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市民のためのがん治療の会
私たちは本当はどんな環境に曝されているか
『放射線の健康被害を通じて科学の独立性を考える』

北海道がんセンター名誉院長 西尾 正道
1931年創刊の岩波書店の月刊誌「科学」の8月号に注目すべき論文が掲載された。広島大学原爆放射線医科学研究所から「広島原爆被爆者における健康障害の主要因は放射性微粒子である」というタイトルの論文(大瀧 慈、大谷敬子 : 科学:86巻8号、0819-0830, 2016.)である。
原爆投下後、残留放射線の存在を否定し、また内部被ばくを無視・軽視してきた歴史を根本的に見直す視点が71年目にして初めて政府側の研究機関から発表された意味は大きい。
福島原発事故後、放射線健康被害の最も重要な因子は『長寿命放射性元素体内取込み症候群』として考えることができるとし、シーベルト(Sv)という全身化換算した単位の問題点や内部被ばくの超過少線量評価の問題点などを指摘していた当会顧問の西尾正道医師の見解を掲載する。放射線の健康被害を根本的に考え直す機会として頂ければ幸いである。
なお、本稿は西尾先生が北海道医報 第1166号(平成27年11月1日)に寄稿されたものを、北海道医師会のご了解のもとに転載させていただきました。ご協力に感謝申し上げます。
(會田 昭一郎)

はじめに

私はがんを放射線で如何に治すかという放射線の光(表)の世界に身を置き、ラジウム(226Ra)、セシウム(137Cs)、ゴールドグレイン(198Au)やイリジウム(192Ir)などの線源を用手的に取り扱う低線量率小線源治療も多用してきた。これは患者さんにとっては内部被ばくを利用した治療である。このため術者の被ばくは避けられず、今となっては「馬鹿かお人好し」しかしない治療法となり、絶滅危惧種の治療法となっている。しかし、この低線量率小線源治療は放射線治療法の中で最も局所制御率が高い照射法である。また骨転移の疼痛緩和治療としてストロンチウム(89Sr)(商品名:メタストロン注)を日本で最も多く使用してきた。

こうした内部被ばくを利用してきた経験から、放射線の影(裏)の世界について考察した。2011年3月11日の福島原発事故後の政府・行政の科学的根拠のない対応は、放射線の健康被害について根本的な視点から考える機会となった。その考察を通じて突き当たったのは、現在、国際的に放射線防護体系として流布されているICRPの理論には科学性がなく、原子力政策を推進するために修飾された疑似科学的な物語であるという事実だ。本稿ではICRPの報告をもとにした放射線防護学や健康被害について幾つかの問題点について述べる。

ICRPとはどんな組織か

日本政府は不定期に刊行されてきたICRP報告やIAEA(国際原子力機関)勧告をもとに種々の対応を行っている。代表的な対応の一つが福島県民の年間線量限度を20mSvとしていることである。そして最近では帰還政策に邁進している。

このICRPの実態とは、いかなるものかを考えてみる。放射線をある程度正確に測定できるようになったのは、1928年頃である。こうした背景もあり、1928年に放射線の医学利用領域の放射線業務従事者の健康問題について医師が中心となり「国際X線およびラジウム防護委員会」が設立された。

しかし、1946年に原爆製造に携わった多くの核物理学者が上記の委員会に参入し、NCRP(米国放射線防護審議会)が設立された。このため、放射線の医学利用の問題は軽視され、核兵器開発の視点から見た健康問題に議論はシフトした。このNCRPが、ほぼ同じ陣容で1950年にICRPに衣替えした。このため医学利用における健康管理よりも、原子力政策を推進する立場の組織に変容した。ICRPと改称した2年後の1952年には、深刻な健康被害の要因となる内部被ばくに関する第二委員会の審議を打ち切った。そこから内部被ばくに関しては隠蔽と研究中止の世界が始まったのである。ICRP設立当初の内部被ばくに関する委員会の委員長だったK・Z・モーガンは、『ICRPは、原子力産業界の支配から自由ではない。原発事業を保持することを重要な目的とし、本来の崇高な立場を失いつつある』と述べている(「原子力開発の光と影―核開発者の証言」昭和堂,153頁,2003年.)。ICRPは人間の命と健康より産業界と軍の経費節減要求を優先させたのである。核兵器製造や原発作業員の安全を考慮すると原子炉の運転はできなくなるため、α線とβ線による内部被ばくを排除したのである。

