも多い。さらに遠隔転移も少ない。
5)放射線治療の線量が最大でも10Gyなので、再治療の際にもう一度用いる事が出来る。
6)電磁波温熱療法の診療報酬が低いため、治療費は極めて安価である。
もともとこの治療法は呼吸器内科から、悪性胸膜中皮腫の胸水制御が不良であったことから胸水だけでも止めて欲しいということで始めた治療である。ところが、胸水を止めるだけでなく、生存期間も著明に延長させるという役割も果たしている。 まだこの成績に関しては最適とは言えないので、将来的に改善が必要である。一つ言える事は、胸膜中皮腫の場合、肺は一般に病気に冒されていないので、その機能を温存しつつ、病変を胸膜腔内に閉じ込めておく、もしくはその中で薬剤や温熱、放射線または手術など集学的治療を行い、その中で治療が完結できるようにすることが、賢明な治療法であると考えられる。
本邦で最近までアスベストの使用が禁止されて来なかったこと、そして現在も一定時期以前の建築物にはアスベストが使用されていること、そしてそれらの解体時にアスベストが飛散することなどから、今後悪性胸膜中皮腫患者は大きく増加することが予想されるため、我々は早期発見のための努力と根治性を高めた治療法の開発に努めなければならない。残念ながら当院では温熱療法の装置が病院改修に際して撤去されており、2012年1月現在この治療はできないでいる。しかし、全国のいくつかの医療施設においてこの治療法を行ってもらえる可能性がある。
この治療法のメリットは、次の通りである。
1)肺を切除しないので、治療後患者さんは呼吸困難感で苦しまない。
2)治療に伴う合併症は軽微で合併症死はない。よって高齢者にも適応となる
3)高率に胸水が制御されるので、ドレナージチューブを抜去して退院できる。
4)補助療法の必要がない。また補助療法なしでも胸膜が癒着された状態が続き、再治療が必要となるまで3年程度経過することも多い。さらに遠隔転移も少ない。
5)放射線治療の線量が最大でも10Gyなので、再治療の際にもう一度用いる事が出来る。
6)電磁波温熱療法の診療報酬が低いため、治療費は極めて安価である。
もともとこの治療法は呼吸器内科から、悪性胸膜中皮腫の胸水制御が不良であったことから胸水だけでも止めて欲しいということで始めた治療である。ところが、胸水を止めるだけでなく、生存期間も著明に延長させるという役割も果たしている。 まだこの成績に関しては最適とは言えないので、将来的に改善が必要である。一つ言える事は、胸膜中皮腫の場合、肺は一般に病気に冒されていないので、その機能を温存しつつ、病変を胸膜腔内に閉じ込めておく、もしくはその中で薬剤や温熱、放射線または手術など集学的治療を行い、その中で治療が完結できるようにすることが、賢明な治療法であると考えられる。
本邦で最近までアスベストの使用が禁止されて来なかったこと、そして現在も一定時期以前の建築物にはアスベストが使用されていること、そしてそれらの解体時にアスベストが飛散することなどから、今後悪性胸膜中皮腫患者は大きく増加することが予想されるため、我々は早期発見のための努力と根治性を高めた治療法の開発に努めなければならない。残念ながら当院では温熱療法の装置が病院改修に際して撤去されており、2012年1月現在この治療はできないでいる。しかし、全国のいくつかの医療施設においてこの治療法を行ってもらえる可能性がある。
文献
1) 村山武彦. 胸膜中皮腫による死亡数の将来予測事例.独立行政法人労働者健康福祉機構監修 胸膜中皮腫診療ハンドブック26-34、2007、中外医学社
2) Pleural mesothelioma. In TNM Classification of Malignant Tumors 7th ed, 147-150, 2009, Wiley-Blackwell, UK
3) Vogelzang NJ, Rusthoven JJ, Symanowski J, Denham C, Kaukel E, Ruffie P, Gatzemeier U, Boyer M, Emri S, Manegold C, Niyikiza C, Paoletti P. Phase III study of pemetrexed in combination with cisplatin versus cisplatin alone in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2003 Jul 15;21(14):2636-44.
4) Sugarbaker DJ, Flores RM, Jaklitsch MT, Richards WG, Strauss GM, Corson JM, DeCamp MM Jr, Swanson SJ, Bueno R, Lukanich JM, Baldini EH, Mentzer SJ. Resection margins, extrapleural nodal status, and cell type determine postoperative long-term survival in trimodality therapy of malignant pleural mesothelioma: results in 183 patients. J Thorac Cardiovasc Surg. 1999 Jan;117(1):54-63
5) van Ruth S, Baas P, Haas RL, Rutgers EJ, Verwaal VJ, Zoetmulder FA. Cytoreductive surgery combined with intraoperative hyperthermic intrathoracic chemotherapy for stage I malignant pleural mesothelioma. Ann Surg Oncol. 2003 Mar;10(2):176-82.
