市民のためのがん治療の会はがん患者さん個人にとって、
  最適ながん治療を考えようという団体です。セカンドオピニオンを受け付けております。
   放射線治療などの切らずに治すがん治療の情報も含め、
  個人にとって最適ながん治療を考えようという気持ちの現れです。
市民のためのがん治療の会
医学生は放射線治療をどのように学ぶか
『医師のキャリアパスを考える医学生の会主催「第4回放射線医学ツアー」のご報告』

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」会長
秋葉春菜
医師のキャリアパスを考える医学生の会では2011年8月15日〜16日の二日間に渡り「第4回放射線医学見学ツアー」を開催致しました。
本ツアーは公益財団法人がん研究会顧問の土屋了介先生が、放射線医学総合研究所の村上秀雄先生のご講演に感銘を受けられたことから始まりました。
今回はツアー初となる関西での開催であり、北は北海道から南は福岡まで、1年生〜5年生の全国約20名の学生が集まりました。
ツアー1日目はまず兵庫県立粒子線医療センターで研修を行いました。先生方のご講演(放射線治療の現状と歴史、最先端技術、看護、医学物理士の役割について)を受け、病院見学と放射線治療方針計画作成実習を行いました。
当センターでは日本で唯一、重粒子線治療と陽子線治療の両方を行っており、木材を多用した病室や落ちついたロビーでは、いわゆる「病院」とは少し違った清潔感と温かみを感じることができました。
先生方のご講演では現場で働いている方の声を聞くことができました。看護師さんが放射線科独自のやり方として行っているケアや、日本ではまだ数の少ない医学物理士がどのようなことをしているのかを知ることができました。
病院見学では機器のメンテナンス中ということで粒子線治療の裏を見せて頂くことができました。繊細な治療を可能にした最先端機器の置いてある治療室のドアを開けると、そこには直径10mの巨大粒子線加速器が存在していました。また陽子線と重粒子線を治療に用いるため加速させる「シンクロトロン」という直径30mの巨大装置も見ることができました。放射線治療を行う際には陽子線や重粒子線を高額で巨大な装置でもってコントロールしながら治療に応用しているということがわかり、粒子線治療ならではの施設を見学することが出来たと思います。
さらに、大きな研究施設も併設されており、まだまだこれから発展していく領域であることが実感できました。



治療の舞台裏、巨大加速器を見学


次に、隣接してある大型放射光施設SPring-8を見学しました。SPring-8では全周1.5kmにもおよぶリング状の施設で生み出す「放射光」と呼ばれる光を使い、原子レベルの微細な構造や動きを観察しています。馴染みのある領域での産業利用(むし歯予防のガム開発など)はもちろんのこと、医学へも幅広い応用ができることを知りました。ご講演で見せて頂いた放射光技術を用いて撮った画像がとても印象的でした。
最後に、近畿大学医学部放射線腫瘍学部門教授の西村恭昌先生の特別講演を拝聴しました。欧米と日本での放射線治療への意識の差や放射線治療がまだまだ日本で一般的でないこと、この治療法が比較的侵襲性の低い機能と形態の温存が可能な治療法であり、QOLを重視した根本的治療となることで、今後さらに発展する可能性をもった領域であることを改めて知ることができました。



放射線治療についてご説明を頂きました


2日目は姫路市にある兵庫県立がんセンターにて研修を行いました。 放射線治療の現状とその強み、今後社会との兼ね合いの中でどのような放射線治療が求められていくと考えられているかについてのお話を頂き、治療現場見学と治療指針計画作成実習を行いました。
治療指針計画作成ではPC上の3D空間で画面を操作し、ターゲットをどのように攻めるのか考え、作戦を練り、mm単位で照射範囲を決めます。それだけではまだPC上のみの操作となり「治療」を実感しにくいですが、実習と見学をしたことでPC上の計画が実際に行われていることを体感できました。実際に患者さんが治療室で照射されているのを見たり今までの経過を記録した検査結果をみることでその効果を実感することができました。