広島・長崎への原爆投下後も残留放射線は無いとし、内部被ばくを隠蔽し、内部被ばくの問題を提起した肥田舜太郎医師への脅迫めいた対応の延長上に放射線防護学を構築したのである。

原発稼働における放射線の利用においてもこの姿勢が貫かれており、放射線は「コスト・ベネフィット」の観点から論じられている。ICRPは国際的原子力推進勢力から膨大な資金援助を受けているため権威のある公的機関のように振舞っているが、実際は単なる民間のNPO団体なのである。また研究機関でもなく、調査機関でもない。民間の組織は目的を持って活動するが、ICRPの目的は原子力政策の推進であり、国際的な「原子力ムラ」の一部なのである。米国の意向に沿って原子力政策を推進する立場で核兵器の規制などを行っているIAEAやUNSCEAR(国連放射線影響科学委員会)などと手を組み、原子力政策を推進する上で支障のない内容で報告書を出している。

報告書作成に当たっては、各国の御用学者が会議に招聘され、都合のよい論文だけを採用して作られる。ICRP自体が調査したり研究したりすることはない。このためICRPは多くの医学論文で低線量被ばくによる健康被害が報告されても一切反論できず、無視する姿勢となっている。日本でもICRPに関与している学者やICRPの報告に詳しい専門家とか有識者と称する人達が、政府・行政の委員会のメンバーとなっているため、国民不在の対策となるという構図となる。

医療関係者の教科書もICRP報告の内容で記載されているため、今回の事故が起こっても多くの医師には問題意識が生まれないのである。

現在、福島県の一般公衆に対して、年間線量限度20mSvという非常識な線量を強いているが、ICRPの一般公衆への人工放射線の年間線量限度の変遷を見ると、1953年勧告では15mSv、1956年勧告では5mSv、1985年勧告では1mSv(例外は認める)としており、健康被害の現実を踏まえて減少させている。そして1986年のチェルノブイリ原発事故を経験して、1990年勧告では1mSv(例外は認めない)としており、それに準じた基準が諸国の国内法に取り入れられている。日本の対応が例外的で異常なのである。

また、ICRPは「しきい値なしの直線モデル」を認めており、BEIR(米国科学アカデミーの「電離放射線の生物影響に関する委員会」)と同様の姿勢を取っているが、事故後の日本政府は「100mSv以下では明らかな健康被害は他の要因も絡むことから証明することはできない」とする立場を取っており、国民の健康に関しては、より集団的無責任な態度に終始している。これでは「国民の生命と財産を守る」として集団的自衛権を語る資格はない。原爆投下後の最初の対応として、爆心地から2Km以内の人を「被爆者」として認定したが、2Kmの地点での被爆線量が約100mSvとされているため、100mSv以下の非被爆者の調査が充分には行われていないため、データが無いだけなのであるが、健康被害が出ないと言いくるめているのである。

ICRPの疑似科学の幾つかのポイント

ICRPの疑似科学的核物理物語においては、まず放射性物質を「気体」の時の測定から始まり、それを基にして計算やデータを分析し、理論を構築している。このため放射性物質が微粒子としても存在することを想定せず考慮外としている。気体中の放射線量は物理量であり信用できるが、この線量を人体影響に結びつける過程で誤魔化しが生じる。まず吸収線量は1Gy=1J/Kgと定義されているが、この定義量では生体の影響は説明できない。もちろん1Gyと10Gyでは10倍のエネルギー付与として相対的な比較はできる。