6)Kodama K, Doi O, Tatsuta M, Kuriyama K, Tateishi R. Development of postoperative intrathoracic chemo-thermotherapy for lung cancer with objective of improving local cure. Cancer. 1989 Oct 1;64(7):1422-8.
7)Xia H, Karasawa K, Hanyu N, Chang TC, Okamoto M, Kiguchi Y, Kawakami M, Itazawa T. Hyperthermia combined with intra-thoracic chemotherapy and radiotherapy for malignant pleural mesothelioma. Int J Hyperthermia. 2006 Nov;22(7):613-21.
2) Pleural mesothelioma. In TNM Classification of Malignant Tumors 7th ed, 147-150, 2009, Wiley-Blackwell, UK
3) Vogelzang NJ, Rusthoven JJ, Symanowski J, Denham C, Kaukel E, Ruffie P, Gatzemeier U, Boyer M, Emri S, Manegold C, Niyikiza C, Paoletti P. Phase III study of pemetrexed in combination with cisplatin versus cisplatin alone in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2003 Jul 15;21(14):2636-44.
4) Sugarbaker DJ, Flores RM, Jaklitsch MT, Richards WG, Strauss GM, Corson JM, DeCamp MM Jr, Swanson SJ, Bueno R, Lukanich JM, Baldini EH, Mentzer SJ. Resection margins, extrapleural nodal status, and cell type determine postoperative long-term survival in trimodality therapy of malignant pleural mesothelioma: results in 183 patients. J Thorac Cardiovasc Surg. 1999 Jan;117(1):54-63
5) van Ruth S, Baas P, Haas RL, Rutgers EJ, Verwaal VJ, Zoetmulder FA. Cytoreductive surgery combined with intraoperative hyperthermic intrathoracic chemotherapy for stage I malignant pleural mesothelioma. Ann Surg Oncol. 2003 Mar;10(2):176-82.
6)Kodama K, Doi O, Tatsuta M, Kuriyama K, Tateishi R. Development of postoperative intrathoracic chemo-thermotherapy for lung cancer with objective of improving local cure. Cancer. 1989 Oct 1;64(7):1422-8.
7)Xia H, Karasawa K, Hanyu N, Chang TC, Okamoto M, Kiguchi Y, Kawakami M, Itazawa T. Hyperthermia combined with intra-thoracic chemotherapy and radiotherapy for malignant pleural mesothelioma. Int J Hyperthermia. 2006 Nov;22(7):613-21.
中皮腫はそんなに多くはないので、当会での相談受け付けも少ないですが、治療も困難な場合も多いようです。唐澤先生がこのような疾患を取り上げていただき、貴重な情報提供をしていただきましたことに、会としても深く感謝いたします。
こちらこそ機会を与えて頂き、ありがとうございます。
こちらこそ機会を与えて頂き、ありがとうございます。
いわゆる標準治療としては、胸膜切除/剥皮術と胸膜肺全摘術といった侵襲性の大きい治療法なのでしょうが、好発年齢が高いことも勘案すると、今回ご提供いただいた情報は、患者にとって極めて体にやさしい治療法として非常に注目されるように思われますが。
呼吸器内科のドクターから、難治性の胸水だけでも止めてくれたらよいから、という位の期待度で始めた治療でしたので、最初の患者さんが腫瘍が消えるところまで反応してくれたのは嬉しい誤算でした。結局その患者さんは5年以上生存されましたが,それ以降の患者さんも、根治はしていませんが、普通に活動が出来て比較的よい全身状態のもと、2年、4年、6年と手術や抗癌剤での治療成績に比較して十分延命できていることは、希望の持てる治療法と考えます。
