大腸カプセル内視鏡
『大腸がんを診断する検査法について』
名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学
教授 後藤秀実
医療技術の進歩と共に昔に比べれば内視鏡自体も細くなり、スムーズに挿入できるようになった模様だが、それでも大腸に沿って挿入するときには曲がり角などではかなり苦しいことも多い。そのため、軽い麻酔をかけての検査が行われることも多いようだ。
そこでこうした苦痛の軽減のために、画期的なカプセル型内視鏡が開発された。腸の洗浄は仕方がないが、そのあとはカプセルを飲みこめばいいだけだ。これは検査を受ける者にとっては大きな福音である。
「がん医療の今」では患者の受ける検査の苦痛の軽減について、無音型MRIや小腸検査のためのCTエンテロクリーシスなどを取りあげてきたが、今回は大腸カプセル内視鏡に詳しい名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学教授の後藤秀実先生にご寄稿をいただいた。(會田 昭一郎)
大腸がんは生活習慣(病)や肥満と関連するとの報告が散見されますが、現代の食の欧米化を考えますと今後更なる増加が予測される疾患です。大腸がん治療の第一歩は、疾患の予防と早期発見と思われます。疾患の予防とはすなわち生活や食事内容の見直しであり、早期発見とは定期的に大腸の検査を受けることです。そこで本稿では大腸の検査方法とその特徴につき新しい知見を含め述べます。
大腸がんによる症状は血便や腹痛、腹部腫瘤などがありますが、ある程度進行した状態でないと自覚されません。症状によって受診され、大腸がんの診断を受けた時点では外科手術のみならず追加化学療法が必要である患者さんをしばしば経験します。大腸がんの存在診断ができる検査には、検診で用いられる便潜血反応やPET検査、血液中の腫瘍マーカー検査などがあり、無症状であってもこれらの異常によって病院を受診されることがあります。大腸がん自体を診断する方法は大腸内視鏡、CTコロノグラフィ、注腸造影、大腸カプセル内視鏡が挙がり、各々はその特徴を有します(表)。
そのなかでも大腸内視鏡は最も正確であり、病変のごく一部をサンプルとしてつまんで検査すれば、がん細胞の存在を確認し大腸がんの確定診断が得られます。ただし大腸内視鏡は挿入時の苦痛を伴うために鎮静剤の使用が必要である場合や検査の忍容性について課題があり、事前にCTコロノグラフィや大腸カプセル内視鏡を用いて大腸の状態をチェックしたいと思う患者さんが増えてきています。
大腸がんの新たな診断法として大腸カプセル内視鏡検査は2013年7月に認可を受け、2014年1月からは保険診療が始まっています。カプセル内視鏡は元来小腸のための検査法として1980年代よりイスラエルで開発された検査技術です。小腸用カプセル内視鏡は日本では2007年に保険診療が開始され、現在では小腸疾患診断の中心的存在となっております。小腸用カプセル内視鏡検査につき説明します。カプセルのサイズは長径が26mmと錠剤よりもやや大きく、3.6gと軽量です。内部にレンズ、CMOSセンサー、ボタン電池などを有し、自動的に1秒間に2枚の写真撮影を行いつつ、胃腸の蠕動によって受動的に進みます。最大撮影時間は16時間程度で、胃の通過が平均40分、小腸の通過が約4時間30分、カプセルが大腸に到達したことを確認して検査終了です。検査は長時間を要しますが、検査開始4時間後には食事をとることができ、検査中は自由に過ごせます。小腸用カプセル内視鏡を大腸用に応用してこの度保険診療が開始されました。大腸を検査するため、2〜3リットルの洗浄剤を含む水分を飲用して、腸内を洗浄した後に検査を行います。大腸内視鏡で経験される腹部が突っ張る痛みはありません。以前に大腸内視鏡による痛みで全大腸の観察が困難で検査が不十分であった患者さんや、内視鏡自体に恐怖感を持つ患者さんが本検査を選ぶ傾向にあります。本検査の大腸ポリープの診断感度は90%以上であるとの報告が多く、その有用性は世界中で認知されてきております。
