セカンドオピニオンの重要性
『がんは最初が肝心、最初が全て
〜35歳春、舌がんの小線源治療を受けて』
〜35歳春、舌がんの小線源治療を受けて』
市民のためのがん治療の会
会員K・T(35歳)
私は14年前に西尾先生の治療を受け成功してから、「あー、良かった」で終わってしまっては、がんは最初が肝心、最初が全てと言われるがん治療において、いかにセカンドオピニオンが大切かということを社会的に啓発することができないと思い、この会を始めた。
その後、「半年早くこの会を知っていれば、前立腺がんの手術をしないで小線源治療を受けて、性機能障害を起こさなくても良かったかもしれない」と悔やまれた方がおられたが、そのような不幸を繰り返さないために当会の活動はますます重要性を帯びているのではないかと思うのと同時に、Tさんも述べておられるようにこの優れた治療法が、間もなく廃れようとしているということも多くの方々に知っていただきたい。本当に医療は「市民のため」にあるのだろうか。私たちが「市民のためのがん治療の会」と標榜しているのは仇やおろそかなことではない。これからも、「市民志向」を貫いてゆきたい。
(「市民のためのがん治療の会)」代表 會田 昭一郎)
いま、日本人の約半数以上は、生涯で一度以上はがんに罹患し、死因の1位もがん、という現状です。但し、40代以下では、罹患する確率もまだ小さく、特に働き盛りの30〜40代の方々にとっては、がん、といっても自分達の両親や祖父母での話。自分の身に近々で降りかかってくる話と考えている方は少ないと思います。私もまさにその一人でした。
しかしながら、働き盛りだからこそ、がんに対する知識を正しくもって、いざ自分が罹患した場合の備え(経済的・精神的なもの、そして適切な情報収集)は必要であると今、実感しています。
がんは、今や不治の病ではありません。早期発見と適切な治療によって多くのケースで根治可能です。但し、如何に早期発見をするか、如何に適切な治療を探し出すか、これは、当然たまたま掛かった医師の方に左右される部分も当然ありますが、自分の意志と心持ちが、極めて重要だと痛感しております。
私は、2014年3月、早期舌がん(U期[T2N0]扁平上皮がん、直径2.2cm、表在型で薄い)と診断されました。
元々、2013年5月くらいから、奥歯の尖った部分が舌の裏にあたり痛く、口内炎のような状況になりつつあり、歯科医で当該奥歯を削る処置をしました。ちょうどその頃、仕事の面では、念願の海外駐在を拝命し、同月に発展途上国に赴任。忙しい毎日が始まっていました。その後、口内炎はなかなか治らずに、忙しい毎日の中でしたが、現地の歯科医で診察を受け、再度歯を削ったり、いくつかの種類の塗り薬を処方されながら、過ごしていたのですが、11月頃になっても未だ治らず、患部が白くなり始め、1月に入りさすがに心配になって、歯科ではなく同じ現地の口腔外科を訪問し、生検を実施。結果は“悪性に移行するリスクがあるので、再度の精密検査をお勧めする”という診断でした。この診断を受けて、顔面蒼白。すぐに上司に事情を話し、日本に帰国し、東京の大学病院で再度検査を行い、3月頭に、舌がんの診断を受けた、という経緯です。
日本での精密検査初日の時点で、がんの可能性を言及されていたので、その後すぐにインターネットで情報収集を開始しました。そこで分かったこととして、早期で対処出来れば生存率も90%近くと極めて高いこと、若くしても罹患する可能性があること(多くの若い患者さんが開設されたブログにより、非常に勉強になると共に勇気づけられました)、そして、早期の場合の治療方法としては主に、切除手術と小線源治療の2つがあること、です。 治療方法の選択については、とても悩みました。一見、小線源治療は切除不要で根治率も切除の場合と変わらない、そして舌が温存される訳ゆえ、良いこと尽くし。ですが、じっくりと調べて、メリット・デメリットを整理しました。
正直なところ、この頃は、“なぜ自分が?”、“もう仕事がこれまで通り出来なくなるのでは?”、“なぜもっと早くがんになる前に対処できなかったのか?”、“自分はもう死ぬのだろうか?”、“妻と子供をどう養っていくんだ・・・”という不安と悲壮感が、ぐるぐると頭の中を駆け巡り、当然ひどく落ち込み、茫然としていましたので、最終的には、命さえ助かれば、という思いに至っており、検査を受けた東京の病院で切除手術(舌の1/3以上を失う)も已む無し、と覚悟を決めつつありました。
ですが、調べていくと、当会の會田さんの記事を見つけることが出来、北海道がんセンターに西尾正道先生という、放射線治療の権威であり多くの舌がん小線源治療の症例を持たれている先生のことを知りました。そして、既に同院の名誉院長となられている西尾先生が“がん何でも相談外来”を開設されて多くの患者さんの相談を受けているということがわかり、念のため、お話だけでも伺えれば、と思い、札幌へ。この外来にて、西尾先生に病変部を見て頂き、“切除と小線源が出来るが、あなたのケースの場合は、小線源の方がより有効”とのコメントを頂戴、私の場合は主とした病変部の隣に、がんか白板症か疑わしい部分があると、この部分も含めての切除だと場合によっては取り損ねる可能性があるから、とのことでした。このお言葉に基づき、北海道がんセンターにて、小線源治療を受けることに決めさせて頂いた次第です。実を言うと私の実家がちょうど札幌であったこともあり、運命めいたものも感じたことも一因でもありました。