しかし原爆投下時の米国の公式見解である「全身被ばく7Svが致死線量」を考えてみると、X線やγ線の場合は放射線荷重係数=1なので、体重60Kgの人では60×7=420J(ジュール)=約100カロリーとなる。熱量換算では、約150キロカロリーであるおにぎり1個食べれば全員死亡することとなる。付与された放射線量を熱量換算した吸収線量の定義量では、人体影響は全く説明がつかない。Gyという定義量自体が、放射線物理学と分子生物学のインターフェイスとはなっていないと言うべきである。

また等価線量はGy×放射線荷重係数として計算しているが、例えばトリチウム(3H)のβ線の放射線荷重係数は1ではなく、実験結果では1.5〜2とされている。他のβ線も同様である。

さらに実効線量への換算には組織荷重係数という全く実証性のない仮想の係数が使われている。ここでは性別や年齢などの補正もない。こうした根拠のない非実証的係数を組み合わせたSvという単位では人体影響を正確に評価できず、Svの隠された意図は放射線の種類、被ばく部位、被ばく様式の違い、被ばく者の違いなどを一緒にして健康被害と線量との相関を分析できないようにすることにあると勘繰られるほどインチキなものなのである。放射線の影響は原則として被ばくした部位や臓器にのみ現れるのであり、被ばくしていない部位にまで実証されていない係数を使って全身化換算する手法自体が間違っているのである。

胸部単純写真を撮影する場合、被ばくしているのは胸郭部であり、それ以外はほぼ無視できる散乱線である。したがって本来の被ばく線量は胸郭部の等価線量として表現されるべきであり、全身化換算した実効線量で表すこと自体が問題なのである。また医療における放射線の利用は「リスク・ベネフィット」の観点から論じられるべきである。

次のポイントは最も深刻な問題を隠蔽する姿勢である。まず放射線生物学においては、放射線感受性に関する『Bergonie-Tribondeauの法則』という大原則がある。放射線感受性は、①細胞分裂が盛んなもの、②増殖力、再生能力が旺盛なもの、③形態及び機能の未分化なものほど高いというものである。この①の原則から言えば、人体の中で最も感受性が高く影響を受ける臓器は骨髄や小腸(上皮細胞)や精巣などであるが、それ以上に影響を受けるのは受精卵や胎児である。このため流産・死産・先天障害の発生につながるが、深刻すぎるので、隠蔽と過少評価に徹する姿勢となっている。

また内部被ばくの深刻さにも同様に対応している。外部被ばくと内部被ばくをたとえると、「外部被ばくとは、まきストーブにあたって暖をとること、内部被ばくは、その燃え盛る“まき”を小さく粉砕して、飲み込むこと」とたとえることができる。どちらが細胞に障害を与えるかは誰でも解ることである。内部被ばくでは放射性物質の近傍の細胞にだけ影響を与えるのである。

さらに前述したようにICRPでは原発事故で放出された場合は、放射性物資が微粒子として存在することは想定外であるが、実際には事故で放出した種々の放射性物質は、中性子線以外は荷電されており、大気中では何らかの物質と電子対となり、安定な微粒子の個体となる。結合した物質によって塩化物、酸化物、水酸化物となり、土・砂・塵などと付着している。

筑波市の気象研究所で事故直後の大気中の浮遊塵を捕集した研究から、2013年8月に足立光司氏はセシウムを含む不溶性の球状微粒子の存在について報告(K. Adachi, et al : Scientific Reports Volume:3. 2554 : 2013.8.30.)している。それによると、走査型電子顕微鏡に装着されたエネルギー分散型X線スペクトロメータによる分析で、Csの明瞭なピークが認められ、鉄や亜鉛も含まれていた。

2011年3月15日の採取試料には、0.5μm以上の粒子が大気1m3あたり平均4100万個含有されており、1回目のプルームに含まれる放射性物質の大部分が球形で、メルトダウンによって核分裂生成物と炉材の一部が蒸発・気化し、早い段階から凝縮した形態となっており、セシウムを含む微小粒子は直径2.6μmで、Cs137+Ca134が6.58Bqであった。まさにセシウムホットパーティクルとでも言えるものである。なお、この“Cs Particle”を水に漬けた後で回収し、表面形状を観察したが、変化はなく、不溶性(難溶性)と判断された。

