市民のためのがん治療の会はがん患者さん個人にとって、
  最適ながん治療を考えようという団体です。セカンドオピニオンを受け付けております。
   放射線治療などの切らずに治すがん治療の情報も含め、
  個人にとって最適ながん治療を考えようという気持ちの現れです。
市民のためのがん治療の会
どう変わる、放射線治療時の診察
『放射線治療時の毎日診察必要性の変更』
日本放射線腫瘍学会 茂松 直之

 放射線治療は患者のがんの状況に応じて必要な線量を分割して照射することが一般的だ。たとえば月曜日に診察を受け照射を受けると、火曜日から金曜日までは診察を受けずに照射を受ける。翌週月曜日に再度診察を受け、照射…を繰り返す。この火曜日から金曜日までを厚労省が「無診察治療」と指摘したことから、放射線治療の現場の先生方はもとより、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)としても大きな問題となり、対応策について検討がなされてきた。「無診察治療」とは、医師の診察なしにたとえば薬を処方するなど、医療行為をすることは禁じられていることだ。
 「市民のための」がん治療を進める当会としても重大な関心を持っていたところであるが、このたび解決を見たので、JASTROの当該問題の中心的な対応をされた慶應義塾大学放射線科の茂松直之先生にご寄稿いただいた。
 本事案については当会もJASTROのご要望に応え、会員の皆様にアンケート調査を行うなどご協力をさせていただいたが、ご協力いただいた会員の皆様には改めて御礼申し上げる次第である。
 なお、本稿はJASTROを総意を代表して、理事の一人である茂松先生個人からの寄稿であります。(會田 昭一郎)

 2008年以降、厚生労働省の監査が大学病院をはじめとする特定機能病院で行われ、外来放射線治療における無診察治療が指摘され、再診料の返還を含め全国的に大きな問題となっております。放射線治療は開始されると10-30回毎日行われることがほとんどですが、無診察治療は医師法上禁止されており、治療の際には医師の診察が必要とされています。しかし実際には医師の診察による指示の下に治療が行われており、通常の放射線治療では短期間に大きな医学的変化が患者さんに現れることはなく、日本では、放射線治療医の圧倒的な不足もあり、週に一回の診察で患者さんの体調を観察して照射を行っている病院がほとんどで、大学病院でも原則的には週一回の診察で治療を行っておりました。まして常勤医のいない市中病院では非常勤医の勤務する曜日だけの診察で治療を行っているのが現状です。これは長い経験の積み重ねと放射線生物学的見地から、週一回の診察で安全性は十分に担保できているからに他ならず、診察のない日は放射線治療専門技師あるいは看護師が簡単な問診を行い何らかの変化があったときのみ、放射線治療医の判断を仰ぐという体制で治療が実施されております。照射日に毎日診察を行うと放射線治療医の大きな負担増大はいたしかたないとしても、患者さんに毎日毎日、数時間の診察待ちを強いることにもなります。欧米・先進国でもほとんどの国で週に1回の診察で放射線治療を行っており、薬剤の処方と同様の考えで一週分の放射線治療を週に一回処方するという形式を取ってきておりました。

 週に一回の診察で患者さんの安全が担保できるかという問題と、法律上毎日診察が義務づけられていることの現実の矛盾を回避するため、1年以上厚生労働省を始めとする関係各所とJASTROの健保委員会で協議をし、放射線生物学的な検討、これまでの実績、医師・患者団体のアンケート調査などを基に、厚生労働省をはじめとする関係各所と検討してまいりました。

 その結果、最終的に来年度から、放射線生物学的に通常の放射線照射であれば週に1回の診察で患者さんの安全が担保できること、何らかの変化・患者さんの希望があればいつでも診察が受けられる事、放射線治療専門技師あるいは看護師が毎日の照射に立ち会うことなどを条件にし、週に一回の医師の診察で十分に安全性が担保できる体制が整っている施設においては、毎回の再診療を撤廃し、いくつかの患者さんの安全性の条件が満たされれば週一回の診察で新たな管理料を徴収する事になりました。

 この点に関する、4月改訂後の条文を以下に示します。いろいろな御意見もあると思いますが、我々放射線治療医は多大なる責任を持って患者さん治療とその安全を中心に貢献してゆきますので、宜しくお願いいたします。


<外来放射線照射診療料の創設>
第1 基本的な考え方
我が国の放射線治療の患者の割合は欧米諸国に比して低いものの、放射線治療患者数は著明に増加している。一方で、放射線治療医の増加率は低く、放射線治療医1人あたりの患者数は増加しており、患者の放射線治療待ち時間が延長している。外来での放射線治療時には毎回の診察を前提としていることについて、患者の状態像や医療機関における治療提供時の体制を踏まえ、医師の指示による看護師や診療放射線技師等のチームによる毎回の観察を評価する。

第2 具体的な内容
外来放射線照射実施計画において、1週間に概ね5日間の放射線照射を実施することとしている外来の患者に対し、医師の指示による看護師や診療放射線技師等のチームによる毎回の観察を評価する。
(新) 外来放射線照射診療料 280 点

[算定要件]
@ 放射線治療医(放射線治療の経験を5年以上有するものに限る。)が診察を行った日に算定し、算定日から7日間は医師による診察を行わない日であっても放射線照射を実施してよい。ただし、第2日目以降の看護師、診療放射線技師等による患者の観察については、照射毎に記録し、医師に報告すること。

A 放射線治療を行う前に、放射線治療による期待される治療効果や成績などとともに、合併症、副作用等についても必ず患者に説明し、文書等による同意を得ること。

B 関係学会による放射線精度管理等のガイドラインを遵守すること。

C 算定日から7日間は放射線照射を実施した日について初・再診料、外来診療料を算定しない。

D 算定した日を含め、3日間以内で照射が終了する場合は、本点数の100 分の50 を請求する。


[施設基準]
@ 放射線照射を行うときは、当該保険医療機関に放射線治療医(放射線治療の経験を5年以上有するものに限る。)が勤務していること。

A 専従の看護師及び専従の診療放射線技師がそれぞれ1名以上勤務していること。

B 放射線治療に係る医療機器の安全管理、保守点検及び安全使用のための精度管理を専ら担当する技術者(放射線治療の経験を5年以上有するものに限る。)が1名以上勤務していること。

C 緊急の合併症等時に放射線治療医(放射線治療の経験を5年以上有するものに限る。)が対応できる連絡体制をとること。


<編集注>
当会は「市民のための」がん治療の会を標榜しており、「市民のため」というスタンスを堅持している。 そこで本事案について市民レベルで問題となるのは、
1. 月曜:診察+照射、火曜から金曜:照射のみの従来方式は変わらないが、この方式で患者の安全性が担保できるか。
2. 費用は従来とどのように変わるのか。
ということである。

1については上記の説明で概ね了解できよう。

2については記載がないので、以下に付記する

改正前:週一回診察照射の日は診察しない日でも、再診料として70点=700円が自動的に加算されていたので、700円* 5日/週=3500円の支払い。

改正後:再診料はなくなり、週一回の診察時に280点=2800円の支払い いずれも患者は一般的にこの3割負担。 従って患者としては治療費は若干減額されることになる。

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