なお、小線源治療については、現在、絶滅危惧医療と言われ、提供する医療機関も日本国内でも数か所と限られているようです。理由は、
@採算が合わない(舌がん患者の実数は他のがんに比べて少数ながら、隔離部屋等の設備維持費も掛かる)
A国内での線源の供給がStopしている(輸入するとコストが3倍以上)
B十分な治療技術を有した放射線科医の実数が少なく、@Aの状況下で後輩も育たない ということ。
なお、この治療法は、海外でも医療従事者が被ばくすることもあり、廃れていると言われています。
(注)「絶滅危惧医療」は會田の造語
この治療を受け、その効果を実感している当人として、この状況に対してはとても残念に感じています。
切除手術についても技術が向上しており、会話や食事に影響も出にくくなってきているとも聞いてはおりますが、患者としては、それぞれの病状や希望(例えば、話すことや飲食することが仕事であったりする方は、舌を温存出来ることが最優先だと思います)により選択肢がある環境が理想だと思っています。こういう治療法があるのに受けられず、人生の方向転換をせざるを得ない患者さんもいるかもしれません。
この舌がんの小線源治療を維持継続していくためには、例えば、採算観点や後進育成という観点ではセンター化を推進したり、という方策もあろうかと思います。沢山の先生方がこのような議論を既にされているかとは思いますが、当該治療を受けた一患者としては、その有効性から、是非今後の患者さんのためにも、維持継続を頂けることを切に願うばかりです。
いま、この原稿を書いている時点で、治療から約1か月が経ちました。
治療の間はなかなか大変でしたが、粘膜炎による痛みも徐々に回復しており、経過も順調です。仕事も、駐在の継続は控えることになりましたが、日本に戻って同じ仕事を継続出来ることになりました。
改めて、今般、特に思ったことは、やはり自分の病気ですから、十分に調べて自分で納得して、適切な先生、病院、そして治療法を選択することが、自分の今後の人生の為に如何に重要かということです。
私の場合は、切除でもうまく行っていたかもしれませんが、取り得る選択肢の中で、信頼できる先生方との相談の結果、適切な選択をすることが出来たと思っています。(今般は北海道がんセンターの先生のみならず、東京の病院の先生からも温かいサポートを頂きました)
働き盛りの若い世代であっても、がんに罹患する可能性はあり、適切な定期健診や、いざ自分が罹患した場合の備えをきちんと考慮していくことをお勧めしたいと思います。
これらのために、この“市民のためのがん治療の会”は、とても多くの有益な情報を発信しています。私もその一助にでもなれればと思い、入会させて頂き、僭越ながら本原稿を寄稿させて頂きました次第です。
略歴しかしながら、働き盛りだからこそ、がんに対する知識を正しくもって、いざ自分が罹患した場合の備え(経済的・精神的なもの、そして適切な情報収集)は必要であると今、実感しています。
がんは、今や不治の病ではありません。早期発見と適切な治療によって多くのケースで根治可能です。但し、如何に早期発見をするか、如何に適切な治療を探し出すか、これは、当然たまたま掛かった医師の方に左右される部分も当然ありますが、自分の意志と心持ちが、極めて重要だと痛感しております。
私は、2014年3月、早期舌がん(U期[T2N0]扁平上皮がん、直径2.2cm、表在型で薄い)と診断されました。
元々、2013年5月くらいから、奥歯の尖った部分が舌の裏にあたり痛く、口内炎のような状況になりつつあり、歯科医で当該奥歯を削る処置をしました。ちょうどその頃、仕事の面では、念願の海外駐在を拝命し、同月に発展途上国に赴任。忙しい毎日が始まっていました。その後、口内炎はなかなか治らずに、忙しい毎日の中でしたが、現地の歯科医で診察を受け、再度歯を削ったり、いくつかの種類の塗り薬を処方されながら、過ごしていたのですが、11月頃になっても未だ治らず、患部が白くなり始め、1月に入りさすがに心配になって、歯科ではなく同じ現地の口腔外科を訪問し、生検を実施。結果は“悪性に移行するリスクがあるので、再度の精密検査をお勧めする”という診断でした。この診断を受けて、顔面蒼白。すぐに上司に事情を話し、日本に帰国し、東京の大学病院で再度検査を行い、3月頭に、舌がんの診断を受けた、という経緯です。