大腸カプセル内視鏡は導入されたばかりですが、今後大腸がんの早期診断に大いに役立ち、患者さんの利益になることを願っております。
大腸がんによる症状は血便や腹痛、腹部腫瘤などがありますが、ある程度進行した状態でないと自覚されません。症状によって受診され、大腸がんの診断を受けた時点では外科手術のみならず追加化学療法が必要である患者さんをしばしば経験します。大腸がんの存在診断ができる検査には、検診で用いられる便潜血反応やPET検査、血液中の腫瘍マーカー検査などがあり、無症状であってもこれらの異常によって病院を受診されることがあります。大腸がん自体を診断する方法は大腸内視鏡、CTコロノグラフィ、注腸造影、大腸カプセル内視鏡が挙がり、各々はその特徴を有します(表)。
そのなかでも大腸内視鏡は最も正確であり、病変のごく一部をサンプルとしてつまんで検査すれば、がん細胞の存在を確認し大腸がんの確定診断が得られます。ただし大腸内視鏡は挿入時の苦痛を伴うために鎮静剤の使用が必要である場合や検査の忍容性について課題があり、事前にCTコロノグラフィや大腸カプセル内視鏡を用いて大腸の状態をチェックしたいと思う患者さんが増えてきています。
大腸がんの新たな診断法として大腸カプセル内視鏡検査は2013年7月に認可を受け、2014年1月からは保険診療が始まっています。カプセル内視鏡は元来小腸のための検査法として1980年代よりイスラエルで開発された検査技術です。小腸用カプセル内視鏡は日本では2007年に保険診療が開始され、現在では小腸疾患診断の中心的存在となっております。小腸用カプセル内視鏡検査につき説明します。カプセルのサイズは長径が26mmと錠剤よりもやや大きく、3.6gと軽量です。内部にレンズ、CMOSセンサー、ボタン電池などを有し、自動的に1秒間に2枚の写真撮影を行いつつ、胃腸の蠕動によって受動的に進みます。最大撮影時間は16時間程度で、胃の通過が平均40分、小腸の通過が約4時間30分、カプセルが大腸に到達したことを確認して検査終了です。検査は長時間を要しますが、検査開始4時間後には食事をとることができ、検査中は自由に過ごせます。小腸用カプセル内視鏡を大腸用に応用してこの度保険診療が開始されました。大腸を検査するため、2〜3リットルの洗浄剤を含む水分を飲用して、腸内を洗浄した後に検査を行います。大腸内視鏡で経験される腹部が突っ張る痛みはありません。以前に大腸内視鏡による痛みで全大腸の観察が困難で検査が不十分であった患者さんや、内視鏡自体に恐怖感を持つ患者さんが本検査を選ぶ傾向にあります。本検査の大腸ポリープの診断感度は90%以上であるとの報告が多く、その有用性は世界中で認知されてきております。
大腸カプセル内視鏡は導入されたばかりですが、今後大腸がんの早期診断に大いに役立ち、患者さんの利益になることを願っております。
略歴
後藤秀実 (ごとうひでみ)
1979年名古屋大学医学部卒、1999年名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部助教授
2003年名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学教授
専門:消化管癌(胃癌、大腸癌など)の診断と治療、小腸疾患
資格等:日本内科学会認定医・指導医、日本消化器病学会指導医、ほか多数
所属学会等:日本消化器病学会財団評議員・東海支部支部長、日本消化器内視鏡学会社団評議員、日本カプセル内視鏡学会理事、ほか多数
1979年名古屋大学医学部卒、1999年名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部助教授
2003年名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学教授
専門:消化管癌(胃癌、大腸癌など)の診断と治療、小腸疾患
資格等:日本内科学会認定医・指導医、日本消化器病学会指導医、ほか多数
所属学会等:日本消化器病学会財団評議員・東海支部支部長、日本消化器内視鏡学会社団評議員、日本カプセル内視鏡学会理事、ほか多数