この微粒子の問題は2014年12月21日(日曜日)23時30分からのNHK EテレサイエンスZEROで『謎の放射性粒子を追え!』と題して取り上げられた。

科学的に考えれば、少しも“謎”ではないが、気体中の放射線量を測定することから出発しているICRPの理論では“謎”だっただけである。図1にイメージングプレートで証明されたセシウムを含んだ微粒子を示す。これは南相馬市の某小学校前に2013年7月26日から10日間設置したハイボリュームダストサンプラー(地上1m)のフィルターを市会議員から送ってもらってイメージングプレートに重ねて画像化したものである。事故後2年以上経過しても空気中にはCsを含んだ微粒子が浮遊しており、呼吸により体内に取り込まれているのである。

図1 セシウム(Cs)を含んだ微粒子
図1 セシウム(Cs)を含んだ微粒子

さて、こうした超微粒子が呼吸や食事で体内に取り込まれた場合はどうなるのであろうか。この問題は微粒子のサイズによって体内動態は全く異なる。人体の細胞の直径は6μm〜25μmであるが、ナノメートル(nm)のサイズの微粒子では、体内動態は大きく異なる。
【★1m=1,000mm(103) =1,000,000μm(106)=1,000,000,000(109)nm】

図2に粒子のサイズによる体内動態を示す。花粉などの微粒子は気道粘膜の絨毛運動で鼻腔内に排出される。呼吸で取り込んでもCsホットパーティクルの粒子が排出され鼻粘膜に密着して傷つければ、鼻血の原因ともなる。500mSv以上でなければ骨髄障害が起こらず、出血傾向が出ないので、鼻血は出ないと主張するICRP信奉者には考えられないことなのである。放射線障害で出血傾向が出れば、脳出血や消化管出血などの致命的な事態も想定しなければならず、鼻血どころではないのである。

図2 物質のサイズと体内動態
図2 物質のサイズと体内動態

大気汚染のPM2.5が問題となるのは、この程度のサイズから肺胞にまで達するためである。100nm以下では細胞膜や血管壁を通る。血管内に入れば全身を循環し、胎盤の血液循環を通して胎児も被ばくすることとなる。核種によっては臓器親和性があり、その臓器に集積されるため電離密度も高くなり影響は強くなる。Srであれば2価アルカリ土類金属のCaと同族体であるため骨に蓄積する。骨組織への取り込みは造骨活性に依存するので、成長期の子どもの骨に取り込まれ蓄積し、β線を放出し続けるのである。こうした臓器へ侵入する経路や滞在時間や集積・蓄積により影響は異なるのである。

この状態を考えれば、チェルノブイリ事故後のがん以外の慢性疾患の増加は医学的には説明ができる。いわゆる『長寿命放射性元素体内取り込み症候群』として考えることができる。

食品から摂取するカリウム(40K)は、体内ではKイオンとして存在しているが、原発事故で放出された放射性物質の微粒子サイズは大きい。このため、心筋などでは細胞膜のKチャンネルを障害し、細胞内外のKのバランスを崩し、心伝導系の異常をきたし、最悪の場合は若者でも突然死につながる。

さらに次の問題点は、内部被ばくの影響を評価する場合、ICRPの考え方は、「線量が同じであれば、外部被ばくも内部被ばくも人体影響は同等と考える」と取り決めていることである。ここでは空間的線量分布は全く考慮されていない。

このため内部被ばくの実効線量の計算では、放射性物質の近傍の限局した局所の細胞にいくら当たっているかを計算するのではなく、全身化換算するため超極少化した数値となる。目薬を全身投与量としているようなものである。眼薬は眼に注すから効果も副作用もある。それを口から投与して、投与量が少ないから影響はありませんと言っているようものである。

図3は舌癌に対する137Cs針の組織内照射例である。137Csは94.4%は30年の半減期でまずβ線崩壊し、137mBaとなり、その後に2.5分でγ崩壊して安定な137Baとなる。このため尿測定などでγ線1Bq検出されれば体内では実際にはβ線1Bqとγ線1Bqの合計2Bq被ばくしているのである。