日本での精密検査初日の時点で、がんの可能性を言及されていたので、その後すぐにインターネットで情報収集を開始しました。そこで分かったこととして、早期で対処出来れば生存率も90%近くと極めて高いこと、若くしても罹患する可能性があること(多くの若い患者さんが開設されたブログにより、非常に勉強になると共に勇気づけられました)、そして、早期の場合の治療方法としては主に、切除手術と小線源治療の2つがあること、です。 治療方法の選択については、とても悩みました。一見、小線源治療は切除不要で根治率も切除の場合と変わらない、そして舌が温存される訳ゆえ、良いこと尽くし。ですが、じっくりと調べて、メリット・デメリットを整理しました。
正直なところ、この頃は、“なぜ自分が?”、“もう仕事がこれまで通り出来なくなるのでは?”、“なぜもっと早くがんになる前に対処できなかったのか?”、“自分はもう死ぬのだろうか?”、“妻と子供をどう養っていくんだ・・・”という不安と悲壮感が、ぐるぐると頭の中を駆け巡り、当然ひどく落ち込み、茫然としていましたので、最終的には、命さえ助かれば、という思いに至っており、検査を受けた東京の病院で切除手術(舌の1/3以上を失う)も已む無し、と覚悟を決めつつありました。
ですが、調べていくと、当会の會田さんの記事を見つけることが出来、北海道がんセンターに西尾正道先生という、放射線治療の権威であり多くの舌がん小線源治療の症例を持たれている先生のことを知りました。そして、既に同院の名誉院長となられている西尾先生が“がん何でも相談外来”を開設されて多くの患者さんの相談を受けているということがわかり、念のため、お話だけでも伺えれば、と思い、札幌へ。この外来にて、西尾先生に病変部を見て頂き、“切除と小線源が出来るが、あなたのケースの場合は、小線源の方がより有効”とのコメントを頂戴、私の場合は主とした病変部の隣に、がんか白板症か疑わしい部分があると、この部分も含めての切除だと場合によっては取り損ねる可能性があるから、とのことでした。このお言葉に基づき、北海道がんセンターにて、小線源治療を受けることに決めさせて頂いた次第です。実を言うと私の実家がちょうど札幌であったこともあり、運命めいたものも感じたことも一因でもありました。
なお、小線源治療については、現在、絶滅危惧医療と言われ、提供する医療機関も日本国内でも数か所と限られているようです。理由は、
@採算が合わない(舌がん患者の実数は他のがんに比べて少数ながら、隔離部屋等の設備維持費も掛かる)
A国内での線源の供給がStopしている(輸入するとコストが3倍以上)
B十分な治療技術を有した放射線科医の実数が少なく、@Aの状況下で後輩も育たない ということ。
なお、この治療法は、海外でも医療従事者が被ばくすることもあり、廃れていると言われています。
(注)「絶滅危惧医療」は會田の造語
この治療を受け、その効果を実感している当人として、この状況に対してはとても残念に感じています。
切除手術についても技術が向上しており、会話や食事に影響も出にくくなってきているとも聞いてはおりますが、患者としては、それぞれの病状や希望(例えば、話すことや飲食することが仕事であったりする方は、舌を温存出来ることが最優先だと思います)により選択肢がある環境が理想だと思っています。こういう治療法があるのに受けられず、人生の方向転換をせざるを得ない患者さんもいるかもしれません。
この舌がんの小線源治療を維持継続していくためには、例えば、採算観点や後進育成という観点ではセンター化を推進したり、という方策もあろうかと思います。沢山の先生方がこのような議論を既にされているかとは思いますが、当該治療を受けた一患者としては、その有効性から、是非今後の患者さんのためにも、維持継続を頂けることを切に願うばかりです。
いま、この原稿を書いている時点で、治療から約1か月が経ちました。
治療の間はなかなか大変でしたが、粘膜炎による痛みも徐々に回復しており、経過も順調です。仕事も、駐在の継続は控えることになりましたが、日本に戻って同じ仕事を継続出来ることになりました。
改めて、今般、特に思ったことは、やはり自分の病気ですから、十分に調べて自分で納得して、適切な先生、病院、そして治療法を選択することが、自分の今後の人生の為に如何に重要かということです。
私の場合は、切除でもうまく行っていたかもしれませんが、取り得る選択肢の中で、信頼できる先生方との相談の結果、適切な選択をすることが出来たと思っています。(今般は北海道がんセンターの先生のみならず、東京の病院の先生からも温かいサポートを頂きました)
働き盛りの若い世代であっても、がんに罹患する可能性はあり、適切な定期健診や、いざ自分が罹患した場合の備えをきちんと考慮していくことをお勧めしたいと思います。
これらのために、この“市民のためのがん治療の会”は、とても多くの有益な情報を発信しています。私もその一助にでもなれればと思い、入会させて頂き、僭越ながら本原稿を寄稿させて頂きました次第です。
昭和54年札幌市生まれ、35歳。大学卒業後電気機器メーカー勤務、営業/企画業務に従事、海外駐在中に舌に違和感を感じ、検査の結果、早期舌がんの宣告を受け、「市民のためのがん治療の会」のサイトで北海道がんセンター西尾名誉院長を知り受診、小線源治療を受け、3週間で職場復帰、現在に至る