先生のご指導のもとツアー参加者が治療計画にチャレンジ




ツアー参加者が治療計画にチャレンジ
兵庫県立粒子線センターでも感じたことでしたが、現場では放射線技師や医学物理士、看護師といった多様な職種が存在します。互いに協力し合って一つの治療計画を立てて実施していく現場で、チーム医療の重要性を実感することもできました。

今回のツアーを通して参加者からは、放射線治療に対するイメージが変わった、興味を持てた、今後求められていきそうだと感じられたという感想が多く寄せられました。 今後高齢社会が進み侵襲性の低い放射線治療はますます求められることでしょう。 今はまだマンパワーが足りないと言われますが、今後は研究とその応用を用いた臨床の双方を充実させていくことが必要です。 今回のツアーを通して、大学の講義では学ぶことができないようなことに触れ、学び、考えるきっかけとなり、そしていずれは治療現場の充実に結び、患者さんがより広い選択肢をもってご自身の生き方を選択することができる環境をつくる一端を担うことができれば、と思います。

そこが聞きたい
Q放射線ツアーは土屋先生がはじめられたそうですね、以前、市民のためのがん治療の会の小林さんのご好意で小林さんの会社をお借りして西尾先生のゼミをやったことがありましたね、秋葉さんもその時参加していただきました。西尾先生は土屋先生ともご親交があり、なんだか色々ご縁があるようですね。

A はい、土屋了介先生が,村山秀雄先生の講演を聞き,非常に感銘を受けられたことに端を発します。土屋先生は,“未来の医療を築くのは学生である”との視点から,学生との交流を非常に重視されており,「こんな面白い話があるのなら,ぜひ学生に聞いてもらおう」と,このような機会をつくってくださいました。 それから毎年土屋先生の助言を頂きつつ、先生方の協力のもと開催しております。

以前西尾先生のゼミに私も参加させて頂きました。西尾先生の著書を拝読し、直接お会いしご経験談と現在の放射線治療についてのお話を伺うことができ非常に刺激を受けました。医学を学ぶことへのモチベーションも大きく向上しました。

Q今回は良い勉強をなさいましたね。私たち患者の立場からみると、がん患者の主治医はほとんど放射線科以外の先生といってもいいような状況です。集学的治療などといっても、実際にはマンパワーとしても圧倒的に多い外科や内科の意見が優勢になりがちだと思います。ですからどうしても手術や抗がん剤偏重になりがち・・・。

A まだ私が学生であり、知識も経験もまだまだですが、今後現場に立つ際には広い視野と知識をもって治療に当たりたいと思います。

Q今の放射線治療機器はコンピュータの塊みたいなもののようですので、コンピュータに小さい時から慣れてきている皆さんの世代以降の方々は、放射線治療には興味があるのではないでしょうか。

A 医療機器の発展により大きく進歩した放射線治療の領域はこれからも更に進化していくと思います。もちろん興味はあります。意欲をもって新しい知識、技術を吸収して参りたいと思います。

Q わたし自身、放射線治療で機能と形態を温存でき、高いQOLを保つことができています。本文にもお書きになっているように、加えて高齢社会に突入していますので、侵襲性の低い放射線治療は今後ますます需要が増えると思いますが、今回の放射線ツアー参加を契機に是非、良い放射線腫瘍医になっていただきたいと思います。今回は学業に、学生グループのリーダとしてのご活動など大変ご多忙のところ、ご寄稿いただき本当に有難うございました。

A ありがとうございました。私たちももっと学び、そして視野の広い医師になれる尽力して参ります。


略歴
秋葉 春菜(あきは はるな)

2007年 吉祥女子高校卒業後、2009年 東京女子医科大学医学部入学。 現在 東京女子医科大学医学部4年在学
2012年 「医師のキャリアパスを考える医学生の会」会長


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