137Cs針は137Csの粉末を白金イリジウムで被覆し針状にしたもので、この被覆によりβ線を遮蔽し、γ線だけを取り出して照射している。2cm程度の腫瘍の周囲に7本の137Cs針を刺入し照射した。抜針10日後の粘膜は照射後の粘膜炎が強度となり白苔が出現している。刺入部位の周囲にしか反応は出ておらず、透過性の高いγ線治療でも線源の周囲にしか被ばく影響は出ていない。

図3 舌癌に対する137Cs針による組織内照射例 (治療前所見、刺入時X線写真、抜針10日後の粘膜反応)
図3 舌癌に対する137Cs針による組織内照射例
(治療前所見、刺入時X線写真、抜針10日後の粘膜反応)

この症例は137Cs針線源から5mm外側の範囲に60Gy/5日間、照射し治癒している。内部被ばくの計算は被ばくしている部位や細胞集団の線量で評価すべきなのである。全く被ばくしていない全身の細胞まで含めて全身化換算する内部被ばくの計算では局所の人体影響は解明できない。

このようなICRPの計算方法では内部被ばくの線量は本当に当たっている細胞集団の数万分の一〜数十万分の一の線量となる。

内部被ばくの線量を全身化換算して、なおかつインチキな実効線量(Sv)に換算することが如何に無理なのかを知るべきである。

原発事故後の外部被ばくでは全身が均一に被ばくすると考えてもよいが、内部被ばくでは取り込まれた放射性物質の周囲の細胞だけが被ばくしているのである。α線では体内での飛程は40μmほどであり、β線であれば0.5〜数ミリ程度であり、またその周囲の細胞にだけ全エネルギーを放出するので逆に影響は大きいのである。

誌面の制約もあり、3点に絞ってICRPの理論的な問題点を指摘したが、それ以外にも、ICRPの理論では最近の放射線生物学の知見を充分に採用していない。

また、①エネルギーの問題 (数eV〜KeV〜MeV)、②LET(Linear Energy Transfer, 線エネルギー付与)の問題、③細胞周期と放射線感受性の問題 (G2・M期の細胞が影響大)、なども検討すべきである。こうした基本的な問題を抱えて、生体影響を正確に反映するものではない実効線量だけで議論され、対策が立てられている。

遺伝子解析もできる時代となっているが、内部被ばくを過小評価し、研究は「しない・させない・隠蔽する」という姿勢で、「放射線 皆で当たれば怖くない」という棄民政策を行っているのが現状なのである。

さらに原発は稼働するだけで膨大なトリチウム(3H)を出すが、3HはDNAに取り込まれる。DNAの二重螺旋を結合させている4つの塩基間に働くのは水素結合力なのである。このため原発立地地域の住民の健康被害はこれが原因の一つなのである。

原発の問題は、単に人体影響ばかりでなく、『戦争では国破れて 山河あり』だが、『原発事故では 山河なし』なのである。「コスト・べネフィット」を根拠にした原発稼働の理由も、使用済み燃料棒の処理や廃炉費まで含めると破綻している。科学的にも医学的にも放射線の健康被害に関しては経済的利害を超えて真実を解明するという独立性を持って進められるべきであろう。真実のデータを基に社会全体としてどのように使うかは次の問題なのである。全国にばら撒かれた原子力発電所にミサイル一発撃ち込まれれば簡単に負ける国なのに、戦争ができる国にしようとする見識の無さと相通じるものである。国民はICRPの催眠術から覚醒するべきであろう。 (了)

略歴
西尾 正道(にしお まさみち)

北海道医薬専門学校学校長、独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター 名誉院長 (放射線治療科)
1947年函館市生まれ。1974年札幌医科大学卒業。北海道がんセンター(旧 国立札幌病院・北海道地方がんセンター)放射線科に39年年間勤務し、がんの放射線治療に従事。
がんの放射線治療を通じて日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。
「市民のためのがん治療の会」顧問。認定NPO法人いわき放射能市民測定室「たらちね」顧問。

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