呼吸器内科のドクターから、難治性の胸水だけでも止めてくれたらよいから、という位の期待度で始めた治療でしたので、最初の患者さんが腫瘍が消えるところまで反応してくれたのは嬉しい誤算でした。結局その患者さんは5年以上生存されましたが,それ以降の患者さんも、根治はしていませんが、普通に活動が出来て比較的よい全身状態のもと、2年、4年、6年と手術や抗癌剤での治療成績に比較して十分延命できていることは、希望の持てる治療法と考えます。
日本では標準治療ではないようですが、先生のご報告の中でも、海外の情報が多いようです、海外では温熱化学療法はかなり行われているのでしょうか。
胸腔内への温水環流方式の方法がよく行なわれていると言われています。
胸腔内への温水環流方式の方法がよく行なわれていると言われています。
放射線治療も切らずに治す侵襲性の低い治療法として見直されていますが、胸膜に沿ってドーナツ状に放射線を照射する方法もあるやに伺ったことがありますが。
Tomotherapyという装置を使用して肺(胸腔)を打ち抜く方法があります。
Tomotherapyという装置を使用して肺(胸腔)を打ち抜く方法があります。
先生もご指摘の通り、日本は何でもtoo little, too lateで、アスベスト対応もずいぶん遅れました上に、世界の長寿トップクラスの国ですので、中皮腫の発生は今後も増加が見込まれます。今回ご提供いただきましたような治療についての研究が進みますことを切望いたします。
ありがとうございます。侵襲性の低い治療ですので手術に耐えられない患者さんにはお薦めできます。そして医学もこれだけ進歩してきていますから、集学的治療で治療するにしても、胸膜中皮腫はその発生母体の胸膜腔だけで治療が完結できるように叡智を結集してできないものか、と考えています。
ありがとうございます。侵襲性の低い治療ですので手術に耐えられない患者さんにはお薦めできます。そして医学もこれだけ進歩してきていますから、集学的治療で治療するにしても、胸膜中皮腫はその発生母体の胸膜腔だけで治療が完結できるように叡智を結集してできないものか、と考えています。
私が受けました舌がんの小線源による組織内照射なども同様ですが、化学温熱療法のような治療法が利益採算のためにどんどん廃れてゆく。私はこのような医療を「絶滅危惧医療」と言っているのですが、技術の伝承の面からも、大変残念なことですし、残念だとだけ言っているわけにはゆかないと思っております。患者会もこうした問題に真剣に取り組むべきでしょう、何といっても自分たちの問題です。
まったく仰るとおりです。医療者側としては、治療した結果がデータとして残せるように努力をしていかなければなりません。温熱療法は一時放射線腫瘍学会を凌駕する程の会員数を誇った時代もありました。しかしながら、治療のターゲットが明確ではなく、また治療の再現性という点からも問題があり、期待された効果が常に得られないということから、そして診療報酬の安さから、現在の高精度放射線治療の前に淘汰されていく運命にあったのかもしれません。しかしながら、熱の併用により、放射線療法、化学療法の効果が増強されるという理論的根拠があり、また本疾患のように依然として標準治療を圧倒できるような疾患もある訳ですから、いつかまたブームのようなものが来るかもしれません。当院では当面の間、温熱療法はできませんが、そのブームのようなものが起こったときのために、装置を入れる部屋は残してあります。
まったく仰るとおりです。医療者側としては、治療した結果がデータとして残せるように努力をしていかなければなりません。温熱療法は一時放射線腫瘍学会を凌駕する程の会員数を誇った時代もありました。しかしながら、治療のターゲットが明確ではなく、また治療の再現性という点からも問題があり、期待された効果が常に得られないということから、そして診療報酬の安さから、現在の高精度放射線治療の前に淘汰されていく運命にあったのかもしれません。しかしながら、熱の併用により、放射線療法、化学療法の効果が増強されるという理論的根拠があり、また本疾患のように依然として標準治療を圧倒できるような疾患もある訳ですから、いつかまたブームのようなものが来るかもしれません。当院では当面の間、温熱療法はできませんが、そのブームのようなものが起こったときのために、装置を入れる部屋は残してあります。
略歴
唐澤 克之(からさわ かつゆき)
昭和59年東京大学医学部卒業後同放射線科入局、東大放射線科助手、社会保険中央総合病院放射線科医長、東京都立駒込病院放射線科医長を経て平成17年同部長、現在に至る。この間昭和61年スイス国立核物理研究所客員研究員。
専門 放射線腫瘍学 特に肺癌、泌尿器癌、消化器癌
日本放射線腫瘍学会理事 日本医学放射線学会専門医 日本癌治療認定医機構 がん治療認定医 暫定指導医
昭和59年東京大学医学部卒業後同放射線科入局、東大放射線科助手、社会保険中央総合病院放射線科医長、東京都立駒込病院放射線科医長を経て平成17年同部長、現在に至る。この間昭和61年スイス国立核物理研究所客員研究員。
専門 放射線腫瘍学 特に肺癌、泌尿器癌、消化器癌
日本放射線腫瘍学会理事 日本医学放射線学会専門医 日本癌治療認定医機構 がん治療認定医 暫定指導医